Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、モーリシャスの米生産量は長期的に大きな変動を見せています。1960年代後半から1970年代前半にかけて一時的に増加したものの、その後1970年代中頃から1990年代初頭にかけて急激に低下しました。その後、2011年に増加の兆しを見せましたが、再び生産量は減少傾向を示しており、2019年にはわずか21トンという数値にとどまっています。このデータは、モーリシャスの米生産が持続可能性の課題に直面していることを示唆しています。
モーリシャスの米生産量の推移【1961年~2023年】世界ランキング・統計データ
| 年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
|---|---|---|
| 2019年 | 21 |
10.53% ↑
|
| 2018年 | 19 |
-88.13% ↓
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| 2017年 | 160 |
-54.55% ↓
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| 2016年 | 352 |
-46.42% ↓
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| 2015年 | 657 |
-44.6% ↓
|
| 2014年 | 1,186 |
83.59% ↑
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| 2013年 | 646 |
-22.26% ↓
|
| 2012年 | 831 |
162.97% ↑
|
| 2011年 | 316 |
6220% ↑
|
| 1992年 | 5 |
-50% ↓
|
| 1991年 | 10 |
-47.37% ↓
|
| 1990年 | 19 |
-5% ↓
|
| 1989年 | 20 | - |
| 1988年 | 20 |
-50% ↓
|
| 1987年 | 40 |
-77.14% ↓
|
| 1986年 | 175 |
29.63% ↑
|
| 1985年 | 135 |
-50.91% ↓
|
| 1984年 | 275 |
89.66% ↑
|
| 1983年 | 145 |
1350% ↑
|
| 1982年 | 10 |
-92.13% ↓
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| 1981年 | 127 |
-20.13% ↓
|
| 1980年 | 159 |
318.42% ↑
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| 1979年 | 38 |
-80.71% ↓
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| 1978年 | 197 |
-28.36% ↓
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| 1977年 | 275 |
-40.86% ↓
|
| 1976年 | 465 |
-6.25% ↓
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| 1975年 | 496 |
-25.75% ↓
|
| 1974年 | 668 |
-24.35% ↓
|
| 1973年 | 883 |
-23.15% ↓
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| 1972年 | 1,149 |
6% ↑
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| 1971年 | 1,084 |
19.65% ↑
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| 1970年 | 906 |
11.44% ↑
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| 1969年 | 813 |
588.98% ↑
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| 1968年 | 118 |
2260% ↑
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| 1967年 | 5 | - |
モーリシャスの米生産量の長期的推移を見ると、1967年にわずか5トンからのスタートでしたが、1969年から1972年にかけて急速に増加しています。この時期のピークは1972年の1,149トンでした。しかし、それ以降の10年間で生産量が著しく減少し、1979年には38トンという低い水準にまで落ち込みました。1980年代以降も生産量は増減を繰り返しながらも低水準に留まり、1990年代にはほぼ生産が停滞する状態となりました。その後、2011年から2014年にかけて一時的に生産量が増加しましたが、再度減少傾向に転じ、2018年以降はわずか20トン前後という非常に低い水準に至っています。
この動向は、モーリシャスが抱える農業構造の根本的な課題を反映しています。同国はその地理的特性上、農地面積が非常に限られており、稲作に適した土地の確保が困難です。また、モーリシャスは輸入に大きく依存している国であり、農業部門の競争力が限られていることも米生産を抑えている要因の一つです。他国、特に主要な米輸出国であるインドやタイ、ベトナムは、大規模な稲作地帯を持ち効率的な生産体制を敷いているため、モーリシャスのような小国が競争の中で埋没しやすいと言えます。
また、気候変動の影響も無視できません。モーリシャスは熱帯気候であるものの、近年その降水量の不安定さや気温上昇が稲作の効率を低下させている可能性があります。さらに局地的な自然災害や洪水の頻度増加が大きなリスクとなっています。地域特有の課題も重なり、過去数十年にわたり米生産量が不安定な傾向を示してきました。
この状況を改善するためには、まずは灌漑システムの整備や気候変動への対応を進める必要があります。水資源の管理を強化し、旱魃や豪雨といった自然リスクに耐える稲作方法が求められます。また、農家が生産効率を上げるための技術研修や設備投資支援を拡充することも重要です。さらに、地域での協力体制を強化し、小規模農家が集合的な利点を享受できるような仕組み作りが必要でしょう。
併せて、輸入政策とのバランスも再考されるべきです。現在、国内での高い輸入依存度が農業の衰退を招いている可能性がありますが、安定した食料供給を維持するためには、逆に輸入を適切に利用しつつ国内の生産を補完する戦略が現実的と言えます。つまり、稲作そのものを復活させるだけではなく、米に代わる作物への転換や輸出用の農産物へのシフトも選択肢に含めるべきでしょう。
将来的には、モーリシャスだけでなく世界全体でも食料安全保障の課題が深刻化すると予見されています。そのため、モーリシャスとしても長期ビジョンに基づき、持続可能な農業体制を築く努力が不可欠です。国際機関や近隣アフリカ諸国との連携を深めることで、技術協力や資金援助を受け入れる体制を強化することも重要です。このような多面的なアプローチによって、モーリシャスの農業部門が長期的に安定し、国内の食料自給率を少しでも引き上げられる未来が期待されます。