国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、イエメンのオクラ生産量は長期的な変動を繰り返しつつ、近年顕著な増減を示しています。特に1979年に9,457トンだった生産量は、2000年代に安定した増加傾向を示し、2021年には過去最高の28,710トンを記録しました。しかし、それ以降は再び減少に転じ、2023年は23,599トンとなっています。イエメンのオクラ生産量の推移には、自然環境の変化や国内外の情勢が影響していると考えられます。
イエメンのオクラ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 23,599 |
-12.03% ↓
|
2022年 | 26,826 |
-6.56% ↓
|
2021年 | 28,710 |
27.83% ↑
|
2020年 | 22,460 |
-1.55% ↓
|
2019年 | 22,814 |
51.5% ↑
|
2018年 | 15,059 |
-13.17% ↓
|
2017年 | 17,344 |
-0.8% ↓
|
2016年 | 17,484 |
-4.32% ↓
|
2015年 | 18,273 |
-7% ↓
|
2014年 | 19,648 |
-8.37% ↓
|
2013年 | 21,442 |
0.47% ↑
|
2012年 | 21,342 |
20.82% ↑
|
2011年 | 17,664 |
-27.24% ↓
|
2010年 | 24,277 |
7.81% ↑
|
2009年 | 22,519 |
4.59% ↑
|
2008年 | 21,530 |
3.86% ↑
|
2007年 | 20,730 |
10.16% ↑
|
2006年 | 18,818 |
5.11% ↑
|
2005年 | 17,904 |
2.48% ↑
|
2004年 | 17,470 |
-22.23% ↓
|
2003年 | 22,463 |
1.91% ↑
|
2002年 | 22,042 |
1.31% ↑
|
2001年 | 21,756 |
7.48% ↑
|
2000年 | 20,242 |
3.05% ↑
|
1999年 | 19,642 |
3.17% ↑
|
1998年 | 19,038 |
9.82% ↑
|
1997年 | 17,336 |
-3.54% ↓
|
1996年 | 17,972 |
10.75% ↑
|
1995年 | 16,228 |
9.71% ↑
|
1994年 | 14,792 |
-4.4% ↓
|
1993年 | 15,472 |
-0.37% ↓
|
1992年 | 15,530 |
11.6% ↑
|
1991年 | 13,916 |
-2.02% ↓
|
1990年 | 14,203 |
-5.1% ↓
|
1989年 | 14,967 |
2.35% ↑
|
1988年 | 14,623 |
2.19% ↑
|
1987年 | 14,310 |
13.31% ↑
|
1986年 | 12,629 |
16.69% ↑
|
1985年 | 10,823 |
6.93% ↑
|
1984年 | 10,122 |
6.37% ↑
|
1983年 | 9,516 |
6.66% ↑
|
1982年 | 8,922 |
4.8% ↑
|
1981年 | 8,513 |
-15.75% ↓
|
1980年 | 10,105 |
6.85% ↑
|
1979年 | 9,457 | - |
イエメンのオクラ生産量のデータを分析すると、過去40年以上にわたり、総じて増加傾向が見られるものの、特定の時期には顕著な減少が確認できます。1979年から2003年にかけては徐々に生産量が増加し、一時的な減少を経ながらも2003年には22,463トンに達しました。しかし、2004年に17,470トンまで急減した後、再び回復傾向を示しました。このような長期的変動の背後には、気候変動や農業政策の変化、地政学的リスクなどが深く関与しているものと思われます。
2000年代後半以降、イエメンは社会経済の変化や地域紛争、政治的不安定が続く中、オクラ生産量に対しても影響が出ていると考えられます。特に2011年以降は、アラブの春やその後の内戦の影響により、大幅な生産量の減少が確認されました。この時期、インフラの崩壊や安全保障の悪化が農業生産に与えた影響は非常に大きかったといえます。2011年から2018年にかけての生産量は、年間15,000~22,000トンの範囲で不安定な推移を示しています。
2021年、オクラ生産量は28,710トンと過去最高に達しましたが、2023年には23,599トンへ減少しています。この増減の背景には、天候や降雨量の変動、または紛争による農業生産地域の機能低下が影響していると考えられます。これには近年の気候変動がもたらす大雨や干ばつ、またエネルギー価格の高騰による農業生産コストの増加なども関連が深いと推測されます。
イエメンの地政学的背景を考慮すると、内戦や地域紛争がオクラ生産および輸送に与える影響を無視することはできません。オクラの生産地域が主に農村部に集中していることを踏まえると、農地へのアクセスや灌漑施設の維持に対する投資が不足していることが課題となっています。また、内戦による避難民の増加やインフラの破壊が、農業従事者の減少や生産効率の低下を招いていると見られます。
このような状況を踏まえ、イエメンのオクラ生産の安定化と向上にはいくつかの具体的な対策が必要です。まず、農地への灌漑施設の整備や既存インフラの修復に投資することが急務です。これにより、気象条件に依存しにくい農業システムを構築することが可能になります。さらに、オクラの栽培技術向上を目的とした農業従事者向けの技術支援や教育プログラムの導入も重要です。
また、国内外の援助を受け、地域紛争の解決とともに農業分野への支援を強化することが求められます。特に、国際機関やNGOが率先して地域分断を防ぐための協力体制を整え、農産物の安定供給を実現することが不可欠です。さらに、輸出市場を拡大するためのインフラ整備や、品質管理技術の向上に取り組むことで、イエメン経済全体の成長につなげることができるでしょう。
結論として、イエメンのオクラ生産量は過去数十年にわたる困難な状況にもかかわらず、一定程度の回復を見せてきました。しかし、地政学的リスクや気候変動への対応が今後の課題として残されています。これを克服するためには、農業分野への戦略的投資と地域協力の強化が不可欠です。これにより、イエメン国内だけでなく、世界的な食糧安全保障にも貢献することが期待されます。