FAO(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、1960年代以降、シンガポールのヤギ飼養頭数は断続的な増減を繰り返しながらも、全体的に減少傾向を示しています。1969年には2,000頭と最も多い頭数に達しましたが、その後急激に減少し、1989年には200頭にまで落ち込みました。2000年代以降は比較的安定した推移を示し、2015年から2022年にかけてはゆるやかな増加が見られ、2022年には746頭と増加傾向を示しています。
シンガポールのヤギ飼養頭数推移(1961年~2023年)
年度 | 飼養頭数(頭) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 753 |
0.94% ↑
|
2022年 | 746 |
2.05% ↑
|
2021年 | 731 |
1.81% ↑
|
2020年 | 718 |
1.41% ↑
|
2019年 | 708 |
-1.67% ↓
|
2018年 | 720 |
4.8% ↑
|
2017年 | 687 |
0.15% ↑
|
2016年 | 686 |
-1.44% ↓
|
2015年 | 696 |
3.88% ↑
|
2014年 | 670 | - |
2013年 | 670 | - |
2012年 | 670 | - |
2011年 | 670 | - |
2010年 | 670 |
3.08% ↑
|
2009年 | 650 |
4.84% ↑
|
2008年 | 620 |
3.33% ↑
|
2007年 | 600 |
-14.29% ↓
|
2006年 | 700 |
-6.67% ↓
|
2005年 | 750 |
25% ↑
|
2004年 | 600 | - |
2003年 | 600 |
20% ↑
|
2002年 | 500 |
-28.57% ↓
|
2001年 | 700 |
40% ↑
|
2000年 | 500 | - |
1999年 | 500 |
-9.09% ↓
|
1998年 | 550 | - |
1997年 | 550 | - |
1996年 | 550 | - |
1995年 | 550 | - |
1994年 | 550 |
57.14% ↑
|
1993年 | 350 |
-12.5% ↓
|
1992年 | 400 |
33.33% ↑
|
1991年 | 300 |
50% ↑
|
1990年 | 200 |
-25.93% ↓
|
1989年 | 270 |
-46% ↓
|
1988年 | 500 | - |
1987年 | 500 | - |
1986年 | 500 |
25% ↑
|
1985年 | 400 |
-11.11% ↓
|
1984年 | 450 |
-15.09% ↓
|
1983年 | 530 |
-24.29% ↓
|
1982年 | 700 |
7.69% ↑
|
1981年 | 650 |
-13.33% ↓
|
1980年 | 750 |
-31.82% ↓
|
1979年 | 1,100 |
83.33% ↑
|
1978年 | 600 |
-25% ↓
|
1977年 | 800 |
-33.33% ↓
|
1976年 | 1,200 |
-45.45% ↓
|
1975年 | 2,200 |
4.76% ↑
|
1974年 | 2,100 |
5% ↑
|
1973年 | 2,000 | - |
1972年 | 2,000 | - |
1971年 | 2,000 | - |
1970年 | 2,000 | - |
1969年 | 2,000 |
30.38% ↑
|
1968年 | 1,534 | - |
1967年 | 1,534 | - |
1966年 | 1,534 | - |
1965年 | 1,534 | - |
1964年 | 1,534 | - |
1963年 | 1,534 | - |
1962年 | 1,534 | - |
1961年 | 1,534 | - |
シンガポールのヤギ飼養頭数の歴史的データを振り返ると、特に1960年代後半から1970年代中期にかけて頭数が一時的に増加していたことが顕著です。これは恐らく農業の重要性がまだ認識されていた時代背景や、地域農業と食料供給のニーズに基づくものでしょう。しかし、1976年以降、シンガポールにおける都市化の進展や、農地の減少の影響が大きく現れ、頭数が大幅に減少しています。特に、1989年には200頭という非常に低い数値を記録しており、これは本格的な都市開発による農業従事者の減少および、土地利用の転換が原因として挙げられます。
その後、2000年代以降は徐々に持ち直し、700頭前後の安定した水準を維持してきました。近年では、2015年から2022年にかけて746頭まで頭数がわずかに増加しています。この増加は、地元農業の振興および、持続可能な農業の推進の一環としてヤギの飼養が見直された結果と考えられます。また、京都議定書など国際的な環境保護の動きも影響し、小規模ながらもエコフレンドリーな畜産業への需要が高まっている可能性があります。
一方で、シンガポールの地政学的背景や国土の限られた条件を考慮すると、ヤギ飼養のさらなる拡大には多くの課題が伴います。同国の面積は非常に小さく、都市化が進んでいるため、農地の確保には限界があります。また、近隣諸国での畜産物輸入が容易な環境が整っているため、地元生産の競争力を高めるのは難しい状況です。さらに、新型コロナウイルスなどのパンデミックや、気候変動による自然災害のリスクも畜産業全体に影響を与える可能性があります。
このような背景を踏まえ、シンガポールにおけるヤギ飼養の持続可能性を高めるには、いくつかの具体策が考えられます。まず、小規模ながら高付加価値のある生産形態を確立することが重要です。たとえば、有機農業や高品質な乳製品の生産に注力することで、消費者のニーズを満たしながら農村経済の活性化を図ることができます。また、近隣諸国やグローバルな市場と連携し、輸出可能な畜産製品の開発も視野に入れるべきです。加えて、都市部でのアグリテック(農業技術)の導入により、土地利用効率を最大化し省スペース型の畜産業を推進することが求められます。
結論として、シンガポールのヤギ飼養頭数の推移は都市化および経済発展と深く関連しており、政策的な取り組みや技術的な革新が必要不可欠であることを示しています。国や国際機関は、持続可能な農業モデルの導入、ならびにローカルフードの重要性を訴求し、効率的且つ環境に配慮した畜産業の将来に向けた改革を更にサポートしていく必要があります。