国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、ネパールの豚飼育数はこの数十年間で着実に増加しています。1961年には180,000頭だった頭数が1990年には約574,000頭へ成長し、その後も増加の傾向を維持しました。特に2018年以降の数値が大きく伸び、2021年には過去最高の1,588,838頭を記録しました。しかし、2022年には1,504,624頭と減少が見られ、これが今後の課題を示唆しています。
ネパールの豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 1,504,624 |
2021年 | 1,588,838 |
2020年 | 1,519,593 |
2019年 | 1,488,338 |
2018年 | 1,435,369 |
2017年 | 1,328,036 |
2016年 | 1,291,308 |
2015年 | 1,203,230 |
2014年 | 1,190,138 |
2013年 | 1,160,035 |
2012年 | 1,137,489 |
2011年 | 1,108,465 |
2010年 | 1,064,858 |
2009年 | 1,044,498 |
2008年 | 1,013,359 |
2007年 | 989,429 |
2006年 | 960,827 |
2005年 | 947,711 |
2004年 | 935,076 |
2003年 | 932,192 |
2002年 | 934,461 |
2001年 | 912,530 |
2000年 | 877,681 |
1999年 | 825,132 |
1998年 | 765,718 |
1997年 | 723,613 |
1996年 | 670,340 |
1995年 | 636,024 |
1994年 | 612,027 |
1993年 | 604,902 |
1992年 | 598,955 |
1991年 | 591,602 |
1990年 | 574,197 |
1989年 | 547,655 |
1988年 | 516,059 |
1987年 | 476,340 |
1986年 | 455,724 |
1985年 | 441,946 |
1984年 | 420,000 |
1983年 | 400,000 |
1982年 | 456,000 |
1981年 | 380,000 |
1980年 | 375,000 |
1979年 | 370,000 |
1978年 | 364,000 |
1977年 | 348,000 |
1976年 | 325,000 |
1975年 | 315,000 |
1974年 | 310,000 |
1973年 | 300,000 |
1972年 | 300,000 |
1971年 | 300,000 |
1970年 | 320,000 |
1969年 | 320,000 |
1968年 | 313,000 |
1967年 | 307,000 |
1966年 | 300,000 |
1965年 | 250,000 |
1964年 | 177,000 |
1963年 | 180,000 |
1962年 | 187,000 |
1961年 | 180,000 |
ネパールの豚飼育数の推移データは、この分野が持続的に成長していることを示す指標として重要です。1961年には僅か180,000頭だった豚の頭数は、60年余りで約8倍へと増加しました。この背景には、経済成長や食品需要の増加、養豚業の技術的進歩があると考えられます。特に1970年代後半から一貫した増加が見られることは、養豚が農村部の生計向上や食料供給の安定に寄与していることを裏付けています。
2000年代後半には年間の増加数がやや停滞する期間もありましたが、2016年以降は再び加速しています。この時期には政府主導の農業プロジェクトや市場への関与拡大が寄与し、2018年には1,435,369頭となり、その後も2021年まで成長が続きました。しかし2022年には約84,000頭の減少が記録され、これは自然災害や疫病、飼料価格の高騰、新型コロナウイルス感染症などの外的要因が影響を与えた可能性があります。
ネパールにおける豚飼育業は、カトマンズ盆地やマディシ(低地平野地域)を中心に展開されています。これらの地域は飼料アクセスが良好な上、国内需要の大部分を賄う役割を担っています。他方、中国やインドといった隣接国では養豚産業がすでに大規模化しており、ネパールの生産規模との大きな差が見受けられます。中国では養豚が長年にわたり国家的産業として育まれ、世界の豚肉総生産量で突出した地位を占めています。このため、隣国との競争力を強化するためには、生産効率の向上や疾病管理能力の改善が必要です。
また地政学的な文脈では、飼料となる穀物の輸入依存がネパールの養豚業にリスクをもたらしています。仮にインドや中国との貿易関係が悪化した場合、飼料の供給不足が深刻な問題となり得ます。このような状況では、養豚を含む農業産業全体の自給率を高める政策が鍵となるでしょう。
今後の課題として、まず飼育環境の改善が挙げられます。ネパールでは中小規模の農家が豚飼育業の大部分を担っていますが、これらの農家が最新の飼育技術や病害対策を十分に導入できているわけではありません。過去の統計でも疾患による生産量の減少が散見されるため、国家主導で獣医ケア及びワクチンプログラムの普及を推進する必要があります。
また市場の透明性や流通の効率化にも取り組むべきです。豚肉の国内消費が増えているにもかかわらず、生産者と消費者間に存在する流通コストが収益性の低下に繋がっています。電子取引の活用や農家協同組合の強化が、この問題の解決に寄与するでしょう。
最後に、国外市場への輸出など新たな収益源を作ることも持続可能な成長を牽引する鍵となります。例えば、オーガニック豚肉のブランド化による付加価値の創出は、世界的な健康志向の高まりに応える形でさらなる需要を喚起する可能性があります。ただし輸出には、国際基準を満たす品質管理と疾病対策が不可欠です。
豚飼育業の長期的成長には、多角的な政策アプローチが求められます。ネパール政府や地域の関係機関は、技術支援、インフラ整備、適切な規制の導入を通じてこの産業の持続可能性を確保する取り組みを促進すべきです。これにより、ネパールの農業だけでなく同国経済全体の発展にも大きな貢献が生まれるでしょう。