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ネパールの大麦生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、ネパールの大麦生産量は1961年の18,000トンから1970年代以降徐々に増加し、1996年には記録的な41,340トンを達成しました。しかし、その後は減少傾向が見られ、近年の生産量は30,000トン前後で推移しています。2023年には25,912トンと減少が見られており、長期的な安定とは言い難い状況です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 25,912
-19.42% ↓
2022年 32,156
9.25% ↑
2021年 29,433
-5.5% ↓
2020年 31,147
1.95% ↑
2019年 30,550
0.13% ↑
2018年 30,510 -
2017年 30,510
-6.98% ↓
2016年 32,801
-12.19% ↓
2015年 37,354
7.27% ↑
2014年 34,824
3.08% ↑
2013年 33,782
-3.01% ↓
2012年 34,830
15.18% ↑
2011年 30,240
9.62% ↑
2010年 27,587
18.79% ↑
2009年 23,224
-17.3% ↓
2008年 28,082
-0.75% ↓
2007年 28,293
1.82% ↑
2006年 27,786
-5.3% ↓
2005年 29,341
-4.33% ↓
2004年 30,670
-3.28% ↓
2003年 31,711
2.99% ↑
2002年 30,790
0.99% ↑
2001年 30,488
-1.07% ↓
2000年 30,817
-3.39% ↓
1999年 31,898
-13.67% ↓
1998年 36,950
-4.42% ↓
1997年 38,660
-6.48% ↓
1996年 41,340
37.8% ↑
1995年 30,000
3.45% ↑
1994年 29,000
5.03% ↑
1993年 27,610
-0.11% ↓
1992年 27,640
-0.72% ↓
1991年 27,840
1.64% ↑
1990年 27,390
1.37% ↑
1989年 27,020
11.24% ↑
1988年 24,290
-1.54% ↓
1987年 24,670
5.29% ↑
1986年 23,430
-0.13% ↓
1985年 23,460
5.34% ↑
1984年 22,270
5.25% ↑
1983年 21,160
-9.26% ↓
1982年 23,320
1.26% ↑
1981年 23,030
-1.12% ↓
1980年 23,290
2.64% ↑
1979年 22,690
1.07% ↑
1978年 22,450
9.01% ↑
1977年 20,595
-16.51% ↓
1976年 24,667
-3.64% ↓
1975年 25,599
-0.11% ↓
1974年 25,626
3.27% ↑
1973年 24,815
-2.53% ↓
1972年 25,459
0.62% ↑
1971年 25,301
3.69% ↑
1970年 24,400
4.27% ↑
1969年 23,400
3.54% ↑
1968年 22,600
-19.29% ↓
1967年 28,000 -
1966年 28,000
7.69% ↑
1965年 26,000
8.33% ↑
1964年 24,000
9.09% ↑
1963年 22,000
10% ↑
1962年 20,000
11.11% ↑
1961年 18,000 -

ネパールの大麦生産量については、過去数十年にわたり興味深い動向が見られます。1960年代には毎年数千トンの増加が見られ、生産量は好調に伸びていました。しかし、1967年に28,000トンに達した後、1968年に22,600トンへと急減し、以降も1970年代には不安定な推移を示しました。気候条件や伝統的農法への過度な依存、近代的な農業技術の欠如がこの時期の生産量停滞の背景として挙げられます。1996年に最高記録となる41,340トンを記録しましたが、以降は30,000トン台で安定し、近年では30,000トンを下回ることも目立つようになりました。特に2023年には、2015年以降の上昇傾向から一転して25,912トンへと急落しています。

この大麦生産量の変動には、ネパール特有の地理的および気候的条件が深く関わっています。ネパールはヒマラヤ山脈を抱え、多くの農地が高地にあるため、農業には標高による気温の変化や不安定な降雨パターンが影響を及ぼします。また、大麦は主に高地で栽培される作物として知られていますが、そのため耕作可能な土地が限られることにも課題があります。さらに、地震などの自然災害や新型コロナウイルスによる労働力不足も、近年の生産量の減少要因として考えられます。

また、他国と比較するとネパールの大麦生産量は依然として小規模と言えます。例えば、2022年の中国の大麦生産量は約950万トン、インドは170万トン程度と報告されています。このように規模の差がある一方で、地域特性に応じた効率的な栽培方法の導入が重視されています。ネパールでも同様に、農業技術の改善や水資源の効率的利用が課題となっています。

将来的には、気候変動に適応した新たな品種の開発や、農業インフラの強化、さらには国際支援による技術移転が求められるでしょう。具体的には、高収量品種の開発や灌漑システムの近代化、農民への教育普及が急務です。また、大麦生産における地域協力も有益です。例えば、近隣諸国と育種技術や市場参入の機会を共有することで、ネパールの農産業全体の競争力向上が期待されます。

過去60年以上のデータ推移を見ると、農業政策の戦略的な見直しが今こそ重要です。持続可能な農業発展には、地方経済の強化、農業への投資促進、生産者と消費者を結ぶ流通網の改善など、多角的なアプローチが不可欠です。このデータは、ネパールの大麦栽培が抱える課題を明確にし、将来の方向性を展望するための重要な示唆を提供しています。