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サウジアラビアの天然蜂蜜生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月更新の最新データによると、サウジアラビアにおける天然蜂蜜生産量は、1981年から2022年にかけて全体的に成長を示していますが、特に急増した1988年以降、安定的な増加と一部の減少期を繰り返しています。近年では2005年以降、150~180トンの上限を記録した後、下降の傾向が見られ、2022年には過去10年間で最低水準に近い111トンとなっています。このデータはサウジアラビアの農業や自然環境にどのような変化があったのかを明確に示す指標といえます。

年度 生産量(トン)
2022年 111
2021年 119
2020年 135
2019年 137
2018年 136
2017年 130
2016年 124
2015年 119
2014年 110
2013年 108
2012年 113
2011年 119
2010年 126
2009年 130
2008年 137
2007年 160
2006年 170
2005年 180
2004年 153
2003年 163
2002年 174
2001年 160
2000年 165
1999年 160
1998年 174
1997年 167
1996年 144
1995年 140
1994年 77
1993年 75
1992年 72
1991年 68
1990年 95
1989年 86
1988年 51
1987年 6
1986年 4
1985年 5
1984年 7
1983年 5
1982年 3
1981年 1

サウジアラビアにおける天然蜂蜜生産量の推移は、同国の気候条件、農業政策、そして技術革新の進展と密接に関係しています。1980年代初頭の生産量はわずか1~7トンという低水準でしたが、1988年以降、飛躍的な増加が見られ、1990年代には80トン以上を安定して超える水準に達しました。この急増の背景には、蜂蜜産業への政策支援や養蜂技術の導入、さらには地域の蜂蜜需要の拡大が影響していると考えられます。

特に、1995年以降のデータは、2005年に180トンをピークとして、100トンから170トンの幅で推移しています。しかしながら、2010年以降は全体的に減少の傾向が顕著となり、2020年以降は110トン台まで下がっています。この下降トレンドの理由には、干ばつの頻発や気候変動の影響により花粉源が減少したこと、また、国際的な蜂蜜市場の競争激化が挙げられます。サウジアラビアの厳しい砂漠性気候は、養蜂の基盤となる植物相に影響を与え、生態系の脆弱さを露呈しています。

地域的には、サウジアラビアの中西部や南部が主要な蜂蜜生産地域とされていますが、これらの地域の植生減少と乾燥化が進行しています。これが、養蜂産業の停滞に直接的な影響を及ぼしています。また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う物流の制限や、農業労働者不足も、ここ数年間の生産量低下の一因と考えられます。

他国と比較すると、たとえばドイツでは年間2万トン以上の蜂蜜生産が行われ、日本でも年間1500トン程度と、サウジアラビアの生産量は相対的に非常に低水準です。また、隣接するエジプトは養蜂が盛んで年数千トン規模の生産を維持しており、気候条件や養蜂技術の差が影響していることがうかがえます。こうした比較からも、サウジアラビアの蜂蜜産業が規模拡大の可能性を秘めているものの、大きな課題にも直面していることが明らかです。

今後の具体的な戦略としては、第一に、生態系保護を目的とした植生の回復が挙げられます。砂漠緑化プロジェクトと養蜂業は相互に利益をもたらす可能性があり、このような取り組みは気候変動の影響を緩和するだけでなく、蜂蜜生産量の安定化にも寄与するでしょう。また、養蜂に関する技術革新を進め、外来種の導入や効率的な蜂蜜収集装置を普及させることも重要です。さらに、政府が養蜂農家に対してさらに充実した補助金制度を提供し、地域経済への直接的な支援を強化することが望まれます。

一方で、国際市場での競争力を高めることも課題です。ブランド化や品質標準の向上によって付加価値を付け、エジプトや他の中東諸国との差別化を図る必要があります。これには、研究開発への投資を増やし、蜂蜜製品の品質や多様性を高めることが含まれます。

最後に、地域的な協力が鍵となります。湾岸諸国や中東地域全体で気候変動に対する共同アプローチを構築し、相互に支援する仕組みを整えることが不可欠です。こうした取り組みを通じて、サウジアラビアの天然蜂蜜生産量は今後の安定と更なる成長が期待できるでしょう。これらの提案が実現すれば、同国の農業セクター全体が持続可能性を高め、地域経済の発展に寄与すると思われます。