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ネパールの桃(モモ)・ネクタリン生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ネパールの桃(モモ)・ネクタリンの生産量は、1990年には12,050トンで始まりました。その後、1996年の9,500トンへの減少を差し挟みつつ、2003年には17,500トンというピークを迎えました。しかし、2023年現在、10,419トンと再び減少しており、生産量全体の変化には波が見られます。近年の低迷は気候変動や農業政策の課題、地政学的なリスクが背景にあると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 10,419
-11.12% ↓
2022年 11,723
11.45% ↑
2021年 10,519
-8.24% ↓
2020年 11,463
-4.78% ↓
2019年 12,039
1.4% ↑
2018年 11,873
6.13% ↑
2017年 11,188
-15.75% ↓
2016年 13,280
-0.29% ↓
2015年 13,319
1.14% ↑
2014年 13,169
-2.05% ↓
2013年 13,444
-15.39% ↓
2012年 15,889
10.42% ↑
2011年 14,390
0.45% ↑
2010年 14,326
3.79% ↑
2009年 13,803
0.2% ↑
2008年 13,776
0.24% ↑
2007年 13,743
0.16% ↑
2006年 13,721
0.5% ↑
2005年 13,653
0.41% ↑
2004年 13,597
-22.3% ↓
2003年 17,500
42.28% ↑
2002年 12,300
-1.6% ↓
2001年 12,500
8.7% ↑
2000年 11,500
-4.17% ↓
1999年 12,000
5.94% ↑
1998年 11,327
2.97% ↑
1997年 11,000
15.79% ↑
1996年 9,500
-40.63% ↓
1995年 16,000
6.67% ↑
1994年 15,000
3.45% ↑
1993年 14,500
10.69% ↑
1992年 13,100
0.77% ↑
1991年 13,000
7.88% ↑
1990年 12,050 -

ネパールは桃(モモ)・ネクタリンの生産において独自の地理的・気候的条件を活かせる国です。しかしながら、生産量の推移を見ると、安定した成長というよりは大きな変動があることが分かります。1990年代は、13,000トン程度で緩やかな増加を示していましたが、1996年に9,500トンまで急減しました。この減少の原因として考えられるのは、国内の政治的不安や農村部のインフラ設備の不備、そして当時の自然災害の影響です。その後は幾度かの回復期を経て、2003年には過去最多の17,500トンに達し、それ以降は13,000トン前後での安定に近い水準が続きました。

2020年以降の生産量は、主に10,500トンから12,000トンの間で推移していますが、2023年には10,419トンと再び減少しています。この近年の低迷は複合的な要因によるものと考えられます。まず、地球規模での異常気象が果実の育成を妨げている点が挙げられます。ネパールでは雪解け水を含む十分な水資源はあるものの、気候変動により降水パターンが不規則となり、農水システムに悪影響を与えています。また、2020年以降の新型コロナウイルスの流行も、農業労働力の減少や物流網の停滞を引き起こし、桃・ネクタリンの供給ラインに悪影響を及ぼした可能性が高いと言えます。

国際的な比較では、桃やネクタリンの主要生産国として中国やアメリカが挙げられます。中国は2023年に約1,500万トンを超える生産量を記録しており、これはネパールの生産量の1,000倍以上となります。これほどの差があるのは、生産量の効率化においてネパールがまだ基盤を整備できていない点が原因と考えられます。例えば、中国では高度な灌漑技術や品種改良により、気候変動の影響を抑える取り組みが進んでいます。これに対して、ネパールでは統計データが示しているように農業支援政策の恩恵が長期的な規模で果実生産に結びついていない側面があります。

また、地政学的背景においてもいくつかの懸念があります。例えば、ネパールはインドや中国に接する地理的条件を持っていますが、これらの隣接国の経済協力を十分に活用できていない点が課題です。地域の交通インフラが未整備のため、高付加価値の果物を輸出する際のコストが増加しており、持続可能な農業モデルの構築が難しい現状です。さらに、農地での争議や土地の使用権を巡る小規模な社会的衝突も、生産性向上への妨げとなっています。

今後の課題としては、1つに気候変動に対応する農業技術の導入があります。具体的には、耐寒性・耐暑性の高い桃やネクタリンの品種改良と、農地における灌漑技術の進展が求められます。また、小規模農家が多いネパールでは、農業協同組合が中心となって資金や機材を共同運用するモデルが有効になるでしょう。さらに、輸出市場を拡大するために、隣接国インドや中国との農業輸出協定を強化し、地域間連携を進めることも必要です。

結論として、ネパールの桃・ネクタリン生産量は長期的には安定基盤を欠いていますが、多様な取り組みによってその潜在力を引き出すことが可能です。国際機関や政府の連携を通じて、気候変動対応や輸送インフラの整備、技術支援を進めることで、今後の生産量の回復および持続可能な農業モデルの確立が期待されます。これにより、国内の果物産業を経済的に発展させると同時に、地域全体の農業の活性化へと繋げることが重要です。