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イエメンの桃(モモ)・ネクタリン生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データ(2024年7月更新)によると、イエメンにおける桃(モモ)・ネクタリンの生産量は、過去50年弱で非常に波立った推移を示しています。1980年代には年間2,000~4,500トン台で推移し、1990年代から大きな生産減少と変動が見られました。その後、2000年代後半には著しい増加を達成し、2011年をピークに14,093トンを記録しました。しかし2020年代に入ると再び緩やかな減少を見せ、2023年の生産量は11,115トンとなっています。イエメンの地政学的背景や気候的制約を考慮すると、これらの浮き沈みに複合的な要因が影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 11,115
-2.02% ↓
2022年 11,344
-2.31% ↓
2021年 11,612
2.34% ↑
2020年 11,347
-3.3% ↓
2019年 11,734
-4.31% ↓
2018年 12,263
-3.27% ↓
2017年 12,678
-1.75% ↓
2016年 12,904
-2.41% ↓
2015年 13,222
-8% ↓
2014年 14,372
1.37% ↑
2013年 14,178
-0.33% ↓
2012年 14,225
0.94% ↑
2011年 14,093
2.84% ↑
2010年 13,704
6.75% ↑
2009年 12,838
2.61% ↑
2008年 12,512
3.7% ↑
2007年 12,066
7% ↑
2006年 11,277
2.06% ↑
2005年 11,049
57.84% ↑
2004年 7,000
82.58% ↑
2003年 3,834
4.13% ↑
2002年 3,682
9.45% ↑
2001年 3,364
60.5% ↑
2000年 2,096
6.88% ↑
1999年 1,961
1.45% ↑
1998年 1,933
1.15% ↑
1997年 1,911
-24.35% ↓
1996年 2,526
-35.69% ↓
1995年 3,928
1.63% ↑
1994年 3,865
-26.55% ↓
1993年 5,262
11.62% ↑
1992年 4,714
4.15% ↑
1991年 4,526
5.43% ↑
1990年 4,293
-3.53% ↓
1989年 4,450
110.4% ↑
1988年 2,115
-29.34% ↓
1987年 2,993
16.37% ↑
1986年 2,572
13.05% ↑
1985年 2,275
4.21% ↑
1984年 2,183
4.35% ↑
1983年 2,092 -
1982年 2,092
4.81% ↑
1981年 1,996
-9.27% ↓
1980年 2,200
4.76% ↑
1979年 2,100 -

イエメンの桃・ネクタリン生産量の歴史的な推移を見てみると、以下のような特徴が挙げられます。1979年から1980年代までは比較的一定の2,000トン台の生産が維持されていました。しかし、1989年から急激な拡大基調が見られ、5,000トン以上に達する栄養供給源としての重みを増していきました。この時期、灌漑技術の向上や農業用の社会的インフラが整備されたことが背景にあると考えられます。しかし1994年以降、内戦の勃発や農業用水の供給減少といった社会・政治的不安が生じ、一転して生産が下降に向かいます。

最も劇的な転換点となったのは2004年以降で、農業技術の革新、土地利用の効率化、さらには特定地域で肥沃な農地の活用が進み、2005年には1万トンを超える生産量を達成しました。その後、2010年代前半には年間13,000~14,000トン台の安定した生産量が維持されました。しかし、2015年を境に再び緩やかな低下が見られ、この傾向は2023年現在まで続いています。この背景には、再燃した内戦や都市部への人口流入に伴う耕地面積の縮小、あるいは世界的な気候変動の影響があると見られます。

イエメンの桃およびネクタリン生産の重要性は、主に国内消費と地域輸出依存にありますが、国際市場での競争力は比較的限定的です。これに対し、中国、インド、アメリカなど、他国の主要な生産国と比べると明確に劣勢となっています。特に中国やアメリカでは、気候に適した地域に専念した大規模な桃・ネクタリン生産が行われており、こうした国際的な動向と競争を踏まえると、イエメンにはさらなる技術革新と国際的な連携が必要です。

イエメン特有の課題としては、水資源の不足、持続的な農業技術の欠如、そして地域紛争からくる不安定な社会情勢が挙げられます。さらに、桃やネクタリンといった果樹作物は、栽培に時間がかかる特性があり、一時的もしくは突発的な環境変化に敏感です。このような問題に対処するためには、地域の地政学的安定化が基盤となるべきです。具体的な対策として、持続可能な農地利用の計画作り、災害時の農業支援に焦点を当てた国際機関の介入、さらには桃以外の作物との混合作付けの普及などが考えられます。

また、地政学的要素として、イエメンの紛争が生産効率に及ぼす影響を挙げることも重要です。農業労働力の不足や取引網の崩壊が、直接的に生産量の減少や品質の低下を招いています。これに追い打ちをかけるのが気候変動の進行です。イエメンは深刻な気候変動の影響を受けており、雨量の減少や気温の上昇が桃栽培には致命的な打撃となっています。この点では、水管理システムの改善や乾燥地専用の耐性品種の導入が長期的な戦略として必要です。

結論として、イエメンの桃・ネクタリン生産は、地域特有の社会的・環境的問題を背景に、非常に脆弱な状態にあります。一方で、農業技術による改善の余地や地場産業としての潜在可能性を秘めていることも事実です。政府や国際機関は、地元農家への技術的支援、水資源管理の強化、さらには安全な供給チェーンの確立など、具体的な政策を強化する必要があります。これにより、イエメンの農業が地域社会の安定性と経済成長に寄与し続けることが可能となるのです。