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イエメンのオレンジ生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによれば、イエメンのオレンジ生産量は1979年に2,600トンだったのが、1990年代後半には急激に増加し1998年には一時15万トンを超えました。しかし、その後減少と増加を繰り返しながら、近年は安定に向かっており、2022年時点では135,006トンに達しています。この動向には、地政学的な影響や気候変動、農業技術の導入状況などが絡んでいます。

年度 生産量(トン)
2022年 135,006
2021年 129,650
2020年 119,781
2019年 119,084
2018年 103,431
2017年 107,019
2016年 107,135
2015年 110,595
2014年 120,212
2013年 120,094
2012年 120,241
2011年 119,997
2010年 120,722
2009年 112,502
2008年 131,241
2007年 129,098
2006年 101,049
2005年 83,979
2004年 70,604
2003年 166,100
2002年 163,149
2001年 158,940
2000年 158,473
1999年 156,335
1998年 149,822
1997年 85,262
1996年 70,831
1995年 39,677
1994年 18,777
1993年 14,898
1992年 12,457
1991年 10,823
1990年 9,692
1989年 8,271
1988年 4,957
1987年 5,715
1986年 4,912
1985年 2,785
1984年 2,671
1983年 2,561
1982年 2,561
1981年 2,442
1980年 2,700
1979年 2,600

イエメンのオレンジ生産量は、1979年から2022年に至るまでの間に非常に大きな変動を見せています。1979年から1984年の間は2,500トン台の安定した低水準な生産量で推移していましたが、1985年以降、徐々に生産量が拡大し、特に1990年代中盤に急激な増加を見せました。1998年には149,822トンに達し、20世紀後半におけるピークを迎えました。このような急成長の背景には、灌漑設備の導入や政府および国際援助による農業振興政策の影響が大きかったと考えられます。

しかし、2004年に70,604トンへと大幅に減少した点は見逃せません。この減少には複数の要因が絡んでおり、その一つにはイエメン国内における政治的不安定や地政学的リスクが挙げられます。内戦や紛争による農地の荒廃、農業インフラの破壊、水資源競争の激化が生産力を著しく低下させたと考えられます。それ以降も生産量は増減を繰り返しましたが、近年では2019年以降、10万トンを超える安定的な生産量を維持するようになりました。2022年には135,006トンと回復の傾向を見せています。

イエメンのオレンジ生産量の動向は、主に経済基盤や農業政策に依存すると同時に、地政学的な影響を強く受けています。特に内戦期や地域間紛争が生産量に与える影響は無視できません。一方で、2020年以降の生産量回復は、国際的な支援を背景にした農業技術の改善や安定的な灌漑管理が一定の効果を挙げていることを示唆しています。

イエメン農業にはまた気候変動の影響も重要です。同国は水不足が深刻であり、灌漑用水の確保が生産量維持の重要な課題となっています。このため、水効率の向上や気候変動への適応を目指した技術導入が急務です。他方、病害虫被害への脆弱性も抱えています。オレンジに特有の病害虫対策として、イエメン国内だけでなく、近隣諸国と連携した統一的な防除プログラムの実施が効果的でしょう。

また、内戦の影響で農地管理や流通システムが不完全な状態が続いていることも生産量安定の阻害要因です。特に輸出インフラの未整備は、国内農家が生産を拡大し収益を上げるうえでの大きな障害となっています。これを解決するためには、安定した輸出経路の確保および物流インフラの改善が重要です。国際機関や民間投資の活用による地域間協力の仕組みづくりも必要だと考えます。

以上を踏まえると、イエメンのオレンジ産業を持続的に発展させるためには、短期的には政治安定化と農地再生、長期的には気候適応型農業技術の導入、水管理技術の進展、そして地域協定を基盤とした安定的な輸出体制の構築が鍵となります。これらが実現されることで、イエメンのオレンジ生産は地域の食糧安全保障だけでなく、農業を基盤とした経済発展にも寄与することが期待されています。