国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、イエメンの小麦生産量は長期的に大きな変動を示しています。特に2010年には過去最高の265,432トンを記録しましたが、その後、紛争や社会不安、災害の影響を受け、近年は生産量が低迷しています。2022年には100,000トンと、2010年と比較して約62%減少しています。
イエメンの小麦生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 100,000 |
2021年 | 138,027 |
2020年 | 127,171 |
2019年 | 100,332 |
2018年 | 92,210 |
2017年 | 95,651 |
2016年 | 95,917 |
2015年 | 124,940 |
2014年 | 192,215 |
2013年 | 232,190 |
2012年 | 250,264 |
2011年 | 232,339 |
2010年 | 265,432 |
2009年 | 222,129 |
2008年 | 170,446 |
2007年 | 218,520 |
2006年 | 149,173 |
2005年 | 112,963 |
2004年 | 103,265 |
2003年 | 103,794 |
2002年 | 131,733 |
2001年 | 152,742 |
2000年 | 141,884 |
1999年 | 139,563 |
1998年 | 167,058 |
1997年 | 129,175 |
1996年 | 144,926 |
1995年 | 170,929 |
1994年 | 171,033 |
1993年 | 159,707 |
1992年 | 152,170 |
1991年 | 99,913 |
1990年 | 154,937 |
1989年 | 162,572 |
1988年 | 142,452 |
1987年 | 112,527 |
1986年 | 95,462 |
1985年 | 73,000 |
1984年 | 52,252 |
1983年 | 50,162 |
1982年 | 82,384 |
1981年 | 84,581 |
1980年 | 73,000 |
1979年 | 88,000 |
1978年 | 59,000 |
1977年 | 88,332 |
1976年 | 85,674 |
1975年 | 88,134 |
1974年 | 101,984 |
1973年 | 76,070 |
1972年 | 45,000 |
1971年 | 51,700 |
1970年 | 38,500 |
1969年 | 35,940 |
1968年 | 41,000 |
1967年 | 46,300 |
1966年 | 43,900 |
1965年 | 44,600 |
1964年 | 41,500 |
1963年 | 37,000 |
1962年 | 35,000 |
1961年 | 34,000 |
FAOのデータを分析すると、イエメンの小麦生産量は1960年代から安定的に増加を続けていましたが、1970年代後半から1980年代にかけては変動が激しくなっています。特に1980年代後半から1990年代初頭にかけて生産量が急増し、これは農業技術の改良や灌漑システムの整備が進んだことによるものと考えられます。しかし、一部の年では天候不順や社会的混乱が影響し、減産する傾向も見られます。
2010年には265,432トンと最高値を記録しましたが、その後、紛争や内戦による地政学的リスクの高まり、さらに灌漑インフラの破壊や農業従事者の減少が主な要因となり、小麦生産量は大幅に減少しました。特に2015年以降は紛争が激化したことにより農業活動が著しく制限され、2018年には生産量が92,210トンと低迷しています。近年、2021年には138,027トンと一時的に回復しましたが、2022年には再び100,000トンにまで減少しています。
紛争や社会不安によって農業に十分な資源が割かれていないことが、この減少の主要な背景にあります。特に農村部でのインフラ不足、肥料の調達困難、水資源の枯渇などが深刻な課題となっています。また、イエメンは食料自給率が低く、小麦の大半を輸入に頼っているため、国際的な物流の不安定さや価格変動も食料安全保障をさらに難しくしています。
このような背景を考慮すると、イエメンの小麦生産量を安定させ、増加させるためには複数の対策が必要です。まず、農業生産にとって欠かせないインフラの再建を急務とする必要があります。具体的には、壊れた灌漑システムを修復し、水資源の管理システムを近代化することが求められます。また、農業従事者への技術支援とトレーニングを実施し、農業生産性の向上を図ることも重要です。
国際的な視点で見ると、イエメンのような地域は気候変動や紛争の影響を特に受けやすいため、国際機関や周辺諸国による支援が不可欠です。食料生産を復興させるための協調的な枠組みを構築し、短期的には緊急の人道援助を、長期的には農業の持続可能な成長を支える仕組みを設ける必要があります。また、例えば日本や他の先進国が行っている防災農業技術の導入や、アメリカが提供するような気候に適した農業シードの供給が、イエメンの農業を支援するモデルとなり得ます。
紛争や地域的な不安定状況が収束しない限り、小麦生産量が回復基調を維持するのは難しい可能性が高いです。そこで、食料供給の安定化に向けて地元コミュニティと国際社会が協力し、農業と平和プロセスを並行して推進することが、イエメンの未来にとって大きな鍵となるでしょう。