国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、リトアニアのヤギ肉生産量は1992年から2023年までの約30年間で大きな変動を示しています。1990年代には年間500トン前後で推移していましたが、その後全体的に減少傾向となり、2023年には50トンに落ち込んでいます。特に2010年代以降、ヤギ肉生産量が著しく減少し、安定した水準を保つことが難しくなっています。
リトアニアのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 50 |
25% ↑
|
2022年 | 40 |
-20% ↓
|
2021年 | 50 |
-28.57% ↓
|
2020年 | 70 |
16.67% ↑
|
2019年 | 60 |
-14.29% ↓
|
2018年 | 70 |
-10.26% ↓
|
2017年 | 78 |
11.43% ↑
|
2016年 | 70 |
-30% ↓
|
2015年 | 100 |
-40.12% ↓
|
2014年 | 167 |
-14.8% ↓
|
2013年 | 196 |
-4.39% ↓
|
2012年 | 205 |
2.5% ↑
|
2011年 | 200 |
9.29% ↑
|
2010年 | 183 |
-34.17% ↓
|
2009年 | 278 |
-7.33% ↓
|
2008年 | 300 | - |
2007年 | 300 |
-10.71% ↓
|
2006年 | 336 |
-34.38% ↓
|
2005年 | 512 |
5.35% ↑
|
2004年 | 486 |
-3.76% ↓
|
2003年 | 505 |
-17.48% ↓
|
2002年 | 612 |
16.57% ↑
|
2001年 | 525 |
-6.08% ↓
|
2000年 | 559 |
39.75% ↑
|
1999年 | 400 |
-20% ↓
|
1998年 | 500 |
25% ↑
|
1997年 | 400 |
-20% ↓
|
1996年 | 500 |
25% ↑
|
1995年 | 400 |
-20% ↓
|
1994年 | 500 |
44.54% ↑
|
1993年 | 346 |
53.41% ↑
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1992年 | 226 | - |
FAOのデータに基づくリトアニアのヤギ肉生産量の長期推移において、いくつかの特徴が見られます。1990年代には年間生産量が一時500トンに達した年もあり、小規模ではあるものの一定の生産基盤が確立されていることがうかがえました。しかし、2000年代中盤から急速な減少が始まり、特に2010年代に入ると生産量は100トンを切る年も多く見られるようになります。2023年の生産量は50トンであり、過去30年間で最低水準に近い状況です。
この減少の背景には、農業経済の変化や地域の経済状況、食文化の変化など、複数の要因が影響していると考えられます。リトアニアの農業はEU加盟後、特に経済効率の良い作物や家畜に焦点を置くようになりました。ヤギ肉は伝統的にニッチな市場であり、牛肉や鶏肉など競争力の高い他の肉類に比べて需要が低いことが、この減少の主な要因として挙げられます。また、都市化による農村人口の減少や高齢化も、ヤギ飼育に必要な労働力の減少や農地の利用形態の変化を引き起こしている可能性があります。
さらに、気候変動による影響や新型コロナウイルス感染症のパンデミックも、この傾向を後押ししているかもしれません。例えば、パンデミックがもたらした物流の停滞や市場の縮小は、中小規模のヤギ農家にとって特に大きな打撃となったと予測されます。リトアニア国内外でのヤギ肉需要のさらなる低下も、地方の生産者にとって不利に働いています。
このような背景から、リトアニアのヤギ肉生産にはいくつかの喫緊の課題が浮かび上がります。第一に、ヤギ肉市場の構造的な弱さを克服するためには、国内需要の促進が重要となります。例えば、ヘルシー志向が広がる中で、ヤギ肉の栄養価と健康への利点をアピールするキャンペーンを通じて、消費を拡大することが考えられます。ヤギ肉は低脂肪で高タンパク、さらにビタミンや鉄分が豊富であるため、健康志向の消費者層に訴求できる可能性があります。
第二に、輸出市場の開拓も有望な戦略です。アフリカ、中東、アジアなどヤギ肉の需要が高い地域では、輸入依存が比較的多い傾向にあり、リトアニア産ヤギ肉を新興市場へ輸出することで安定した需要を見込むことが可能になるかもしれません。この場合、国際的な食品基準の遵守や輸出関連規制への適応が必要ですが、それが実現すれば新たな販路が確立される可能性も大いにあります。
第三には、農地の利用促進と労働力不足の対策が求められます。政府や地元自治体が若年農家への支援政策を強化したり、ヤギ飼育の効率化を目指した技術革新への投資を奨励したりすることが必要です。また、地域間協力を通じた小規模農家同士のネットワークづくりや共同販売体制の整備も、国内生産の安定化に寄与すると考えられます。
結論として、リトアニアのヤギ肉生産は過去30年間で大きく縮小しており、復活の兆しは現時点では限定的です。この状況を克服するためには、長期的な視点での国内市場の改革と輸出市場の開拓が重要です。あわせて、農業人口減少への対応や、政府・民間の協力による技術革新が進められることで、地域農業の持続可能な発展が期待されます。国際機関やEUレベルでの支援を活用し、輸出競争力を高めつつ、国内市場での需要喚起を同時に進めることが、リトアニアのヤギ肉生産再生の鍵となるでしょう。