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リトアニアの牛飼養数推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、リトアニアの牛飼養数は1992年の2,196,600頭をピークに減少傾向が続き、2022年には641,920頭まで減少しました。この30年間で飼養数は約70%以上減少しています。一方、2002年以降は減少のペースが緩やかになる一方で、一時的な増減が見られる時期も存在しています。

年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 623,520
-2.87% ↓
2022年 641,920
2.1% ↑
2021年 628,700
-0.13% ↓
2020年 629,500
-0.8% ↓
2019年 634,600
-2.89% ↓
2018年 653,500
-5.94% ↓
2017年 694,752
-3.85% ↓
2016年 722,602
-1.9% ↓
2015年 736,612
3.24% ↑
2014年 713,500
-2.15% ↓
2013年 729,200
-3.08% ↓
2012年 752,400
0.59% ↑
2011年 748,000
-1.5% ↓
2010年 759,400
-1.49% ↓
2009年 770,900
-2.16% ↓
2008年 787,900
-6.07% ↓
2007年 838,800
4.81% ↑
2006年 800,300
1.05% ↑
2005年 792,000
-2.48% ↓
2004年 812,100
4.24% ↑
2003年 779,100
3.65% ↑
2002年 751,700
0.45% ↑
2001年 748,300
-16.65% ↓
2000年 897,800
-2.71% ↓
1999年 922,800
-9.2% ↓
1998年 1,016,300
-3.59% ↓
1997年 1,054,100
-1.03% ↓
1996年 1,065,100
-7.58% ↓
1995年 1,152,400
-16.75% ↓
1994年 1,384,300
-18.62% ↓
1993年 1,701,000
-22.56% ↓
1992年 2,196,600 -

リトアニアの牛飼養数の推移を見てみると、1992年から急激な減少が始まり、その後も長期間にわたり減少傾向が続いています。この減少の背景には、政治的、経済的、社会的な要因が複雑に絡み合っています。

まずリトアニアは1991年にソビエト連邦から独立しましたが、この独立後の初期には、経済の市場化や農業政策の急激な転換が行われました。この影響により、旧ソ連時代に行われていた大規模な集団農業が解体され、多くの小規模農家が新たな環境での競争に直面することになりました。この変化が、牛飼養数の急激な減少に拍車をかけたと考えられます。

2000年以降になると、その減少ペースはやや緩和されました。この時期には、リトアニアが2004年に欧州連合(EU)に加盟したことが重要な転換点になっています。EU加盟に伴い、農業部門は新しい補助金制度や貿易の自由化の恩恵を受けました。ただし、EUの市場競争への対応や、効率性向上のための小規模農業からの脱却が必要となり、農業の構造調整が進みました。この対応として、大規模化や集約化が進み、一部の農地が他用途に転用される傾向も見られています。

2010年以降のデータを詳しく見ると、飼養頭数は依然として減少基調ですが、そのペースは鈍化しています。また、2022年においては、やや増加に転じています。このような動きは、リトアニア国内だけではなく、周辺のEU加盟国にも似たような傾向が見られる特徴であり、畜産業界全体のトレンドとも一致しています。

これらの変化が示す課題として、まず挙げられるのは農業の競争力です。輸出市場向けの競争力を持つ乳製品や牛肉の生産をどのように効率化するかが鍵となっています。また、気候変動の影響やサステナビリティの観点から、従来の畜産形態をどのように持続可能な形に再構築するかも、今後の重要な課題です。

改善のための具体的な対策として、まずEUの補助金や助成制度を活用しつつ、家畜管理技術やICT技術(情報通信技術)の導入による効率化を促進することが挙げられます。また、政府や教育機関が連携して、若い世代の農業従事者を育成し、地域に根ざした農業の振興策を進めるべきです。地域間協力を通じて、輸出市場の拡大や牛肉や乳製品の品質向上のための共同プロジェクトを推進することも重要です。

さらに、地政学的な観点から言えば、リトアニアは東欧の戦略的な位置にあるため、国際的な商品流通の動向やロシアとの関係性など外的要因も影響します。特に、ウクライナ危機などが引き起こす飼料価格の高騰や供給不安に対する備えが求められます。そのために、飼料自給率の向上や、地域衝突の影響を最小限に抑えるための貿易協定の強化などが考えられます。

結論として、このデータが示す長期的な減少傾向は、リトアニアにおける経済・社会の変化の一側面を象徴しています。その中で農業部門が持続可能で競争力のある形に再編されつつある兆しも見えています。リトアニアが国際的な変化に柔軟かつ戦略的に対応することで、牛飼養産業の持続可能な発展が可能になるでしょう。そのためには、技術革新、政策整備、国際協調など多方面からのアプローチが求められます。