国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、モーリシャスのニンニク生産量は1960年代から2023年まで大きな変動を伴いながら推移してきました。最も高かった1986年には325トンを記録し、近年では2023年の生産量が52トンと低迷しています。このデータは、モーリシャスの農業政策や気候条件、国内需要の変化など、多岐にわたる要因を反映したものと考えられます。
モーリシャスのニンニク生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 52 |
6.12% ↑
|
2022年 | 49 |
58.06% ↑
|
2021年 | 31 |
-20.51% ↓
|
2020年 | 39 |
-18.75% ↓
|
2019年 | 48 |
-32.39% ↓
|
2018年 | 71 |
-26.04% ↓
|
2017年 | 96 |
-19.85% ↓
|
2016年 | 120 |
40.91% ↑
|
2015年 | 85 |
-47.85% ↓
|
2014年 | 163 |
52.34% ↑
|
2013年 | 107 |
9.18% ↑
|
2012年 | 98 |
188.24% ↑
|
2011年 | 34 |
41.67% ↑
|
2010年 | 24 |
-14.29% ↓
|
2009年 | 28 |
40% ↑
|
2008年 | 20 |
-66.1% ↓
|
2007年 | 59 |
-3.28% ↓
|
2006年 | 61 |
-34.41% ↓
|
2005年 | 93 |
22.37% ↑
|
2004年 | 76 |
20.63% ↑
|
2003年 | 63 |
152% ↑
|
2002年 | 25 |
-37.5% ↓
|
2001年 | 40 |
-13.04% ↓
|
2000年 | 46 |
21.05% ↑
|
1999年 | 38 |
-70.99% ↓
|
1998年 | 131 |
59.76% ↑
|
1997年 | 82 |
-65.11% ↓
|
1996年 | 235 |
10.85% ↑
|
1995年 | 212 |
-22.91% ↓
|
1994年 | 275 |
55.37% ↑
|
1993年 | 177 |
4.12% ↑
|
1992年 | 170 |
21.43% ↑
|
1991年 | 140 |
-17.65% ↓
|
1990年 | 170 |
6.25% ↑
|
1989年 | 160 |
-3.03% ↓
|
1988年 | 165 |
-32.65% ↓
|
1987年 | 245 |
-24.62% ↓
|
1986年 | 325 |
35.42% ↑
|
1985年 | 240 |
37.14% ↑
|
1984年 | 175 |
45.83% ↑
|
1983年 | 120 |
-44.19% ↓
|
1982年 | 215 |
37.82% ↑
|
1981年 | 156 |
-16.13% ↓
|
1980年 | 186 |
41.98% ↑
|
1979年 | 131 |
55.95% ↑
|
1978年 | 84 | - |
1977年 | 84 |
-43.62% ↓
|
1976年 | 149 |
12.88% ↑
|
1975年 | 132 |
-57.14% ↓
|
1974年 | 308 |
43.26% ↑
|
1973年 | 215 |
38.71% ↑
|
1972年 | 155 |
-26.19% ↓
|
1971年 | 210 |
42.86% ↑
|
1970年 | 147 |
4.26% ↑
|
1969年 | 141 |
27.03% ↑
|
1968年 | 111 |
19.35% ↑
|
1967年 | 93 |
1062.5% ↑
|
1966年 | 8 |
-57.89% ↓
|
1965年 | 19 |
-5% ↓
|
1964年 | 20 |
-66.67% ↓
|
1963年 | 60 |
20% ↑
|
1962年 | 50 |
66.67% ↑
|
1961年 | 30 | - |
モーリシャスのニンニク生産量は、過去60年余りの間に劇的な変動を見せています。1970年代から1980年代中盤にかけて急増し、特に1986年には325トンという歴史的高水準を達成しました。しかしその後、1990年代以降は再び減少傾向にあり、21世紀に入ってからは持続的に低水準にとどまっています。この現象を理解するためには、複数の要因を考慮する必要があります。
まず、農業政策やインフラの進展が一つの重要な要素です。モーリシャスは独自の農業政策を展開し、特定の主要作物の生産の奨励や輸出支援を行ってきました。一方で、サトウキビなど輸出に直結する作物が重視される中、相対的にニンニクなどの作物は後回しにされる傾向がありました。このため、ニンニクの生産は気候条件や個人農家の経済状況に大きく依存する状態が続いていると考えられます。
さらに、頻発する気象変動や自然災害もモーリシャスの農業全般にとって重大な影響を及ぼしてきました。モーリシャスはインド洋上に位置し、熱帯サイクロンに頻繁に見舞われやすい地理的特徴を持っています。これに加え、近年の地球温暖化がもたらす異常気象による干ばつや降雨量の変動が、特にニンニクのように定期的な気温と湿度が要求される作物の収穫量に影響を与えている可能性があります。
また、国内需要と輸入市場の圧力も重要な視点です。モーリシャスにおけるニンニク消費量は成長を続けており、中国やインドといった大規模生産国からの輸入が国内消費の隙間を満たしています。一方、これらの国々が供給を続ける限り、国内生産に依存しない選択肢が消費者や卸売業者には広がっているため、地元の農家が競争力を発揮することが難しい状況といえます。他国と比べると、中国では毎年2000万トン以上の生産を誇っており、市場競争力の面では大きな差があります。
さらに、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の拡大や、これに伴う経済的混乱が生産に影響を及ぼした可能性も排除できません。パンデミックによる貿易の停滞や肥料・種苗などの物流の問題が、小規模な国内生産体制に深刻な打撃を与えたと分析されます。
モーリシャスにおける今後のニンニク生産の復興と成長を実現するためには、いくつかの具体的な対策が考えられます。まず、農家が気象条件や輸入市場の影響に対応できるよう、政府主体の技術的支援や補助金制度を厚くする必要があります。また、灌漑施設の設置や高品質の種苗の提供を通じて、農業の効率を一層高める取り組みが求められます。さらに、国内市場を活性化させるためには、地元産品のブランド化やプロモーションを進め、輸入品との差別化を図るべきです。
このほか、モーリシャス政府が国際機関や地域協力の枠組みを活用し、気象変動に強い農業モデルの導入を目指すことも一案です。他の島嶼国、たとえばインド洋に位置するスリランカやモルディブといった国々と技術供与や知識共有の協定を結ぶことによって、気候変動のリスクに対抗する地域共同体を形成することが期待されます。
結論として、モーリシャスのニンニク生産量の推移は自然環境と経済的条件、輸入市場の影響を色濃く受ける一方で、将来の生産性向上には政府と地域社会、さらには国際機関の支援が必須です。モーリシャスが持続可能な農業を実現するためには、具体的かつ長期的な戦略の策定と継続的な実行が求められるでしょう。