国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、モーリシャスの牛飼養数は1960年代以降、大幅な変動を見せつつも、長期的には減少傾向にあります。ピーク時には1969年から1971年にかけて約47,000〜48,000頭でしたが、その後の減少を経て、2022年には過去最低の3,512頭に達しました。この長期間の減少傾向は、モーリシャスの農業政策、経済変化、土地利用の変遷、または気候変動などの影響を示唆している可能性があります。
モーリシャスの牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 3,512 |
2021年 | 3,734 |
2020年 | 4,754 |
2019年 | 3,484 |
2018年 | 3,985 |
2017年 | 3,815 |
2016年 | 4,533 |
2015年 | 5,898 |
2014年 | 6,041 |
2013年 | 7,240 |
2012年 | 7,302 |
2011年 | 6,596 |
2010年 | 7,491 |
2009年 | 7,237 |
2008年 | 7,327 |
2007年 | 7,203 |
2006年 | 6,934 |
2005年 | 6,700 |
2004年 | 8,180 |
2003年 | 8,100 |
2002年 | 8,800 |
2001年 | 11,000 |
2000年 | 27,000 |
1999年 | 25,000 |
1998年 | 22,000 |
1997年 | 20,500 |
1996年 | 22,900 |
1995年 | 23,000 |
1994年 | 24,000 |
1993年 | 24,000 |
1992年 | 24,000 |
1991年 | 23,000 |
1990年 | 30,000 |
1989年 | 34,000 |
1988年 | 33,000 |
1987年 | 32,000 |
1986年 | 32,000 |
1985年 | 30,000 |
1984年 | 26,685 |
1983年 | 25,485 |
1982年 | 27,000 |
1981年 | 27,000 |
1980年 | 30,000 |
1979年 | 25,000 |
1978年 | 21,098 |
1977年 | 30,000 |
1976年 | 28,000 |
1975年 | 28,500 |
1974年 | 33,500 |
1973年 | 41,094 |
1972年 | 45,000 |
1971年 | 48,000 |
1970年 | 48,000 |
1969年 | 47,000 |
1968年 | 46,000 |
1967年 | 46,000 |
1966年 | 45,000 |
1965年 | 45,000 |
1964年 | 45,683 |
1963年 | 44,000 |
1962年 | 44,000 |
1961年 | 44,000 |
モーリシャスの牛飼養数の長期的な減少傾向は、同国の農業形態の変化や経済の発展を反映しています。1961年では44,000頭だった飼養数は、1970年代初頭までおおむね増加し、最大で48,000頭に達しました。しかし、その後は急激な減少が見られました。1975年には28,500頭、1980年代になると30,000頭前後で推移し、2000年代以降さらに激減しました。この減少は、モーリシャス国内における農業経済の転換や土地利用の変化、輸入牛肉への依存の高まり、さらには自然環境や気候変動の影響など、多くの要因が絡んでいると考えられます。
特に注目すべきは2001年以降の劇的な減少です。この年までに飼養頭数が11,000頭にまで減少しており、2010年代には7,000頭台、直近では2022年の3,512頭と、ピーク時の1969年と比較して約90%減少しています。このような急激な変化には、土地の狭小化や都市化の進展、観光産業への経済シフトにより農業分野の優先度が相対的に低下したことが背景にあるかもしれません。
また、モーリシャスは島嶼国家であるため、可耕地面積が限られているという地理的な制約があります。観光やサービス業の発展とともに、農業用途、特に家畜のための土地の確保が困難になりました。また、近年の気温上昇や干ばつといった気候変動による影響も無視できません。モーリシャスは熱帯地域に所在しているため、暑さに弱い乳牛や肉用牛の飼養がさらに困難になっている可能性があります。
この傾向に対する対応策として、まず飼養業の収益性を高めるための技術支援が重要です。具体的には、革新的な飼育技術や持続可能な牧草地管理の導入が必要です。また、限られた土地での効率的な飼養を実現させるため、小規模農家向けのコンパクトな畜産モデルを推進することも選択肢の一つです。加えて、国際的な気候変動対策への参加を通じて、モーリシャス独自の農業・畜産モデルの進化を目指すことが重要です。
さらに、輸入依存度を高める一方で、国内生産を減少させることの影響も十分に考慮する必要があります。食料自給率が低下すれば、貿易摩擦や価格変動の影響を受けやすくなり、将来的な食料安全保障のリスクが高まる可能性があります。このため、国内での牛飼養を再活性化する施策、たとえば農業従事者の減少を防ぐための支援政策の強化や、都市部と農村部のバランスの取れた発展が必要になるでしょう。
地政学的な視点では、モーリシャスはインド洋に位置する戦略的な要所としても注目されています。この地域での気候変動や生態系の変化が、モーリシャスの農業パターンや輸出入状況に影響を与える可能性があります。例えば、隣国との食品輸送経路が遮断されるような地域的な紛争や災害が発生した場合、モーリシャスの食料供給が深刻な打撃を受けるリスクがあります。このため、地域間協力や食料安全保障枠組みの強化が求められます。
結局のところ、牛飼養数の減少という現象は単なる統計の変化にとどまらず、モーリシャスの農業政策や気候変動、地理的条件など多くの要因を反映しています。今後、同国が持続可能な飼養モデルを再構築し、気候変動へ適応する新たな取り組みを進めることが期待されます。そしてこれには、国内外からの技術協力と政策支援が欠かせません。