国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、イエメンの鶏卵生産量は長期的な増加傾向を示しており、2023年には75,140トンに達しました。1960年代は年間約2,500トンで推移しており、生産量は60年以上の間に約30倍に拡大しました。しかし、近年は内戦や地政学的課題、新型コロナウイルスの影響などにより、生産量が一時的に減少する年も見られます。今後、生産の安定化にはインフラ整備や安全保障の確立が重要とされています。
イエメンの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 75,140 |
1.61% ↑
|
2022年 | 73,950 |
-4.67% ↓
|
2021年 | 77,571 |
4.97% ↑
|
2020年 | 73,899 |
5% ↑
|
2019年 | 70,380 |
18.05% ↑
|
2018年 | 59,619 |
-8.98% ↓
|
2017年 | 65,500 |
0.29% ↑
|
2016年 | 65,312 |
-2.09% ↓
|
2015年 | 66,708 |
-2.02% ↓
|
2014年 | 68,085 |
1.17% ↑
|
2013年 | 67,300 |
6.12% ↑
|
2012年 | 63,420 |
2.29% ↑
|
2011年 | 62,000 |
2.31% ↑
|
2010年 | 60,600 |
3.41% ↑
|
2009年 | 58,600 |
3.9% ↑
|
2008年 | 56,400 |
5.22% ↑
|
2007年 | 53,600 |
5.61% ↑
|
2006年 | 50,752 |
4.95% ↑
|
2005年 | 48,360 |
2.42% ↑
|
2004年 | 47,216 |
2.02% ↑
|
2003年 | 46,280 |
45.19% ↑
|
2002年 | 31,876 |
0.33% ↑
|
2001年 | 31,772 |
2.14% ↑
|
2000年 | 31,106 |
-0.8% ↓
|
1999年 | 31,356 |
0.5% ↑
|
1998年 | 31,200 |
22.35% ↑
|
1997年 | 25,500 |
33.51% ↑
|
1996年 | 19,100 |
3.52% ↑
|
1995年 | 18,450 |
1.93% ↑
|
1994年 | 18,100 |
-5.1% ↓
|
1993年 | 19,072 |
-7.5% ↓
|
1992年 | 20,619 |
12.05% ↑
|
1991年 | 18,402 |
6.57% ↑
|
1990年 | 17,268 |
0.6% ↑
|
1989年 | 17,165 |
6.65% ↑
|
1988年 | 16,095 |
8.48% ↑
|
1987年 | 14,837 |
2.05% ↑
|
1986年 | 14,539 |
8.18% ↑
|
1985年 | 13,440 |
18.67% ↑
|
1984年 | 11,326 |
31.3% ↑
|
1983年 | 8,626 |
7.81% ↑
|
1982年 | 8,001 |
3.81% ↑
|
1981年 | 7,707 |
8.56% ↑
|
1980年 | 7,099 |
10.2% ↑
|
1979年 | 6,442 |
6.01% ↑
|
1978年 | 6,077 |
8.38% ↑
|
1977年 | 5,607 |
57.9% ↑
|
1976年 | 3,551 |
6.44% ↑
|
1975年 | 3,336 |
3.54% ↑
|
1974年 | 3,222 |
3.6% ↑
|
1973年 | 3,110 |
1.73% ↑
|
1972年 | 3,057 |
1.76% ↑
|
1971年 | 3,004 |
3.16% ↑
|
1970年 | 2,912 |
1.53% ↑
|
1969年 | 2,868 |
1.56% ↑
|
1968年 | 2,824 |
1.58% ↑
|
1967年 | 2,780 |
1.61% ↑
|
1966年 | 2,736 |
1.79% ↑
|
1965年 | 2,688 |
1.97% ↑
|
1964年 | 2,636 |
2.17% ↑
|
1963年 | 2,580 |
2.22% ↑
|
1962年 | 2,524 |
2.27% ↑
|
1961年 | 2,468 | - |
イエメンの鶏卵生産量は1960年代の年間約2,500トンという低い水準から始まり、2023年には75,140トンにまで大きく増加しました。この成長の背景には、1970年代後半から1980年代にかけての農業技術の発展や、1990年の南北統一による政策転換が挙げられます。特に、1977年から1984年までの間は急激な増加が顕著で、わずか7年で約6,000トンから11,000トン以上の水準に成長しました。これには、近代的な鶏卵生産技術の導入と市場拡大が寄与したと考えられます。
2000年代に入ると、生産量の増加はさらに加速し、特に2003年以降の市場需要の高まりがその背景となっています。この期間には、徐々に安定した増加が見られ、2014年にはピークといえる68,085トンを記録しました。しかし、2015年以降は急激に減少し、2018年には約59,619トンまで下落しています。この背景には、内戦や経済的混乱、新型コロナウイルスのパンデミックが主要な要因として挙げられます。
特に内戦の影響は大きく、農地破壊や物流システムの混乱により、畜産業全体に打撃を与えました。地政学的リスクが高い状態では、食糧安全保障が脅威にさらされ、鶏卵の生産や流通に大きな障壁が生じました。ただし、これらの課題にもかかわらず、2019年以降は生産量が回復基調に転じており、2023年には75,140トンまで改善しています。これにより、イエメンの農業セクターの回復力が一定程度示されていると言えます。
他国と比較すると、イエメンの鶏卵生産量は依然として小規模であり、日本の年間約250万トン(2023年の推定)、アメリカの約700万トンといった大規模生産国には遠く及びません。イランやエジプトといった中東地域内の競合国に比べても、生産量や品質、市場競争力の点で課題が見られます。これらの国々では養鶏の効率化や物流インフラの整備が進んでおり、イエメンとの格差が徐々に広がっています。
持続可能な農業生産と食糧安全保障を実現するためには、いくつかの具体的な対策が求められます。まず第一に、インフラ整備と生産基盤の強化が急務です。紛争地域の農地を復興させるだけでなく、冷蔵保存や物流インフラを整備することで、食品廃棄を最小限に抑える努力が必要です。第二に、長期的な国際支援の枠組みを構築することが重要です。FAOや他の国際機関からの技術支援と資金提供を受け入れることで、安定した生産体制を実現できます。また、病気対策のために飼育環境の改善も必要です。特に、肉用鶏や卵用鶏の区別を明確にし、生産管理システムを導入することで感染症リスクを低減できます。
また、地政学的リスクに対しては、地域間協力の枠組みを強化することが重要です。たとえば、隣国と連携して災害時の物流ルートを確保し、食糧不足を回避する仕組みを作るべきです。同時に、教育を通じて地元農家への知識供与を進め、効率的な農業技術の導入を促進することが求められます。
結論として、イエメンの鶏卵生産は過去60年以上で大きな飛躍を遂げていますが、依然として経済や安全保障上の不安定さがその進展を妨げています。今後は、国際連携や技術革新を通じて生産の安定化を図るとともに、地元市場の需要を満たす持続可能な農業体制を構築することが必要です。これにより、イエメンが直面している食糧安全保障の課題を克服する一助となるでしょう。