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ネパールの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、ネパールの羊肉生産量は1961年の1,800トンから長期的な増加傾向を示し、1989年には初めて3,000トンに達しました。しかしその後、1990年代中盤以降は減少し、2000年代は2,700トン台で停滞しました。2017年以降は再び増加基調に転じ、2021年には過去最高の2,964トンを記録しましたが、2023年には1,874トンと急激な減少が見られています。この一連の変動には、経済、農業政策、そして地政学的リスクが関与していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,874
-34.93% ↓
2022年 2,880
-2.83% ↓
2021年 2,964
8.37% ↑
2020年 2,735
-1.01% ↓
2019年 2,763
0.33% ↑
2018年 2,754
1.47% ↑
2017年 2,714
1.12% ↑
2016年 2,684
0.98% ↑
2015年 2,658
0.08% ↑
2014年 2,656
-2.39% ↓
2013年 2,721
0.04% ↑
2012年 2,720
-0.07% ↓
2011年 2,722
1.15% ↑
2010年 2,691
-0.74% ↓
2009年 2,711
-0.8% ↓
2008年 2,733
-0.51% ↓
2007年 2,747
0.37% ↑
2006年 2,737
-0.26% ↓
2005年 2,744
-1.26% ↓
2004年 2,779
-0.47% ↓
2003年 2,792
-1.1% ↓
2002年 2,823
-1.16% ↓
2001年 2,856
-0.14% ↓
2000年 2,860
-0.45% ↓
1999年 2,873
-1.03% ↓
1998年 2,903
0.1% ↑
1997年 2,900
1.4% ↑
1996年 2,860
-6.75% ↓
1995年 3,067
0.39% ↑
1994年 3,055
0.76% ↑
1993年 3,032
-0.39% ↓
1992年 3,044
0.5% ↑
1991年 3,029
1.44% ↑
1990年 2,986
-0.37% ↓
1989年 2,997
4.39% ↑
1988年 2,871
4.32% ↑
1987年 2,752
3.42% ↑
1986年 2,661
2.9% ↑
1985年 2,586
0.62% ↑
1984年 2,570
1.58% ↑
1983年 2,530
1.2% ↑
1982年 2,500
1.21% ↑
1981年 2,470
1.65% ↑
1980年 2,430
1.25% ↑
1979年 2,400
1.27% ↑
1978年 2,370
1.72% ↑
1977年 2,330
1.3% ↑
1976年 2,300
1.32% ↑
1975年 2,270
1.79% ↑
1974年 2,230
1.36% ↑
1973年 2,200
1.38% ↑
1972年 2,170
1.88% ↑
1971年 2,130
1.43% ↑
1970年 2,100
1.45% ↑
1969年 2,070
1.97% ↑
1968年 2,030
1.5% ↑
1967年 2,000
1.52% ↑
1966年 1,970
2.07% ↑
1965年 1,930
1.58% ↑
1964年 1,900
1.6% ↑
1963年 1,870
2.19% ↑
1962年 1,830
1.67% ↑
1961年 1,800 -

ネパールの羊肉生産量の推移を整理すると、長期的には増加傾向にあったものの、1980年代末以降は不安定な変動が繰り返されています。1961年から1989年にかけて生産量は一貫して増加し、3,000トンに達しました。この背景には、農村部における農畜産業の発展、伝統的な食文化の維持、人口増加などが寄与していたと考えられます。しかし、1990年代後半には減少に転じ、2000年代には停滞が目立ちました。この時期の減少傾向には、森林資源の減少、内戦や不安定な政治情勢、さらに都市化の進展が影響を及ぼしていた可能性があります。

ここで特筆すべきなのは、2017年以降の改善傾向です。生産量は再び増加基調となり、2021年には記録的な2,964トンに達しました。しかし、2023年には1,874トンと急激な低下を見せており、これは1960年代後半の水準まで逆戻りする大きな変化です。2021年から2023年の間に何が起こったのでしょうか?新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響が考えられますが、それだけではなく、市場の需要変動、生産基盤の弱体化、さらには自然災害や気候変動の影響も無視できない要素です。

さらに、ネパールは内陸山岳国であるため、地理的な制約や気候条件、国際輸送の難しさが継続的な課題となっています。これは羊肉の生産だけでなく分配にも影響を及ぼしています。また、隣国のインドや中国の羊肉生産とも比較すると、ネパールの生産規模や技術水準は依然として低いことが分かります。特に中国は世界最大の羊肉生産国の一つであり、2020年には382万トンの生産量を誇っています。ネパールがこれらの競争国と差を縮めるためには、技術革新や効率的な牧畜方法の導入が急務です。

さらに、2023年の急減に関しては、特に気候変動の影響と、それに伴う草資源の減少や病虫害の増加、さらには人為的な土地利用の変化が重要な要因となっている可能性も考慮する必要があります。また、地域衝突や政治的混乱が畜産業に与える影響は、これまでの内戦時代の生産減少と同様に無視できない要素です。

将来的な課題への具体的な対策としては、まず牧草地の保護と効率的な利用技術の導入が挙げられます。また、地元の農民に対する現代的な畜産技術のトレーニングを実施し、家畜管理の改善を進めるべきです。さらに、羊肉加工品を増やし付加価値を高めることにより、国内市場だけでなく国外市場にも展開する余地があります。これは、中央アジアや中東地域など羊肉需要が高い国々との貿易強化につながります。

国際的な支援と協力も不可欠です。特にFAOや他の国際機関との連携により、持続可能な農業プログラムを推進し、気候変動への負の影響を最小限に抑える努力が必要です。また、国際的な地政学的リスクを考慮に入れた長期的な食糧安全保障政策を構築することも急務です。

結論として、ネパールの羊肉生産量の長期的な推移には、一貫した発展段階や課題が浮き彫りになっています。直近の急激な生産減少は、自然環境、社会経済的要因、政治的背景など複合的な要因が絡んだ結果であると考えられます。これらの要素を体系的に分析し、気候変動対策、技術革新、地域および国際協力を進めることで、持続可能な羊肉生産の未来を築く可能性があるのです。