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シンガポールの鶏飼養数推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、シンガポールの鶏飼養数は1961年の2,000羽から年ごとに増加を見せ、1970年代半ばには4,500羽に達しました。その後、1980年代以降に急減し、次第に回復する動向を見せました。近年は再び増加傾向が続きましたが、2022年には2,500羽と急激に減少しています。これは、シンガポールにおける家畜産業の特性や政策的な転換、疫病や経済的要因の影響を反映している可能性が示唆されます。

年度 飼養数(羽) 増減率
2023年 2,883,000
15.32% ↑
2022年 2,500,000
-36% ↓
2021年 3,906,000
1.38% ↑
2020年 3,853,000
0.29% ↑
2019年 3,842,000
2.81% ↑
2018年 3,737,000
1.88% ↑
2017年 3,668,000
1.83% ↑
2016年 3,602,000
1.69% ↑
2015年 3,542,000
1.2% ↑
2014年 3,500,000 -
2013年 3,500,000 -
2012年 3,500,000
6.06% ↑
2011年 3,300,000 -
2010年 3,300,000
3.13% ↑
2009年 3,200,000
6.67% ↑
2008年 3,000,000 -
2007年 3,000,000
11.11% ↑
2006年 2,700,000 -
2005年 2,700,000 -
2004年 2,700,000
-3.57% ↓
2003年 2,800,000
7.69% ↑
2002年 2,600,000
23.81% ↑
2001年 2,100,000
5% ↑
2000年 2,000,000 -
1999年 2,000,000 -
1998年 2,000,000
-4.76% ↓
1997年 2,100,000
-16% ↓
1996年 2,500,000
19.05% ↑
1995年 2,100,000
10.53% ↑
1994年 1,900,000
5.56% ↑
1993年 1,800,000 -
1992年 1,800,000
-10% ↓
1991年 2,000,000
-4.76% ↓
1990年 2,100,000
-8.7% ↓
1989年 2,300,000 -
1988年 2,300,000
-28.13% ↓
1987年 3,200,000
-15.79% ↓
1986年 3,800,000 -
1985年 3,800,000
-15.56% ↓
1984年 4,500,000
-6.25% ↓
1983年 4,800,000 -
1982年 4,800,000 -
1981年 4,800,000 -
1980年 4,800,000
2.13% ↑
1979年 4,700,000
-2.08% ↓
1978年 4,800,000
6.67% ↑
1977年 4,500,000 -
1976年 4,500,000
7.14% ↑
1975年 4,200,000
7.69% ↑
1974年 3,900,000
8.33% ↑
1973年 3,600,000
5.88% ↑
1972年 3,400,000
3.03% ↑
1971年 3,300,000
6.45% ↑
1970年 3,100,000
3.33% ↑
1969年 3,000,000
3.45% ↑
1968年 2,900,000
3.57% ↑
1967年 2,800,000
3.7% ↑
1966年 2,700,000
3.85% ↑
1965年 2,600,000
8.33% ↑
1964年 2,400,000
9.09% ↑
1963年 2,200,000
10% ↑
1962年 2,000,000 -
1961年 2,000,000 -

シンガポールの鶏飼養数の推移を振り返ると、1960年代から1970年代にかけては安定的な増加が見られます。この期間は国内需要の高まりと食料自給率の向上を目指した政策が背景にあると考えられます。特に1975年から1978年には4,500羽以上の水準を記録し、食料供給の一環として地元生産の重要性が強調されていた時期であったと推測されます。

しかし、1980年代に入ると飼養数は急激に減少し、1990年代中盤までに約2,000羽前後の水準に収束しました。この要因の一つとして、土地不足や都市化による農場の縮小が挙げられます。シンガポールは面積が限られているため、住宅や商業開発が優先され、家畜の飼育施設は縮小を余儀なくされる状況となりました。また、輸入の増加に伴い、国内生産への依存は次第に軽減されていきました。

2000年代以降は再び上昇傾向が見られました。特に2010年代には、鶏飼養数が約3,500羽以上で推移し、2021年には3,906羽とピークに達しています。このような回復傾向の背景には、地域的な食品安全保障の必要性や輸入だけに頼らない供給体制の強化、そしてシンガポール政府による農業技術の近代化支援があると考えられます。また、2019年から2021年の増加は新型コロナウイルス感染症による物流混乱の影響を軽減するための政策的取り組みの一環とも言えるでしょう。

一方で、2022年には飼養数が2,500羽と顕著な落ち込みを見せており、この減少の要因についてはいくつかの仮説が立てられます。一つには、シンガポールの厳しい都市化と気候条件が影響し、持続可能な家畜経営が困難になった可能性があります。また、農業・家畜業への投資の再調整や輸入のさらなる依存強化、あるいは感染症対策の一環として生産規模が制限された可能性も考えられます。

シンガポールの家畜業におけるこのような動向には、いくつかの課題が見受けられます。まず、国土が狭いシンガポールでは家畜業の未来像を明確化する必要があります。食料調達の多元化を進める中で地元生産をどの程度維持するかの議論が重要です。また、飼養に伴う環境問題や気候変動の影響に対応するため、新たな技術の導入や政策強化が求められます。たとえば、飼育効率を高めるためのスマート農業の推進や、環境負荷を軽減する家畜の生育環境の整備などが挙げられます。

さらに、疫病や自然災害の影響が顕在化する中でリスク管理を強化することも急務です。アジア地域全体で見ても、鳥インフルエンザの影響で大規模な家禽(かきん)の淘汰が行われる事例は珍しくありません。このような背景を踏まえ、疫病の早期発見システムや国際間の協力体制を通じた予防策の構築が望まれます。

結論として、シンガポールの鶏飼養数の変動は、都市政策、輸入依存、疫病リスク、環境課題といった多様な要因を反映した結果と言えます。今後は、持続可能な食品供給を実現するために、政府と民間が連携し、技術革新や効率化を進めると共に、地域間の協力強化が不可欠です。