国際連合食糧農業機関(FAO)が公開したデータによると、リトアニアのラズベリー生産量は2000年代に入って着実に増加しました。2003年の623トンから始まり、2015年にはピークの2,960トンを記録しました。しかしその後は減少傾向に転じ、2023年の生産量は1,450トンと、ピーク時のおよそ半分に留まっています。
リトアニアのラズベリー生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 1,450 |
16.94% ↑
|
2022年 | 1,240 |
-8.82% ↓
|
2021年 | 1,360 |
6.25% ↑
|
2020年 | 1,280 |
20.75% ↑
|
2019年 | 1,060 |
-24.29% ↓
|
2018年 | 1,400 |
-25.37% ↓
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2017年 | 1,876 |
-15.99% ↓
|
2016年 | 2,233 |
-24.56% ↓
|
2015年 | 2,960 |
17.93% ↑
|
2014年 | 2,510 |
11.21% ↑
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2013年 | 2,257 |
7.37% ↑
|
2012年 | 2,102 |
30.15% ↑
|
2011年 | 1,615 |
7.74% ↑
|
2010年 | 1,499 |
-16.44% ↓
|
2009年 | 1,794 |
6.09% ↑
|
2008年 | 1,691 |
10.45% ↑
|
2007年 | 1,531 |
56.86% ↑
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2006年 | 976 |
67.41% ↑
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2005年 | 583 |
13.2% ↑
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2004年 | 515 |
-17.34% ↓
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2003年 | 623 | - |
リトアニアにおけるラズベリー生産は過去20年間で成功と課題が交差する道のりをたどってきました。2003年にわずか623トンだった生産量は、農業技術の進展や市場需要の拡大に伴い急激に増加し、2015年に2,960トンという記録的な生産量を達成しました。この成長は、ヨーロッパ市場におけるラズベリー需要の増加と、リトアニア国内の農業政策による補助金や技術革新の成果によるものと考えられます。
しかし、2015年以降、リトアニアのラズベリー生産量は減少傾向に転じています。この要因として、第一に気候変動の影響が挙げられます。近年、ヨーロッパ全体で異常気象や不規則な降水量が目立っており、これがラズベリーの収穫に直接的な影響を及ぼしました。第二に、生産コストの上昇も減少の一因です。農業労働力の確保が困難になり、労働力不足や賃金上昇が生産効率に影響を与えています。
2019年から2023年にかけては、おおむね1,000~1,450トンの範囲で生産が安定しています。ただし、この範囲内での変動は、新型コロナウイルス感染症による影響が関連している可能性も指摘されています。パンデミックは供給鎖の混乱を引き起こし、輸出市場の不確実性を高め、農業者たちの経済的負担を増大させました。リトアニア農家は他ヨーロッパ諸国と比較しても、こうした外的要因の影響を受けやすい状態にあります。
リトアニアのラズベリー生産における課題克服にはいくつかの方向性が考えられます。技術革新をさらに推進し、気候変動に強い新品種の開発・導入を加速することが必要です。また、地域間協力の強化により、ヨーロッパ全域の市場動向に柔軟に対応できる仕組みを構築することが求められます。例えば、NATO加盟国としての地政学的安定性を基盤に、EU内での農業政策を調整し、リトアニア農家が競争力を高めるための資金や支援を引き出すことが有効です。
また、東欧地域では今後の人口動態が生産活動に大きな影響を及ぼすことが予想されます。若年層の減少が進む中、高齢者の農業従事割合が増加し生産効率が低下するリスクも存在しています。この課題に対処するため、政府と農業団体が連携して次世代の農業従事者を育成し、積極的に若年層を農業セクターに引き込む政策を採用することが必要です。さらに、ICT(情報通信技術)を活用した農業データマネジメントを導入し、生産性を高める取り組みも重要です。
リトアニアのラズベリー産業は、国内経済にとどまらず、国際的な市場動向や地政学的な影響を受けやすい状況です。将来的な安定と成長を実現するためには、持続可能な農業を実現するための構造改革と多面的な政策対応を進めることが求められます。これにより、リトアニアのラズベリーが世界市場での競争力を取り戻し、安定した基盤を構築できるでしょう。