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シンガポールの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、シンガポールの鶏卵生産量は2023年に41,102トンとなり、近年において過去最高を記録しました。一方で、1960年代から1980年代半ばにかけて緩やかに増加していた生産量は、1980年代後半から1990年代初頭に急減し、その後も大きな変動を繰り返してきました。2020年代においては再び増加傾向が見られ、特に新型コロナウイルスの影響があった2020年以降、大きく伸びる結果となりました。この推移から、シンガポールが自国の食糧生産体制を強化するための取り組みを加速させたことが示唆されます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 41,102
12.47% ↑
2022年 36,544
-5.38% ↓
2021年 38,623
4.52% ↑
2020年 36,952
16.62% ↑
2019年 31,685
8.12% ↑
2018年 29,304
-6.34% ↓
2017年 31,288
15.31% ↑
2016年 27,134
7.29% ↑
2015年 25,290
-2.63% ↓
2014年 25,973
-1.13% ↓
2013年 26,269
8.84% ↑
2012年 24,135
4.79% ↑
2011年 23,031
13.01% ↑
2010年 20,380
1.95% ↑
2009年 19,991
-1.35% ↓
2008年 20,265
-9.55% ↓
2007年 22,405
5.41% ↑
2006年 21,255
3.12% ↑
2005年 20,611
-9.24% ↓
2004年 22,709
-3.4% ↓
2003年 23,509
8.52% ↑
2002年 21,663
35.39% ↑
2001年 16,000 -
2000年 16,000 -
1999年 16,000
0.41% ↑
1998年 15,935
-5.05% ↓
1997年 16,782
-7.75% ↓
1996年 18,191
-0.38% ↓
1995年 18,260
11.34% ↑
1994年 16,400
5.49% ↑
1993年 15,546
12.68% ↑
1992年 13,797
-9.34% ↓
1991年 15,219
-16.57% ↓
1990年 18,241
12.81% ↑
1989年 16,169
40.76% ↑
1988年 11,487
-28.24% ↓
1987年 16,008
-15.08% ↓
1986年 18,850
-7.54% ↓
1985年 20,388
-14.98% ↓
1984年 23,980
-6.87% ↓
1983年 25,750
-1.89% ↓
1982年 26,245
-1.89% ↓
1981年 26,750
-3.29% ↓
1980年 27,660
5.57% ↑
1979年 26,200
-2.6% ↓
1978年 26,900
4.67% ↑
1977年 25,700
1.18% ↑
1976年 25,400
9.2% ↑
1975年 23,260
7.5% ↑
1974年 21,638
6.85% ↑
1973年 20,250
6.97% ↑
1972年 18,930
4.01% ↑
1971年 18,200
7.06% ↑
1970年 17,000
4.29% ↑
1969年 16,300
4.49% ↑
1968年 15,600
4% ↑
1967年 15,000
4.9% ↑
1966年 14,300
5.93% ↑
1965年 13,500
5.47% ↑
1964年 12,800
8.47% ↑
1963年 11,800
4.42% ↑
1962年 11,300
7.62% ↑
1961年 10,500 -

長年にわたるデータを振り返ると、シンガポールの鶏卵生産量は、1960年代から1970年代にかけて安定的な増加を記録しました。この時期は、国内農業生産の拡大や新たな技術の導入が進められた結果、食糧自給率の向上が図られていたと考えられます。しかし、1980年代半ばから急激な減少傾向が顕著になり、1988年には最低値の約11,487トンを記録しています。この変化の背景には、シンガポールの高い都市化率や人口の増加、土地不足による農地の縮小が影響を与えたと推察されます。同様に、この時期には国内の農業・畜産業が徐々に縮小し、食料の輸入依存度が高まったことも一因と考えられます。

1990年代以降、鶏卵生産量は一定の回復を見せましたが、それでも1990年代半ばから2000年代初頭には生産が停滞する傾向が見られました。しかし近年、2020年代に入った頃から顕著な増加が見られ、特に新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、2023年には41,102トンへと生産量が大幅に拡大しました。この急増の要因には、コロナ禍以降の食糧危機への懸念、グローバルな供給網の混乱による食料安定確保への意識の高まりがあります。シンガポールは輸入依存度が高く、輸入に頼る食生活では外的なリスクが伴うため、政府が食品の地産地消を奨励する政策を進めた可能性が高いといえます。

現在のように生産量が増加していることは一見好調のように見えますが、依然としていくつかの課題が残されています。一つは、シンガポール特有の地理的条件です。高度に都市化された環境では農地の拡大に限界があるため、効率的に生産性を上げるためのテクノロジーや資本集約型モデルへの投資が不可欠です。近年では縦型農法や循環型農業の導入が進められていますが、まだ実験段階にあるため、さらなる研究開発支援が必要となります。

また、その他の輸入依存国との比較においてシステムの頑丈化が重要です。例えば、日本は食料自給率が非常に低いため輸入に依存していますが、備蓄制度や食安政策の強化が進んでいます。同様に、インドや中国のように国内市場が巨大な国では、自給だけでなく輸出へのプレッシャーにも対応できる需給管理が行われています。一方、シンガポールのように土地資源が限られる都市国家では、周辺諸国との協力関係、たとえばマレーシアやインドネシアとの農業パートナーシップ構築が食料供給網の安定性に寄与するでしょう。

加えて、地政学的リスクについても留意するべきです。シンガポールは多くの食料を国際市場から調達していますが、近年では気候変動による影響や地域間の政治的緊張が供給の安定性を脅かしています。特に新興経済国の成長による食料需要の激化や、物流の停滞といった要因は、国内の食料価格の不安定化を招く可能性も孕んでいます。これに対抗するためには、国内生産の強化だけでなく戦略的輸入先の分散化を図る必要があるでしょう。

結論として、シンガポールの鶏卵生産量は近年において顕著な伸びを見せており、自給率向上のための努力が成果を上げています。しかし、都市国家としての制約や国際的な環境問題を考慮すると、シンガポールが長期的持続可能な食料政策を施行するためには、さらなる農業技術への投資、地域間協力の促進、そして供給網の多角化を進めることが必要不可欠です。これが実現することで、食料の安定供給を保ちながら、国家の食料安全保障を強化することが可能となります。