国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、メキシコのカシューナッツ生産量は、長期間にわたり大きな変動を示しています。特に1980年代から1990年代にかけての急減や、その後2000年代にかけての持続的な増加が顕著です。しかし、2023年には再び急激な減少が見られ、生産量は688トンとなりました。この中長期的な変動は、気候、農業技術、経済的要因、そして地政学的な影響が複雑に絡み合った結果と考えられます。
メキシコのカシューナッツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 688 |
-80.91% ↓
|
2022年 | 3,603 |
-4.72% ↓
|
2021年 | 3,781 |
-7.27% ↓
|
2020年 | 4,077 |
14.43% ↑
|
2019年 | 3,563 |
0.21% ↑
|
2018年 | 3,556 |
-5.62% ↓
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2017年 | 3,767 |
4.55% ↑
|
2016年 | 3,603 |
-15.96% ↓
|
2015年 | 4,288 |
1.45% ↑
|
2014年 | 4,227 |
-3.06% ↓
|
2013年 | 4,360 |
-1.42% ↓
|
2012年 | 4,423 |
3.83% ↑
|
2011年 | 4,260 |
-3.31% ↓
|
2010年 | 4,406 |
7.25% ↑
|
2009年 | 4,108 |
-1.51% ↓
|
2008年 | 4,171 |
39.13% ↑
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2007年 | 2,998 |
-5.28% ↓
|
2006年 | 3,165 |
-23.24% ↓
|
2005年 | 4,123 |
80.67% ↑
|
2004年 | 2,282 |
129.12% ↑
|
2003年 | 996 |
-77.23% ↓
|
2002年 | 4,375 |
293.08% ↑
|
2001年 | 1,113 |
11.19% ↑
|
2000年 | 1,001 |
-33.93% ↓
|
1999年 | 1,515 |
81.44% ↑
|
1998年 | 835 |
177.41% ↑
|
1997年 | 301 |
-16.85% ↓
|
1996年 | 362 |
54.04% ↑
|
1995年 | 235 |
150% ↑
|
1994年 | 94 |
-48.63% ↓
|
1991年 | 183 |
8.93% ↑
|
1990年 | 168 |
-52.94% ↓
|
1989年 | 357 |
-67.57% ↓
|
1988年 | 1,101 |
-7.25% ↓
|
1987年 | 1,187 |
11.88% ↑
|
1986年 | 1,061 |
-8.06% ↓
|
1985年 | 1,154 |
200.52% ↑
|
1983年 | 384 |
21.52% ↑
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1981年 | 316 | - |
1980年 | 316 | - |
メキシコのカシューナッツ生産量は1980年から2023年の間で劇的な推移を見せています。1980年の316トンという小規模なスタートから1985年には1,154トンに急増しましたが、1990年代にかけては一転して低迷期に入りました。この間、生産量は最低で94トン(1994年)まで減少しました。この低迷は、農地管理の課題や地域的な干ばつの頻発など、気候の不安定化が大きな影響を与えたと考えられます。
その後2000年代にかけては生産量が劇的に復活し、2002年には一時4,375トンに達しました。この復活の背景には、カシューナッツの需要増加や、農業技術の改善、さらにはインフラ整備の拡充が影響している可能性があります。特にアメリカやカナダといった近隣国での健康意識の高まりから、カシューナッツを含むナッツ類全般の消費が増えたことは需要を押し上げた要因と考えられます。
2008年以降は、概ね年間4,000トン規模の安定した生産が続いていましたが、2023年には688トンと急に生産量が減少しました。この急落の要因として、まず気候変動による干ばつや台風といった自然災害の影響が挙げられます。特にカシューナッツの生育は一定の気候条件に依存する特性が強いため、気温や降水量の変動が年々大きくなる中で、農家は困難に直面しています。さらに、新型コロナウイルスによるパンデミックも農業供給チェーンに混乱をもたらし、生産活動や輸送に支障をきたした可能性があります。
加えて、経済や地政学的な要因も無視できません。例えば、世界市場でのカシューナッツ価格の不安定化や、国内の政策他国との貿易摩擦なども農家の生産意欲に影響を与えます。他国と比較すると、インドやベトナムといった世界トップクラスのカシューナッツ生産国が一貫して高い生産量を維持している中、メキシコの生産の伸び悩みは顕著です。このままでは国際市場での競争力を維持することが困難となるでしょう。
今後の課題として、まず気候変動への対応が急務です。具体的には、気候条件に耐性のあるカシューナッツ品種の導入や持続可能な農業技術の普及を進める必要があります。また、灌漑システムの改良や農地の土壌改良といったインフラへの投資も欠かせません。さらに、農家への経済的支援や国際貿易競争力を高めるための輸出促進政策を実施することで、生産量の回復と安定を図ることが期待されます。
結論として、メキシコのカシューナッツ生産量は、この数十年間で外内のさまざまな要因に大きく左右されてきました。現状の急激な減少に対しても、気候変動への適応とともに、国内外での協力体制の構築が求められます。国際連合食糧農業機関など国際機関の支援を得ながら、持続可能な生産モデルを目指すことが重要です。また、世界市場での競争力を確保するためにも、品質向上と安定供給の両立が鍵となるでしょう。