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リトアニアの天然蜂蜜生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年最新統計によると、リトアニアの天然蜂蜜生産量は、過去30年間で大きな変動を見せています。1990年代から2000年代にかけての減少基調の時期を経て、2010年代後半より急激な増加が見られ、2019年以降、年間5,000トンを超える水準へと躍進しました。2021年には7,894トンという過去最高を記録しましたが、その後2022年にはやや減少して6,017トンとなっています。

年度 生産量(トン)
2022年 6,017
2021年 7,894
2020年 6,033
2019年 5,284
2018年 4,207
2017年 2,622
2016年 2,708
2015年 2,572
2014年 1,990
2013年 1,848
2012年 1,828
2011年 1,797
2010年 1,764
2009年 1,608
2008年 1,907
2007年 1,599
2006年 1,388
2005年 1,333
2004年 1,248
2003年 1,156
2002年 1,256
2001年 1,078
2000年 816
1999年 832
1998年 858
1997年 916
1996年 956
1995年 1,061
1994年 1,161
1993年 1,300
1992年 1,595

リトアニアの天然蜂蜜生産量は、1990年代から大きな浮き沈みのある推移が見られます。1992年の1,595トンから2000年の816トンへと約半減しており、この時期の減少は、旧ソビエト連邦崩壊後の経済混乱が養蜂産業にも大きな影響を及ぼしたものと考えられます。また、土地利用の変化や農業政策の未熟さ、採蜜技術の限界といった要因も寄与したと推測されます。

2001年以降、生産量は徐々に回復し始め、2008年には1,907トンに達しました。この増加は、EU加盟(2004年)後のリトアニアにおける農業支援政策や養蜂家への補助金、といった外的支援策の充実が反映されている可能性があります。また、この時期には生物多様性を保護する動きが活発になり、蜂蜜産業においてもエコロジカルな取り組みが進展しました。

2015年以降、リトアニアの蜂蜜生産量は急激な拡大を見せています。2018年には4,207トンとなり、2020年には6,033トン、2021年には7,894トンという大きなジャンプを遂げています。この急増は、気候変動に関連した地域環境の変化がプラスに作用した可能性があります。リトアニアは冷涼な気候が特徴ですが、この気候が近年の気候変動により一部穏やかになり、蜜を集めやすい条件が整ったことが考えられます。同時に、EUからの継続的な養蜂政策の支援や市場の多様化、環境にやさしい天然食品の需要拡大が生産を後押ししています。

一方で、2022年には生産量が約6,017トンに減少しました。この要因の一部として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による労働力不足、生産チェーンの混乱、または気候変動による年ごとの天候の不順が挙げられます。農業形態に悪影響を及ぼす異常気象の頻度が増しているため、このような変動を定着させるのは今後の課題です。

リトアニアの現状から見える課題としては、生産量の安定化と持続可能性の確保が挙げられます。蜂蜜生産を継続的に増やすためには、モニタリング技術の向上や蜜源植物の保護、生産性の高い蜂種の養成が必要です。同時に、蜂群崩壊症候群(コロニーコラプスクライシス)の予防も重要であり、これには農薬の使用制限や生態系保護が不可欠です。また、国際市場に向けた輸出体制の強化、特に品質管理の高度化や付加価値商品の開発も進めるべきです。

地政学的リスクとしては、近年、ウクライナ情勢がリトアニア周辺地域に与えた影響が商業や輸送に見られ、これが蜂蜜市場にも波及する可能性があります。こうした背景から、リトアニアが EU 内外との連携をさらに深めながら農業環境への投資を推進することが重要です。例えば、共同研究プロジェクトを通じて気象データの共有や効率的な養蜂手法を開発し、地域間協力を強化することが考えられます。

これらを踏まえ、リトアニアが安定した蜂蜜生産のリーダー国として将来に向けて持続可能な発展を遂げるためには、政策を一貫して推進しつつ、国際的な協調を図ることが必要です。また、同時に気候変動対応型の農業対策を取り入れ、環境保全と経済利益の両立を目指す取り組みを続けるべきです。これにより、リトアニアの蜂蜜産業が地域社会や世界的な供給ネットワークにおいてより重要な役割を果たすことが期待されます。