国際連合食糧農業機関(FAO)による最新のデータ(2024年7月更新)によると、イエメンの牛乳生産量は長期的には増加の傾向を示しています。1961年の124,626トンから2021年には407,566トンと約3.3倍に増加しましたが、その推移は一定ではなく、地域の紛争や経済の不安定さにより大きな変動が見られます。特に近年、新型コロナウイルスや地域紛争が生産量に短期的な影響を及ぼしていますが、全体としては回復の兆しが観測されています。
イエメンの牛乳生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 386,574 |
2021年 | 407,566 |
2020年 | 388,158 |
2019年 | 369,674 |
2018年 | 316,782 |
2017年 | 316,676 |
2016年 | 319,143 |
2015年 | 355,808 |
2014年 | 379,564 |
2013年 | 360,349 |
2012年 | 339,197 |
2011年 | 321,244 |
2010年 | 310,671 |
2009年 | 392,157 |
2008年 | 367,070 |
2007年 | 335,156 |
2006年 | 302,019 |
2005年 | 306,936 |
2004年 | 301,893 |
2003年 | 297,142 |
2002年 | 274,260 |
2001年 | 275,001 |
2000年 | 262,215 |
1999年 | 257,876 |
1998年 | 247,803 |
1997年 | 238,529 |
1996年 | 227,785 |
1995年 | 222,423 |
1994年 | 218,450 |
1993年 | 219,914 |
1992年 | 219,466 |
1991年 | 212,020 |
1990年 | 206,808 |
1989年 | 188,389 |
1988年 | 182,331 |
1987年 | 172,453 |
1986年 | 167,855 |
1985年 | 163,015 |
1984年 | 155,098 |
1983年 | 138,110 |
1982年 | 120,997 |
1981年 | 104,090 |
1980年 | 97,536 |
1979年 | 97,084 |
1978年 | 94,604 |
1977年 | 92,088 |
1976年 | 97,298 |
1975年 | 100,990 |
1974年 | 95,890 |
1973年 | 95,790 |
1972年 | 96,770 |
1971年 | 95,278 |
1970年 | 90,158 |
1969年 | 93,056 |
1968年 | 103,530 |
1967年 | 120,574 |
1966年 | 121,352 |
1965年 | 125,852 |
1964年 | 124,232 |
1963年 | 123,124 |
1962年 | 124,362 |
1961年 | 124,626 |
イエメンの牛乳生産量データを見ると、1960年代から1970年にかけては一貫して減少し、1970年には90,158トンまで低下しました。この減少はイエメンの社会経済状況の変化や農業基盤の不十分さが要因と考えられます。しかし、1980年代以降には明確な増加傾向が見られ、特に1983年から1990年にかけての年間平均成長率は顕著であり、この期間に生産量が約1.5倍に拡大しました。この背景には、農業技術の改善や家畜の管理能力の向上が関係していると推測されます。この成長は1999年まで続き、262,215トンの生産量を記録しました。
一方で、2000年代後半から2010年代前半にかけて再び変動が激化しました。2009年には392,157トンと大きく増加しましたが、2010年には310,671トンに急減しています。この変動は、イエメン特有の地政学的リスクや政治的紛争に関連するものと考えられます。さらに2015年に始まるイエメン内戦や、持続する経済的困難が農業セクターを直撃し、2015年以降、生産量が355,808トンから2018年の316,782トンまで落ち込みました。特に干ばつやインフラの破壊が酪農業に深刻な影響を与えたことが分かります。
しかし、2019年以降、生産量は再び回復基調に転じ、2021年には407,566トンと過去最高を記録しています。これは、地方農業コミュニティの生産性の回復や、国際的な支援の影響などが寄与していると考えられます。ただし、2022年には386,574トンと若干の減少が見られ、この回復基調にはまだ課題があることを示唆しています。
イエメンの酪農業は、干ばつによる水資源の不足や土壌の劣化、紛争によるインフラや流通システムの破壊、また燃料不足による家畜飼育コストの増加といった多面的な課題に直面しています。また、近年の新型コロナウイルス感染症の影響は、国際的な物流の停滞を招き、飼料の供給や技術的支援を難しくする一因となりました。一方、2021年以降の回復基調は、国際機関やNGOの支援活動が一定の成果を挙げた可能性を示唆しており、復興のポテンシャルは十分にあると考えられます。
将来的には、持続可能な酪農業を実現するために、紛争の解決と安定的な治安環境の確立が前提条件となります。そのうえで、以下の具体的な対策が有効です。まず、気候変動に対応した農業技術の導入や水資源管理の強化が不可欠です。例えば、低水量で利用可能な飼料作物の開発や、現地での飼料生産を支援することで、燃料や輸送コストの軽減が期待できます。また、農業生産者の教育支援を通じて近代的な酪農技術の普及を目指すべきです。さらに、地域間協力や国際的パートナーシップを強化し、農業インフラの再構築と輸送ネットワークの復興を進める必要があります。
結論として、イエメンの牛乳生産量のデータは、同国の農業セクターが地政学的背景と密接に関連していることを示しています。持続可能な農業の発展には、国際社会と地域間の連携が必要であり、特に安定的な支援が求められます。このような取り組みにより、イエメンの酪農業が再度安定した成長を遂げ、地域住民の生活向上に寄与することが期待されます。