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サウジアラビアの大麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、サウジアラビアの大麦生産量は1961年の9,000トンから急激な変動を経て推移してきました。とくに1980年代以降、生産量が大幅に増加し1994年にはピークとなる2,010,500トンを記録しましたが、その後は急激な減少を見せる期間もあり、現在は2023年時点で2,000トンと極めて低い水準にまで減少しています。これは、灌漑施設の改善や政策変更、環境要因など、さまざまな要因が影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 2,000
-53.49% ↓
2022年 4,300
7.5% ↑
2021年 4,000
-99.09% ↓
2020年 438,084
-28.89% ↓
2019年 616,074
-1.38% ↓
2018年 624,702
-2.02% ↓
2017年 637,612
-1.7% ↓
2016年 648,620
-4.33% ↓
2015年 677,964
13.68% ↑
2014年 596,355
5192.94% ↑
2013年 11,267
-17.44% ↓
2012年 13,647
-12.05% ↓
2011年 15,516
-5.34% ↓
2010年 16,391
-19.82% ↓
2009年 20,443
-15.56% ↓
2008年 24,210
-13.54% ↓
2007年 28,000
-9.68% ↓
2006年 31,000
-34.66% ↓
2005年 47,443
-29.56% ↓
2004年 67,357
-51.21% ↓
2003年 138,055
0.27% ↑
2002年 137,679
-40.28% ↓
2001年 230,527
94.55% ↑
2000年 118,492
-38.29% ↓
1999年 192,000
-23.2% ↓
1998年 250,000
-20.68% ↓
1997年 315,194
-36.96% ↓
1996年 500,000
-37.01% ↓
1995年 793,798
-60.52% ↓
1994年 2,010,500
41.51% ↑
1993年 1,420,745
240.99% ↑
1992年 416,647
2.43% ↑
1991年 406,773
9.26% ↑
1990年 372,291
11.04% ↑
1989年 335,278
17.46% ↑
1988年 285,439
84.95% ↑
1987年 154,337
28.06% ↑
1986年 120,519
2643.43% ↑
1985年 4,393
103.66% ↑
1984年 2,157
16.53% ↑
1983年 1,851
-58.94% ↓
1982年 4,508
-25% ↓
1981年 6,011
10.07% ↑
1980年 5,461
-58.38% ↓
1979年 13,122
-11.61% ↓
1978年 14,845
9.77% ↑
1977年 13,524
12.24% ↑
1976年 12,049
-27.89% ↓
1975年 16,710
8.57% ↑
1974年 15,391
38.95% ↑
1973年 11,077
18.88% ↑
1972年 9,318
7.37% ↑
1971年 8,678
-45.76% ↓
1970年 16,000
14.29% ↑
1969年 14,000
25% ↑
1968年 11,200
-60.04% ↓
1967年 28,025
161.92% ↑
1966年 10,700
4.9% ↑
1965年 10,200
4.08% ↑
1964年 9,800
3.16% ↑
1963年 9,500
3.26% ↑
1962年 9,200
2.22% ↑
1961年 9,000 -

サウジアラビアにおける大麦生産量の推移は、同国の農業政策や資源管理の変遷を色濃く反映しています。1961年から1980年頃までは年間1万トン規模で安定して推移していましたが、1980年代に入ると政策の大規模な転換が影響し、急激な生産拡大が観察されました。とりわけ1986年から1992年にかけては急激な生産拡大期で、特に1994年には約200万トンという記録的な生産量を達成しました。この流れの背景には、灌漑施設の整備や政府による農業サポートが挙げられます。

しかしながら、その後は生産が急減し、2000年代以降では特に低生産量が続いているのが特徴的です。2023年時点ではわずか2,000トンと、ほぼ生産が停止している水準に近い状況が観察されています。この低迷の要因としては、以下の主な背景が考えられます。

まず、水資源の枯渇が同国の農業に重大な制約を与えています。サウジアラビアの地理的条件として、降水量が非常に少ない乾燥地帯に位置することから、農業用水は地下水に大きく依存しています。この地下水の過剰利用が生態系や長期的な水資源の枯渇を引き起こし、持続可能な農業活動が困難になる結果を生んでいます。1980年代の生産増加は主に政府補助金と灌漑の普及に依存したものでしたが、これは長期的な環境への影響を考慮しない短期的な解決策に過ぎませんでした。

さらに、大麦はサウジアラビアでは主に家畜の飼料用として広く用いられていましたが、輸入に依存した飼料供給が確立されたため、国内生産に対する需要が減少しました。同時に、政府は過去の農業支援政策を縮小し、特に乾燥農業からの撤退を進めています。このような政策転換は、国際市場や貿易協定、さらには持続可能な農業の必要性に対応したものといえるでしょう。

しかしながら、気候変動や食糧安全保障への懸念を踏まえると、サウジアラビアが大麦のような基幹作物の生産を再構築する必要があります。特に、持続可能な農業技術や資源効率的な灌漑方法を導入することで、生産量を一定の水準に戻す可能性があります。また、精密農業や塩害に強い作物の育種研究を強化することも重要です。これらを実現するためには、政府や民間セクターの投資を拡大し、農業従事者への教育プログラムも同時に推進していく必要があります。

さらに、中東全体における食糧自給率の改善に向けて、地域間の協力を強化することが求められます。たとえば、共有可能な水資源の管理や、アラブ諸国による共同農業プロジェクトの立ち上げなどが考えられます。国際機関や多国籍企業との連携も、技術提供や資金援助を通じて効果的に作用するでしょう。

現在、農業政策における地政学的要因も無視できません。食糧自給率の低下が長期化する場合、他国からの輸入依存が高まり、国際市場や輸送インフラの脆弱性にさらされるリスクがあります。紛争や気候変動による災害がこれに重なると、さらなる供給不安につながる可能性もあります。

結論として、サウジアラビアにおける大麦生産の大幅な縮小は、環境的および政策的な要因の積み重ねによるものと考えられます。今後は、環境負荷を軽減しながら効率的な農業生産を追求することが最重要課題です。そのためには、技術開発、政策の見直し、そして国際協力のさらなる進展が必要不可欠です。これらの取り組みが進むことによって、サウジアラビアの農業セクターは持続可能性を高めると同時に、地域全体の食糧安定にも貢献できるでしょう。