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イエメンの大麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が公表した最新のデータによると、イエメンの大麦生産量は1961年に141,000トンであったのに対し、2023年には30,000トンと大幅に減少しています。過去60年以上にわたるデータでは、生産量は大きく変動しており、特に1970年代から2010年代後半にかけて急激な減少傾向が見られました。一方で、2020年から2021年にかけて一時的に生産量が回復しましたが、再び減少しています。このような生産量の推移は、国内の地政学的状況や気候条件、農業政策の変化が影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 30,000
25% ↑
2022年 24,000
-42.36% ↓
2021年 41,635
13.34% ↑
2020年 36,735
36.39% ↑
2019年 26,933
59.48% ↑
2018年 16,888
-2.39% ↓
2017年 17,301
-0.54% ↓
2016年 17,395
-17.08% ↓
2015年 20,978
-25% ↓
2014年 27,971
-16.58% ↓
2013年 33,532
-4.63% ↓
2012年 35,161
17.19% ↑
2011年 30,003
-24.28% ↓
2010年 39,622
70.48% ↑
2009年 23,241
-12.97% ↓
2008年 26,704
-23% ↓
2007年 34,680
25% ↑
2006年 27,745
30.94% ↑
2005年 21,189
-14.53% ↓
2004年 24,791
-11.25% ↓
2003年 27,935
-29.73% ↓
2002年 39,753
-13.54% ↓
2001年 45,977
8.36% ↑
2000年 42,428
-0.95% ↓
1999年 42,833
-23.74% ↓
1998年 56,167
19.02% ↑
1997年 47,192
-11.93% ↓
1996年 53,584
-15.98% ↓
1995年 63,773
1.1% ↑
1994年 63,082
-3.92% ↓
1993年 65,656
4.13% ↑
1992年 63,050
118.08% ↑
1991年 28,912
-47.44% ↓
1990年 55,003
-6.14% ↓
1989年 58,599
20.51% ↑
1988年 48,627
19.87% ↑
1987年 40,565
-2.01% ↓
1986年 41,398
29.37% ↑
1985年 32,000
4.07% ↑
1984年 30,750
-5.27% ↓
1983年 32,460
-41.3% ↓
1982年 55,300
-1.95% ↓
1981年 56,402
20% ↑
1980年 47,000
6.09% ↑
1979年 44,300
7.26% ↑
1978年 41,300
-6.64% ↓
1977年 44,235
-26.56% ↓
1976年 60,235
-6.08% ↓
1975年 64,134
-5.73% ↓
1974年 68,032
-29.16% ↓
1973年 96,032
-14.64% ↓
1972年 112,500
-8.98% ↓
1971年 123,600
-1.9% ↓
1970年 126,000
-0.79% ↓
1969年 127,000
-2.31% ↓
1968年 130,000
-0.76% ↓
1967年 131,000 -
1966年 131,000
-1.5% ↓
1965年 133,000
-1.48% ↓
1964年 135,000
-2.17% ↓
1963年 138,000
-1.43% ↓
1962年 140,000
-0.71% ↓
1961年 141,000 -

イエメンの大麦生産量の推移を見ると、長期的に一貫した減少傾向が顕著に表れています。1961年に141,000トンだった生産量は、1970年代中盤には60,000トン台になり、1980年代にはさらに低下しました。その後、1990年代には一部回復が見られましたが、再び減少傾向に向かい、2010年代後半には20,000トンを下回りました。2023年時点での生産量は30,000トンにとどまっています。

このような変動の背景には、いくつかの要因が影響しています。まず、イエメンの農業生産は気候変動による干ばつや水資源不足の影響を受けやすい状況にあります。特に降水量の減少は雨水に依存する農業に深刻な打撃を与え、大麦生産量の減少に繋がっています。また、地政学的には、イエメンにおける紛争や政情不安が農業基盤を破壊し、持続的な農業活動を妨げる要因として存在しています。物流の混乱や農地の荒廃も、これに加わる深刻な問題です。

さらに、大麦の生産には農業技術の導入やインフラ整備が重要です。しかしながら、イエメンではこれらの基盤整備が十分に進んでおらず、国際市場における競争力も低い状況です。一方で、新型コロナの影響による国際的な食糧供給チェーンの混乱も、一時的な増減に影響を与えた可能性があります。

2020年から2021年にかけて一時的に生産量が約36,000トンから41,000トンに増加した点からは、農業への外部援助や気象条件の多少の好転が影響した可能性が考えられます。しかし、安定的な増加には至っておらず、2022年以降再び減少に向かったことからも、問題が根深いことが伺えます。

この現状を改善するためには、いくつかの具体的な対策が考えられます。まず、灌漑設備や水資源の管理を進めることが重要です。イエメン政府および国際機関は、持続可能な水利用技術の導入を加速すべきです。さらに、農業従事者への技術指導や種子の改良、肥料の供給といった支援を強化することで、生産効率を向上させることが見込まれます。また、地政学的な課題については、紛争の解決が何よりも優先されるべきであり、安定した社会基盤が整備されて初めて、農業の回復が可能になるといえます。

イエメンの例は、大麦生産量の推移が地域の農業環境、経済的な状況、地政学的なリスクによってどのように影響を受けるかを示しており、同国での知見は他の紛争地域や気候変動に直面する国々にも応用可能です。気候変動への対策と地域の安定化を図ることが、イエメンだけでなく、世界全体の農業生産を持続可能にするための重要な課題といえます。