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リトアニアの大麦生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、リトアニアの大麦生産量は、過去30年間において大きな変動が見られます。1990年代には年間90万~120万トンの範囲で安定していたものの、2000年以降ではおおむね減少傾向にあり、特に2010年代以降は60万トン未満を記録する年も多くなっています。2023年の生産量は約56.7万トンで、大きな回復の兆しは見られていない状況です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 566,880
8.6% ↑
2022年 522,000
4.31% ↑
2021年 500,410
-29.11% ↓
2020年 705,910
19.96% ↑
2019年 588,450
-5.02% ↓
2018年 619,540
19.2% ↑
2017年 519,732
-4.67% ↓
2016年 545,191
-32.82% ↓
2015年 811,500
-20.32% ↓
2014年 1,018,500
48.53% ↑
2013年 685,700
-7.58% ↓
2012年 741,900
-2.36% ↓
2011年 759,800
38.15% ↑
2010年 550,000
-35.91% ↓
2009年 858,200
-11.56% ↓
2008年 970,400
-4.27% ↓
2007年 1,013,700
36.29% ↑
2006年 743,800
-21.56% ↓
2005年 948,300
10.29% ↑
2004年 859,800
-4.45% ↓
2003年 899,800
3.29% ↑
2002年 871,100
12.23% ↑
2001年 776,200
-9.7% ↓
2000年 859,600
15.91% ↑
1999年 741,600
-32.84% ↓
1998年 1,104,300
-7.47% ↓
1997年 1,193,500
1.44% ↑
1996年 1,176,600
31.98% ↑
1995年 891,500
-18.25% ↓
1994年 1,090,500
-9.72% ↓
1993年 1,207,900
26.47% ↑
1992年 955,100 -

リトアニアはヨーロッパ北東部に位置し、穀物生産が農業経済の重要な軸となっています。その中でも大麦は、この地域特有の冷涼な気候条件に適した作物であり、国内外の食料や飼料としての需要が高いことから、国際的に注目されています。しかし、データを詳細に分析すると、リトアニアの大麦生産量は、長期的な観点では減少傾向にあります。

1990年代には年間90万トン以上の生産量を安定的に維持していました。一時的に120万トンを超える好調な年も見られ、国内農業の主力作物の一つであることが窺えます。しかし、2000年以降になると、年間生産量の波が大きく、2000年代後半には再び100万トンに近づく年もあったものの、2010年代以降はさらに顕著な減少が続きました。例えば、2016年には54.5万トン、2017年には51.9万トンと過去最低の水準に落ち込みました。この背景には、気候の変動、農業経済政策の影響、そしてEU(欧州連合)加入後の農業構造の変化が挙げられます。

特に近年、気候変動による天候不順が大麦生産に大きな影響を与えるようになりました。リトアニアを含むバルト三国では、過去の冷涼な夏と異なり、一部の年では干ばつや異常高温が生産を直接的に制限する事象が発生しています。また、大麦栽培の効率向上や機械化の進展が見られる一方で、小規模農家の経済競争力の低下が深刻化し、農地の縮小や作付け面積の減少が課題となっています。さらに、EU共通農業政策による補助金の分配や作物選択の制約により、他の作物への転換が進んだことも一因です。

2023年の生産量は約56.7万トンと、2020年の約70.5万トンからやや低下しており、依然として長期の回復基調には乗れていない状況です。他国と比較すると、ドイツやフランスといったEU内の主要大麦生産国では、年間300~400万トン以上の生産量を安定的に維持している一方、リトアニアの規模はそれらの10~20%程度に留まります。近隣のポーランドよりもかなり少なく、中国やインドなどのアジアの大麦生産量とはさらに大きな差があります。このことは、リトアニアの農業が輸出競争力を持つための課題を抱えていることを示唆しています。

将来的にリトアニアの大麦生産を持続可能にし、競争力を高めるための具体的な方策としては、まず気候変動への適応策を強化する必要があります。耐候性の高い品種の開発および導入や、灌漑システムの拡充が挙げられます。また、EUの資金を活用し、農家への技術支援ベースを広げることも効果的です。さらに、地域間での協力が重要です。近隣の大麦生産国と研究開発の協力体制を築くことで、より広範な技術や市場の推進が可能となるでしょう。

地政学的背景としては、リトアニアが位置するバルト三国はロシアやベラルーシという穀物輸出の大国とも近接しており、地域紛争や貿易政策が農業輸出に直接的な影響を与えることも考えられます。このため、特定地域のリスクに柔軟に対応できる貿易政策の策定も急務です。加えて、新型コロナウイルス感染症の影響で供給網が混乱した教訓を踏まえ、国際貿易の多様化も進める必要があります。

総じて、リトアニアの大麦生産の現状は国内的にも国際的にも困難な状況が続いていますが、適切な政策対応や技術イノベーションを採用することで、持続可能性を向上させる可能性があります。農業は単に経済的利益だけでなく、地域社会や環境とも強く結びついているため、総合的な取り組みが必要であると考えます。