ネパールのサトウキビ生産量推移（1961年～2023年）

Food and Agriculture Organization（国際連合食糧農業機関）が発表した最新データによると、ネパールのサトウキビ生産量は1961年の約14万トンから2023年には約313万トンへと増加しました。しかし、近年は減少傾向が見られ、2020年以降は年間約300万トン台で推移しています。この過去数十年の間、安定成長期と変動期を繰り返しながら産業規模を拡大してきましたが、近年の停滞傾向は将来への課題を示しています。

ネパールのサトウキビ生産量は1961年から現在に至るまで長期的には大幅な上昇を見せています。特に1980年代後半から1990年代前半にかけて急増し、1990年には約98万トン、1995年には約150万トンと短期間で倍増しています。この急速な成長の背景には、農業技術の進歩、耕作地拡大、政策的な支援、及び国内外の砂糖需要の高まりが挙げられます。その後、2000年以降も生産量は順調に増加し、2000年代後半には200万トン台を安定的に維持しました。そして2015年以降には300万トンを超える水準に達し、2016年には記録的な約435万トンを生産しています。

しかし、2016年以降のデータからは明らかに変化が見られます。それまで上昇基調だった生産量は2017年以降減少に転じ、2020年以降は年間300万トンをわずかに上回るまたは下回る水準で停滞しています。この変化には、いくつかの要因が関与していると考えられます。

まず、重要な要因として耕地の限界と土壌肥沃度の問題が挙げられます。長年の集中的な生産活動により、一部の耕作地では地力の低下が進行している可能性があります。この問題は特に化学肥料への過度な依存や土地管理の不十分さから発生していると言えます。また、気候変動の影響も大きく、ネパールではモンスーンの不安定化や洪水、干ばつといった異常気象が農業生産に悪影響を及ぼしています。さらに、近年の世界的なCOVID-19パンデミックも物流や市場アクセスを妨げ、農家の生産意欲や収益性に影響を与えた結果、生産量の減少を招いている可能性があります。

また、地域の地政学的リスクも無視できません。ネパールは隣国インドと経済的・貿易的に密接な関係がありますが、貿易摩擦やインフラの発展の遅れは輸出および砂糖市場の拡大を制約しています。インドをはじめとするサトウキビ大国との競争も、ネパールの生産者に価格面での圧力を与えている要因です。

これらの課題に対処するための具体的な対策として、まずは農業の近代化を進めることが求められます。持続可能な土壌管理を実施し、肥料や水資源の効率的な利用を促進するための教育プログラムが必要です。また、農業関連の気候変動への適応策として、灌漑システムの整備や気候に強いサトウキビ品種の導入を進めるべきです。さらに、農業従事者に対する経済支援や補助金を通じて、生産の安定化を図ることが効果的でしょう。加えて、隣国インドや地域間での経済協力の枠組みを強化し、輸出市場を広げることも成長の鍵となります。

結論として、ネパールのサトウキビ産業は過去数十年で著しい成長を遂げましたが、近年の停滞は今後の持続可能性に向けた挑戦を突きつけています。地域の自然環境や地政学的条件に適応しながら効率的な農業手法を導入することで、新たな成長の可能性を切り拓く必要があります。国際社会もこうしたアプローチを支援し、持続可能な農業モデルの構築に協力することが求められるでしょう。