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リトアニアの豚飼育数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、リトアニアにおける豚の飼育数は1992年の2,179,800頭をピークに減少の一途をたどっています。2022年には約517,420頭まで減少しており、30年間で約76%の大幅な減少を記録しています。この動向は、リトアニア国内の農業構造の変化や経済的な要因、さらには地政学的リスクや疾病の影響とも関連していると考えられます。

年度 飼育数(頭)
2022年 517,420
2021年 573,800
2020年 580,400
2019年 550,800
2018年 572,000
2017年 663,915
2016年 687,822
2015年 714,157
2014年 754,600
2013年 807,500
2012年 790,300
2011年 929,400
2010年 928,200
2009年 897,100
2008年 923,200
2007年 1,127,100
2006年 1,114,647
2005年 1,073,348
2004年 1,057,358
2003年 1,061,023
2002年 1,010,800
2001年 867,600
2000年 936,100
1999年 1,159,000
1998年 1,200,100
1997年 1,127,600
1996年 1,270,000
1995年 1,259,800
1994年 1,196,200
1993年 1,359,800
1992年 2,179,800

リトアニアの豚飼育数は1992年には約217万頭を記録していましたが、その後急速に減少しました。その最初の大きな減少を示したのが1993年から1994年で、1年間で約38%の減少を記録しました。この急激な変化は、冷戦終結後に旧ソ連圏諸国で見られた経済構造の転換が影響したと考えられます。当時のリトアニアでは市場経済への移行が進む中で、国有農場の解体や小規模農家の再編が行われ、豚の飼育環境の維持が困難になりました。また、飼料価格の上昇や新たな輸出市場への対応が課題となり、飼育数の減少に拍車がかかった可能性があります。

2000年代に入ると、豚飼育数の減少は一時的に緩やかになり、持ち直しの兆候も見られました。たとえば2002年から2007年にかけては、飼育数が約100万頭前後で推移していました。この期間は、EU加盟(2004年)に伴い、リトアニアの農業に大きな制度改革が行われるとともに、EUの補助金や規制を背景に輸出市場への対応を進めた結果と考えられます。しかし、2008年以降は再び減少が始まりました。これは、2008年の世界金融危機が農家経済に深刻な影響を及ぼしたことに加え、EUの厳しい環境規制への対応に課題があったことが指摘されています。

特に2012年以降は減少のスピードが再び加速しています。この背景には、アフリカ豚熱(ASF:African Swine Fever)という致死率の高い疾病の流行が大きく関与しています。リトアニアのような輸出に依存する豚肉生産国では、この疫病が輸出制限や国内生産の縮小を引き起こしました。また、近年の気候変動の影響で飼料生産が安定せず、農家が飼育規模を縮小せざるを得ない状況も観察されています。

さらに、ウクライナ戦争などの地政学的な要因も無関係ではありません。特にロシアがEU産食品に対して制裁的輸入制限を行ったことは、リトアニアの農業市場に間接的な影響を与えています。これに伴い、豚肉市場での価格競争力が低下し、飼育を維持する経済的なインセンティブが弱まったと考えられます。

このようにして2022年の豚飼育数は約51万頭まで減少しています。この数値は、1992年の約24%にすぎず、全体的な減少傾向を強く示しています。今後リトアニアが直面する課題には、豚肉生産業の維持や輸出競争力の強化、そして疾病対策の徹底が挙げられます。解決策としては、小規模農家を支援する融資制度の拡充や、ASF予防に特化したバイオセキュリティの強化が挙げられます。さらに、国際協力を通じて地政学的リスクを軽減し、EU内での連携を深めることも重要です。

リトアニアの豚飼育数の減少は、移行経済や国際市場、気候変動、さらには疾病や地政学的動向といった広範囲な要因が複合的に影響した結果です。今後、政府や農業団体、国際機関は、持続可能な農業モデルへの移行を政策の中心に据え、包括的な解決策を講じる必要があります。このような取り組みによって、農村地域の雇用や経済を安定させ、リトアニア全体の経済的な安定に寄与することが期待されます。