国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、イエメンのニンニク生産量は1979年に約4,488トンを記録し、その後1980年代後半から1990年初頭にかけて急成長を遂げました。1989年には11,216トンと過去最高を記録したものの、2004年以降、大幅な減少を示し、2023年には過去40年間で最低水準の3,191トンに落ち込んでいます。この長期的な生産低迷の背景には、地政学的リスク、社会的・経済的課題、気候変動など複数の要因が関係していると考えられます。
イエメンのニンニク生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 3,191 |
-1.75% ↓
|
2022年 | 3,248 |
1.22% ↑
|
2021年 | 3,209 |
-1.72% ↓
|
2020年 | 3,265 |
-0.16% ↓
|
2019年 | 3,270 |
1.47% ↑
|
2018年 | 3,223 |
-2.11% ↓
|
2017年 | 3,292 |
-1.41% ↓
|
2016年 | 3,339 |
-4.3% ↓
|
2015年 | 3,489 |
-12.99% ↓
|
2014年 | 4,010 |
-6.92% ↓
|
2013年 | 4,308 |
-0.55% ↓
|
2012年 | 4,332 |
22.13% ↑
|
2011年 | 3,547 |
-18.23% ↓
|
2010年 | 4,338 |
2.31% ↑
|
2009年 | 4,240 |
7.04% ↑
|
2008年 | 3,961 |
3.99% ↑
|
2007年 | 3,809 |
10.12% ↑
|
2006年 | 3,459 |
2.37% ↑
|
2005年 | 3,379 |
-1.17% ↓
|
2004年 | 3,419 |
-71.12% ↓
|
2003年 | 11,840 |
7.44% ↑
|
2002年 | 11,020 |
2.75% ↑
|
2001年 | 10,725 |
-13.65% ↓
|
2000年 | 12,421 |
12.92% ↑
|
1999年 | 11,000 |
4.76% ↑
|
1998年 | 10,500 |
5% ↑
|
1997年 | 10,000 |
11.11% ↑
|
1996年 | 9,000 | - |
1995年 | 9,000 | - |
1994年 | 9,000 |
-0.44% ↓
|
1993年 | 9,040 | - |
1992年 | 9,040 |
7.48% ↑
|
1991年 | 8,411 |
-1.04% ↓
|
1990年 | 8,499 |
-24.22% ↓
|
1989年 | 11,216 |
45.36% ↑
|
1988年 | 7,716 |
11.94% ↑
|
1987年 | 6,893 |
15.02% ↑
|
1986年 | 5,993 |
16.69% ↑
|
1985年 | 5,136 |
6.93% ↑
|
1984年 | 4,803 |
6.36% ↑
|
1983年 | 4,516 |
6.66% ↑
|
1982年 | 4,234 |
4.8% ↑
|
1981年 | 4,040 |
-15.76% ↓
|
1980年 | 4,796 |
6.86% ↑
|
1979年 | 4,488 | - |
イエメンの農業生産、特にニンニクの生産量は、1970年代末から1980年代にかけて安定した成長を見せました。この期間、農地の拡大や灌漑の効率化といった農業インフラ整備が進み、生産量が増加したと考えられます。1989年に記録された11,216トンは、イエメンの農業史において特筆すべき成果でした。しかし、1990年代に入るとその急成長は一旦鈍化し、1997年以降に再び10,000トンを超える生産量を記録するも、以降2004年から生産量が急激に落ち込み始めました。
この原因としてまず挙げられるのは、1990年代から2000年代にかけての社会経済的な混乱です。イエメンでは長期にわたる内戦や政治不安定が影響し、農業の生産基盤が大きく揺らぎました。また、農作物の輸送インフラの機能不全や、農業資材の入手困難といった問題も深刻化しました。さらに、2000年代以降の気候変動の影響が加速したことも、乾燥地帯である同国への重大な影響を与えました。灌漑用水の確保が難しくなったことで、ニンニク生産地の縮小を余儀なくされたのです。
また、近年のデータを見ると、2010年代以降はニンニクの生産量が3,000トン台にとどまっています。この間、新型コロナウイルス感染症のパンデミックも世界的に社会・経済活動に打撃を与えましたが、特に輸入依存度が高い地域では、農業資材の価格上昇がもたらした生産コストの増加が直接的な影響を及ぼしたといえます。さらに、国民の大部分が食料の輸入に依存する現状では、国内農業が振興される機会が減少しました。
イエメンのニンニク生産の長期的な低迷を改善するためには、国際的な支援と国内農業政策の見直しが必要不可欠です。具体的には、以下の施策が提案されます。まず、農業インフラの整備と維持に向けて、灌漑技術の近代化や水資源管理の効率化を進めるべきです。また、現地の農家が国際市場で競争力を持つための技術支援や教育の拡充も必要です。さらに、農業補助金を含む経済的な政策支援により、農家が収益性の高い作物を再び生産できる環境を整えることが求められます。
地政学的リスクを考えると、イエメンの内戦や安定性の欠如によって、農業従事者が安心して生産に専念できない状況が続いています。これに対する解決策として、地域間の平和構築プロジェクトを国際的な枠組みで推進する必要があります。アフリカや中東地域で行われた成功事例を参考に、農村部への投資と環境保全を組み合わせたパートナーシップの構築が有効と考えられます。
結論として、イエメンのニンニク生産量の推移は、国内外の多くの要因が複雑に絡み合っていることを示しています。この生産低迷を改善するためには、技術革新と国際的な協力が欠かせません。国連や関連機関は、イエメンの農業支援プログラムに注力し、中長期的な視点で解決策を講じるべきです。それによって、イエメンの農業生産が持続的な回復を遂げる可能性が高まります。