国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、モーリシャスの牛乳生産量は1961年の21,000トンから始まり、一時期は24,720トン(1976年)と増加傾向を示しました。しかし、その後は劇的な減少を見せ、2000年代以降は4,000トンを下回る水準にまで落ち込んでいます。最新の2022年には、2,231トンと低迷傾向が続いており、ピーク時の1976年と比較すると約91%もの大幅な減少が記録されています。
モーリシャスの牛乳生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 2,231 |
2021年 | 2,602 |
2020年 | 2,500 |
2019年 | 2,500 |
2018年 | 2,500 |
2017年 | 3,600 |
2016年 | 4,000 |
2015年 | 4,500 |
2014年 | 5,000 |
2013年 | 5,000 |
2012年 | 6,000 |
2011年 | 5,000 |
2010年 | 3,600 |
2009年 | 3,500 |
2008年 | 3,300 |
2007年 | 3,500 |
2006年 | 4,000 |
2005年 | 4,000 |
2004年 | 4,000 |
2003年 | 4,000 |
2002年 | 4,000 |
2001年 | 4,000 |
2000年 | 4,700 |
1999年 | 5,000 |
1998年 | 5,500 |
1997年 | 6,000 |
1996年 | 6,600 |
1995年 | 7,500 |
1994年 | 8,000 |
1993年 | 9,000 |
1992年 | 10,500 |
1991年 | 10,300 |
1990年 | 11,000 |
1989年 | 13,500 |
1988年 | 12,500 |
1987年 | 11,250 |
1986年 | 11,000 |
1985年 | 10,700 |
1984年 | 9,150 |
1983年 | 8,000 |
1982年 | 7,600 |
1981年 | 7,500 |
1980年 | 8,500 |
1979年 | 9,050 |
1978年 | 15,000 |
1977年 | 24,178 |
1976年 | 24,720 |
1975年 | 22,400 |
1974年 | 22,000 |
1973年 | 21,650 |
1972年 | 21,588 |
1971年 | 21,432 |
1970年 | 21,400 |
1969年 | 21,500 |
1968年 | 21,400 |
1967年 | 21,300 |
1966年 | 21,200 |
1965年 | 21,200 |
1964年 | 21,106 |
1963年 | 21,100 |
1962年 | 21,000 |
1961年 | 21,000 |
モーリシャスの牛乳生産量の歴史を見ると、初期には小幅ながら堅実な増加が続き、1976年には24,720トンに達しました。この年は最多生産量を記録した重要な節目ですが、1978年以降、15,000トン程度に急激に減少し、その後も低迷が顕著となります。この劇的な変化の背景には、モーリシャス特有の地理的条件、経済政策の変化、気候の影響、さらには外部市場との競争などが関与していると考えられます。
特に1980年代以降には、牛乳生産が長期的な減少トレンドに入り、2000年代には4,000トン以下の低水準が常態化しました。2022年には2,231トンと記録され、この推移は同国の酪農産業の衰退と深刻な課題を反映しています。この減少は、自給率の低下を招くとともに、輸入牛乳や乳製品への依存度を高める結果を生んでおり、国際的な価格変動や市場リスクに対して脆弱性が増しています。
他国と比較してみると、例えばアフリカ諸国の中ではケニアや南アフリカなどが持続的に乳製品の生産量を増加させています。また、インドやアメリカ、中国などの主要な牛乳生産国では、一貫して生産性を向上させているのに対し、モーリシャスはその潮流に適応できていない状況です。この違いは、国内の酪農政策や技術導入の遅れ、小規模酪農家の支援不足が背景にある可能性があります。
モーリシャス特有の課題として、まず土地利用の問題が挙げられます。同国は島国で国土の大部分を砂糖生産用のサトウキビ栽培が占めており、酪農業に適した土地が限られています。さらに、地理的にサイクロンや干ばつといった自然災害が頻発する地域であり、それが牧草地の維持や家畜の飼育に与える影響も無視できません。このような自然環境に加え、1990年代以降のグローバル化により、安価な輸入牛乳が国内市場を圧迫する事態が生じていることも指摘できます。
長期的な牛乳生産のテコ入れを図るため、いくつかの具体的な政策が考えられます。まず、酪農業において持続可能な技術を導入し、飼料の効率的な使用や家畜の健康管理の高度化を推進することが重要です。また、小規模酪農家を支援するための融資や補助金の提供、または酪農協同組合の設立に国が積極的に関与することが必要です。さらに、現在の輸入依存型の構造を徐々に変えるため、自給率向上に向けた政策的な目標設定と、それに基づく段階的な行動計画も求められます。
地政学的リスクにも触れると、モーリシャスはグローバルサプライチェーンに依存しているため、輸入牛乳への需要が国際的な物流の乱れや価格上昇リスクにさらされています。例えば、コロナ禍やロシアとウクライナの紛争によって引き起こされた国際的な輸送コストの増加や供給不足状況は、そうしたリスクを顕在化させる一例です。このようなリスクに対抗するため、国内生産の強化はますます重要性を増しています。
結論として、モーリシャスの牛乳生産量の減少は、深刻な問題を抱える一方で、その改善には多くの可能性が秘められています。環境や地理的制約を克服するためには、持続可能性を重視した政策の導入が不可欠です。国際機関と協力して技術支援を受けることや、他国の成功事例をモデルとして活用することも有用です。この取り組みが進めば、酪農業の回復だけでなく、国内経済や雇用へのポジティブな影響も期待できるでしょう。