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リトアニアの羊飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、リトアニアの羊飼養数は1992年から長期的な推移を見せています。特に1992年から2000年にかけて急速に減少した後、2000年以降は徐々に回復し、2017年にピークを迎えました。しかし、それ以降は再び減少傾向が見られます。2022年の飼養数は135,640匹で、ピークだった2017年の163,565匹と比較すると約17%減少しています。

年度 飼養数(匹)
2022年 135,640
2021年 136,900
2020年 140,600
2019年 152,100
2018年 164,300
2017年 163,565
2016年 147,073
2015年 123,909
2014年 99,637
2013年 82,752
2012年 60,400
2011年 58,500
2010年 52,500
2009年 47,500
2008年 43,300
2007年 36,600
2006年 29,208
2005年 22,149
2004年 16,867
2003年 13,581
2002年 12,300
2001年 11,500
2000年 13,800
1999年 15,800
1998年 24,000
1997年 28,200
1996年 32,300
1995年 40,000
1994年 45,000
1993年 51,700
1992年 58,100

リトアニアの羊飼養数の推移を見ると、1992年以降の30年間で大きな変化が見られます。1990年代初頭に約58,100匹を数えていた羊の飼養数は、2000年に13,800匹まで大幅に減少しました。この減少の背景には、ソビエト連邦崩壊後の社会的および経済的混乱が影響していると考えられます。この時期、多くの農家が経営資源の転換を行い、羊の飼養が縮小された可能性があります。

2000年代に入ると、羊の飼養数は徐々に増加基調を示しました。これはリトアニアが2004年に欧州連合(EU)に加盟し、農業支援政策が充実したことによる影響が大きいといえます。特に2005年から2017年までの間は、EUからの補助金や農業技術の改善、小規模農業の振興策が奏功し、飼養数が急速に回復しました。2017年には163,565匹と過去30年間での最高値を記録しました。

しかし、2018年以降、羊飼養数は再び減少基調に転じ、2022年には135,640匹となっています。経済条件の変化や地政学的リスク、新型コロナウイルス感染症の影響、さらには畜産業の効率化と他の家畜への選択などが主な要因と考えられます。リトアニア国内のみならず、欧州全体でも肉や牛乳の需要変化が見られる中、羊農家が次第に厳しい環境に置かれていることが伺えます。

この変化は、他国と比較するとより興味深いものとなります。例えば、ドイツやフランスは、リトアニアに比べて一貫して高い飼養数を維持しており、自国内での安定した需要と政策的支援が大きな役割を果たしていると言えます。一方、リトアニアはGDPが比較的小さく、農業への政府支出が余裕を持ちづらい点がその差につながっているかもしれません。

リトアニアの羊飼養業にはいくつかの課題があります。まず、高齢化する農家の世代交代が進んでおらず、新しい農業従事者への支援が十分ではない点が挙げられます。また、地政学的背景、例えば近隣地域の輸出市場へのアクセスが制限されている可能性も影響しているでしょう。さらに、気候変動の影響が家畜の飼養環境に徐々に悪影響を与えつつあることも注視すべき課題です。

これらの課題に対処するためには、具体的な対策が必要です。たとえば、持続可能な農業を推進する政策をさらに強化し、若い世代の農業参加を促進する教育プログラムの展開が有効です。また、羊の製品分野、特に乳製品や高品質肉の付加価値市場での競争力を高めるためのマーケティング支援が求められます。同時に、輸出市場の多様化を図り、東アジアや中東のような新たな需要国をターゲットにした戦略を制定することが効果的でしょう。

さらに、リトアニア国内での気候変動対策を取り入れた農業支援も重要です。例えば、気候にも強い牧草の研究開発や、災害に強い設備への補助金の付与が考えられます。これらの取り組みは、リトアニアの羊飼養農業を持続可能で競争力のある形へと変える基盤となるでしょう。

結論として、リトアニアの羊飼養数のこれまでの推移は、国の経済や政策の影響を色濃く反映しているといえます。減少傾向から一時の回復、その後の再減少は、リトアニアにおける畜産業の複雑な側面を映し出しています。今後、長期的に持続可能な成長を実現するためには、農業政策の強化、若者の農業参入促進、新市場の開拓などに加え、環境問題を視野に入れた総合的な戦略が求められるでしょう。