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イエメンのスイカ生産量推移(1961年~2023年)

国連食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、イエメンのスイカ生産量は1961年の17,800トンから2023年の174,211トンまで長期的に増加傾向にあります。ただし、地域情勢や自然条件の影響により、特定の期間で減少や変動も見られます。1990年代に顕著な落ち込みがある一方、2000年代後半以降は一部回復が見られ、2021年および2022年には20万トンを超える生産量を記録しています。最新の2023年は174,211トンに減少していますが、過去の平均より高い水準を維持しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 174,211
-16.91% ↓
2022年 209,674
3.22% ↑
2021年 203,138
41.53% ↑
2020年 143,534
1.59% ↑
2019年 141,283
-14.18% ↓
2018年 164,627
12.45% ↑
2017年 146,394
0.8% ↑
2016年 145,233
-5.86% ↓
2015年 154,280
-6% ↓
2014年 164,128
-9.44% ↓
2013年 181,234
-0.54% ↓
2012年 182,214
22.17% ↑
2011年 149,153
-21% ↓
2010年 188,792
9.67% ↑
2009年 172,148
4% ↑
2008年 165,520
2% ↑
2007年 162,274
10% ↑
2006年 147,520
2.29% ↑
2005年 144,212
2.03% ↑
2004年 141,339
63.3% ↑
2003年 86,554
0.57% ↑
2002年 86,064
1.25% ↑
2001年 85,005
8.65% ↑
2000年 78,241
-5.99% ↓
1999年 83,223
-12.22% ↓
1998年 94,812
5.7% ↑
1997年 89,695
-4.52% ↓
1996年 93,938
0.36% ↑
1995年 93,605
-6.96% ↓
1994年 100,607
-16.14% ↓
1993年 119,967
-2.32% ↓
1992年 122,817
-2.87% ↓
1991年 126,452
-27.16% ↓
1990年 173,595
-14.95% ↓
1989年 204,109
7.1% ↑
1988年 190,582
3.94% ↑
1987年 183,361
7.64% ↑
1986年 170,349
13.57% ↑
1985年 150,000
15.38% ↑
1984年 130,000
18.18% ↑
1983年 110,000
22.22% ↑
1982年 90,000
28.57% ↑
1981年 70,000
-15.76% ↓
1980年 83,093
6.86% ↑
1979年 77,761
40.87% ↑
1978年 55,200
0.36% ↑
1977年 55,000
0.24% ↑
1976年 54,867
27.06% ↑
1975年 43,182
20.74% ↑
1974年 35,765
17.33% ↑
1973年 30,482
42.86% ↑
1972年 21,337
-46.15% ↓
1971年 39,626
98.13% ↑
1970年 20,000
2.04% ↑
1969年 19,600 -
1968年 19,600
3.7% ↑
1967年 18,900 -
1966年 18,900
2.16% ↑
1965年 18,500
2.21% ↑
1964年 18,100 -
1963年 18,100
1.69% ↑
1962年 17,800 -
1961年 17,800 -

イエメンのスイカ生産量は1961年から2023年のデータを考慮すると、長期的な増加傾向が明確ですが、地政学的要因と環境的制約がその推移に大きな影響を与えていることが窺えます。1960年代から1970年代にかけては安定的な微増が続き、1979年には77,761トン、1985年には150,000トンと生産量が急速に拡大しました。この急増は、農業技術の普及や灌漑設備の改善が背景にあり、政府主導の農業近代化政策の成果であると考えられます。

1980年代後半には20万トンを超えるピークを迎えますが、1990年代になると急激な減少を見せています。この原因として、政治的不安定や内戦の発生が挙げられます。この時期、食料生産基盤の破壊、農村の労働力不足、そして輸送インフラの崩壊が生産効率を低下させたとされています。1990年の173,595トンから1994年には100,607トンに落ち込み、生産量は半減しています。また、1990年代後半にかけても回復は鈍く、根本的な農業基盤の再構築がなされないまま低迷が続いたことが明らかです。

2000年代に入ると、再び生産量は安定し始め、2004年には141,339トン、2007年には162,274トンへと復調します。この回復は、政府や国際機関による農業支援プログラム、特に灌漑プロジェクトの拡大が奏功した結果と考えられます。しかしながら、2011年の「アラブの春」を通じて再び情勢が不安定化し、生産量も上下を繰り返します。2011年の149,153トンからその後の数年間は緩やかに減少し、2015年には154,280トン、2019年には141,283トンと低下が続きました。

特筆すべきは2021年と2022年における生産量の顕著な増加です。2021年に203,138トン、2022年には209,674トンと過去最高を記録しました。この背景には、地域ごとの平和的な環境が一時的に回復したことや、地域内協力の強化、さらには天候条件の好調が挙げられます。しかしながら、最新の2023年では174,211トンと再び減少が見られます。これには、依然として続く紛争の影響や、気候変動による影響が懸念されます。イエメン全土には、灌漑の不備と水資源の管理不足などの構造的な問題が残されています。

将来的な課題として、安定的な農業基盤の確立が求められます。特に、干ばつへの対応策としての効率的な灌漑技術の導入が急務です。また、紛争や政治的不安定が農業活動に与える影響を最小化するためには、地域間での協力や国際的な援助が重要です。日本のように、高度な農業技術を用いた集約的な栽培方法をモデルとすることも選択肢として考えられます。また、水量が限られている中での持続可能な農業を実現するため、イスラエルが進めているような最先端の滴下灌漑技術も導入の検討に値するでしょう。

国際社会におけるイエメンへの支援も引き続き必要です。特に農業分野への資金提供や、気候リスクを緩和するための長期的なインフラ投資が不可欠です。今後、地域衝突が収束し、安定した農業政策が遂行されれば、イエメンのスイカ生産量は再び過去最高水準に達する可能性があります。その一方で、気候変動がもたらす予測困難な自然条件に備えるための柔軟な対応も同時に求められると考えられます。