国際連合食糧農業機関(FAO)による2024年7月最新データによると、モーリシャスの茶葉生産量は1961年から2022年まで大きな変化を見せてきました。初期の1960年代から1970年代にかけては、安定的かつ緩やかな増加が認められ、1980年代には生産量がピークに達しました。しかし、1990年代以降には一時的な劇的増加とその後の急激な減少が生じ、2020年代に至る近年では5,000~8,000トン程度の範囲内で推移しています。特に2020年および2021年における生産量低下と、その後の回復傾向が顕著です。
モーリシャスの茶葉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 6,762 |
6.47% ↑
|
2022年 | 6,351 |
26.16% ↑
|
2021年 | 5,034 |
-1.39% ↓
|
2020年 | 5,105 |
-38.71% ↓
|
2019年 | 8,329 |
3.39% ↑
|
2018年 | 8,056 |
10.22% ↑
|
2017年 | 7,309 |
0.11% ↑
|
2016年 | 7,301 |
7.05% ↑
|
2015年 | 6,820 |
-13.89% ↓
|
2014年 | 7,920 |
-3.77% ↓
|
2013年 | 8,230 |
-0.84% ↓
|
2012年 | 8,300 |
-11.7% ↓
|
2011年 | 9,400 |
21.76% ↑
|
2010年 | 7,720 |
-1.03% ↓
|
2009年 | 7,800 |
-11.16% ↓
|
2008年 | 8,780 |
6.68% ↑
|
2007年 | 8,230 |
-0.24% ↓
|
2006年 | 8,250 |
13.01% ↑
|
2005年 | 7,300 |
-6.41% ↓
|
2004年 | 7,800 |
3.17% ↑
|
2003年 | 7,560 |
3.99% ↑
|
2002年 | 7,270 |
-9.01% ↓
|
2001年 | 7,990 |
15.8% ↑
|
2000年 | 6,900 |
-10.97% ↓
|
1999年 | 7,750 |
-1.02% ↓
|
1998年 | 7,830 |
-16.7% ↓
|
1997年 | 9,400 |
-28.46% ↓
|
1996年 | 13,140 |
-34.04% ↓
|
1995年 | 19,920 |
-25.64% ↓
|
1994年 | 26,790 |
-14.19% ↓
|
1993年 | 31,220 |
1.46% ↑
|
1992年 | 30,770 |
-1.22% ↓
|
1991年 | 31,150 |
441.64% ↑
|
1990年 | 5,751 |
4.56% ↑
|
1989年 | 5,500 |
-19.75% ↓
|
1988年 | 6,854 |
-4.1% ↓
|
1987年 | 7,147 |
-9.24% ↓
|
1986年 | 7,875 |
-2.96% ↓
|
1985年 | 8,115 |
1.17% ↑
|
1984年 | 8,021 |
30.59% ↑
|
1983年 | 6,142 |
16.17% ↑
|
1982年 | 5,287 |
4.65% ↑
|
1981年 | 5,052 |
15.18% ↑
|
1980年 | 4,386 |
-13.53% ↓
|
1979年 | 5,072 |
-2.2% ↓
|
1978年 | 5,186 |
9.71% ↑
|
1977年 | 4,727 |
9.07% ↑
|
1976年 | 4,334 |
38.07% ↑
|
1975年 | 3,139 |
-21.21% ↓
|
1974年 | 3,984 |
-2.33% ↓
|
1973年 | 4,079 |
-12.8% ↓
|
1972年 | 4,678 |
14.4% ↑
|
1971年 | 4,089 |
26.2% ↑
|
1970年 | 3,240 |
1.35% ↑
|
1969年 | 3,197 |
38.4% ↑
|
1968年 | 2,310 |
5.48% ↑
|
1967年 | 2,190 |
10.83% ↑
|
1966年 | 1,976 |
13.69% ↑
|
1965年 | 1,738 |
25.76% ↑
|
1964年 | 1,382 |
-2.54% ↓
|
1963年 | 1,418 |
11.65% ↑
|
1962年 | 1,270 |
-0.31% ↓
|
1961年 | 1,274 | - |
モーリシャスの茶葉生産量の歴史を見ると、明確な周期性や変曲点が浮かび上がります。1961年に1,274トンでスタートした生産量は、徐々に増加し、1970年代には多くの年で4,000トンを超えました。この時期の成長は、国内の農業発展や茶葉の需要拡大、適切な気候環境などが追い風となったと考えられます。しかし、1973年から1975年ごろには一時的な減少が見られ、これはおそらく国内外の経済や気候的な影響を受けた結果と推測されます。この後、1980年代には再び生産量が回復し、1984年から1986年にかけては8,000トンを超える年が続きました。
特筆すべきは、1991年からの一時的な急激な生産量の増大です。この年には31,150トンと突如として大幅な増加が記録されましたが、1995年以降には急速な減少が始まりました。この変動の背景には、国内の農業政策の変化や、外部市場の競争激化、さらには輸出入の需要構造の変化が影響した可能性が考えられます。同時期には、主要輸出国として名を馳せるインドやスリランカ、ケニアなどとの競争が激化し、モーリシャスの茶葉生産の収益性低下を招いたことが影響しているかもしれません。
2000年代以降、生産量は7,000~8,000トンの範囲で比較的安定的に推移していますが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが直撃した2020年には5,105トンへと大幅に減少しました。これは、おそらく労働者不足や輸送の混乱、供給チェーンの停滞などの要因が重なった結果であり、モーリシャスを含む小規模生産国にとって非常に大きな打撃となりました。その後、2022年には6,351トンと部分的な回復を見せていますが、依然としてパンデミック以前の水準には戻っていません。
モーリシャスの茶葉生産の課題としては、労働コストの上昇や気候変動の影響が挙げられます。特に、温暖化や降水量の変動は茶葉の生産量だけでなく品質にも影響を与えるため、これへの対応が喫緊の課題となっています。また、主要ライバルであるインドやケニアなどの巨大な茶葉生産国との競争もまた、生産効率や付加価値の向上を急務としています。
これらの課題に対して、いくつかの解決策が考えられます。第一に、農業技術の導入を進め、生産効率を改善することが重要です。例えば、自動収穫システムやドローンを使った生育モニタリングの採用が考えられます。第二に、プレミアム市場向けの商品開発を進めることも有益です。有機栽培や特殊な風味を持つ高付加価値製品を生産することで、収益性を向上させる狙いです。さらに、地域間協力を拡大し、輸出における物流インフラの強化や海外市場へのアクセス促進を図ることが、競争力を向上させる鍵となるでしょう。
地政学的背景として、モーリシャスの輸出先の多くがヨーロッパである点も注視すべきです。欧州連合(EU)の経済動向や貿易政策の変化が同国の収益に与える影響は少なくありません。また、災害リスク対策も欠かせません。沿岸部に位置するモーリシャスはサイクロンや海面上昇のリスクに直面しており、これが農地に与える影響への備えも重要です。
今後、モーリシャスが持続的な茶葉生産を実現するには、現地農家を支援する国内政策の充実や、国際的なパートナーシップの強化が鍵となると考えられます。たとえば、国際機関との協力による気候変動への適応策の実施や、新型の耐久性作物の開発が有力な選択肢です。これにより、環境の変化に適応しながら、安定的な生産を維持し、競争力を高めることができるでしょう。