国際連合食糧農業機関(FAO)が提供する最新のデータによると、ネパールの羊飼養数は1961年の550,000匹から長期的な増加傾向を示し、1989年には910,471匹とピークに達しました。その後はやや下降し、2022年では771,205匹となっています。この推移は、農業政策や地理的条件、社会経済的要因の影響を反映しており、特に近年の減少率は注目されるべきです。
ネパールの羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 771,205 |
2021年 | 793,725 |
2020年 | 806,079 |
2019年 | 798,889 |
2018年 | 800,749 |
2017年 | 801,975 |
2016年 | 800,658 |
2015年 | 789,292 |
2014年 | 789,216 |
2013年 | 809,536 |
2012年 | 807,267 |
2011年 | 805,070 |
2010年 | 801,371 |
2009年 | 802,993 |
2008年 | 809,480 |
2007年 | 813,621 |
2006年 | 812,085 |
2005年 | 816,727 |
2004年 | 824,187 |
2003年 | 828,286 |
2002年 | 840,141 |
2001年 | 850,170 |
2000年 | 851,913 |
1999年 | 855,159 |
1998年 | 869,142 |
1997年 | 869,582 |
1996年 | 859,000 |
1995年 | 918,885 |
1994年 | 913,968 |
1993年 | 911,279 |
1992年 | 912,372 |
1991年 | 906,493 |
1990年 | 892,296 |
1989年 | 910,471 |
1988年 | 873,159 |
1987年 | 836,624 |
1986年 | 807,975 |
1985年 | 785,152 |
1984年 | 770,000 |
1983年 | 760,000 |
1982年 | 750,000 |
1981年 | 740,000 |
1980年 | 730,000 |
1979年 | 720,000 |
1978年 | 710,000 |
1977年 | 700,000 |
1976年 | 690,000 |
1975年 | 680,000 |
1974年 | 670,000 |
1973年 | 660,000 |
1972年 | 650,000 |
1971年 | 640,000 |
1970年 | 630,000 |
1969年 | 620,000 |
1968年 | 610,000 |
1967年 | 600,000 |
1966年 | 590,000 |
1965年 | 580,000 |
1964年 | 570,000 |
1963年 | 560,000 |
1962年 | 550,000 |
1961年 | 550,000 |
ネパールにおける羊の飼養数の推移を見てみると、1961年から1989年にかけて持続的な増加があり、1989年に過去最大の910,471匹を記録しました。この増加は、農村経済の発展と羊毛や乳製品などの製品需要の高まりによるものと推定されます。ネパールの山岳地帯は羊の放牧に適しており、その誇るべき地理的条件も飼養数の増加に貢献したと言えるでしょう。しかし1990年代以降、その数は減少に転じ、2000年代には大幅な変動を見せています。2022年には771,205匹と1989年のピーク時から約15%減少しています。
この減少の背景にはいくつかの要因が考えられます。まず、ネパールでは人口増加に伴う都市化が進み、放牧地の縮小が見られます。特に平野部では農地の用途が多様化し、従来の放牧地が減少していることが影響しています。また、農業の近代化や輸入品の増加により、高品質な羊毛や乳製品が諸外国から安価に供給されるようになったため、羊飼育の経済的意義が低下している可能性があります。
さらに、地政学的な背景も無視できません。ネパールは隣接する中国やインドとの経済連携が強まる一方で、政治的不安定性や自然災害、特に2015年のネパール大地震の影響で農村部のインフラが破壊され、牧畜業が一時的に停滞したと考えられます。また、新型コロナウイルス感染症の拡大が地域経済や輸出入に与えた打撃も羊飼養数に影響を与えた可能性があります。
将来を見据えると、ネパールにおける羊の飼養数を持続可能な形で維持するためにはいくつかの課題への対策が必要です。まず、放牧地域の保全と拡張を目指す政策が重要です。特に山岳地域における牧畜専用の保護区の設置や、地域住民への牧畜業の教育が効果的でしょう。また、羊毛や乳製品の国際市場向け高付加価値商品の開発は、ネパールの農村経済を再活性化させる可能性があります。他国、例えばオーストラリアやニュージーランドでは、羊飼養を農村振興の柱として成功事例を挙げており、このような取り組みを参考にすることが進められます。
さらに、気候変動の影響も考慮しなければなりません。山岳地帯の気温上昇や降水パターンの変化が牧草地の生産性を低下させる恐れがあるため、適応策として耐寒性や高標高条件に適した羊の品種改良が検討されるべきです。また、政府と国際的な協力機関が連携して牧畜業者への金融支援を行い、安定的な経済活動が可能となるようにすることも重要です。
結論として、ネパールの羊飼養数の減少は、社会経済的要因と地政学的状況の変化を背景としています。この分野の持続可能な発展には、新しい政策や技術的アプローチ、地域経済の再構築が鍵となるでしょう。国際的な協調を通じた改革を進めることで、ネパールの牧畜業は再び発展の可能性を秘めています。