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サウジアラビアのトウモロコシ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データに基づくと、サウジアラビアのトウモロコシ生産量は過去60年間で大きな変動を見せています。1960年代は年間2,000トン前後の低生産量でしたが、2000年代に急激な増加が見られ、特に2008年には163,446トンに達するピークを記録しました。しかし、その後は再び減少傾向が続き、2022年には58,500トンにとどまっています。このような変動は、農業政策、気候条件、経済の制約など複数の要因が影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 60,245
2.98% ↑
2022年 58,500
-0.85% ↓
2021年 59,000
-0.34% ↓
2020年 59,201
24.28% ↑
2019年 47,635
209.44% ↑
2018年 15,394
-80.76% ↓
2017年 80,000 -
2016年 80,000 -
2015年 80,000 -
2014年 80,000
-16.1% ↓
2013年 95,356
2.12% ↑
2012年 93,377
1.78% ↑
2011年 91,747
15.57% ↑
2010年 79,384
-50.84% ↓
2009年 161,479
-1.2% ↓
2008年 163,446
21.07% ↑
2007年 135,000
7.24% ↑
2006年 125,887
38.9% ↑
2005年 90,634
69.29% ↑
2004年 53,538
49.23% ↑
2003年 35,876
21.8% ↑
2002年 29,455
47.87% ↑
2001年 19,920
-50.94% ↓
2000年 40,607
885.85% ↑
1999年 4,119
-37.27% ↓
1998年 6,566
12.37% ↑
1997年 5,843
-11.15% ↓
1996年 6,576
1.95% ↑
1995年 6,450
11.88% ↑
1994年 5,765
4.27% ↑
1993年 5,529
9.79% ↑
1992年 5,036
4.68% ↑
1991年 4,811
13.01% ↑
1990年 4,257
4.93% ↑
1989年 4,057
10.18% ↑
1988年 3,682
15.64% ↑
1987年 3,184
118.83% ↑
1986年 1,455
-2.28% ↓
1985年 1,489
145.71% ↑
1984年 606
-9.82% ↓
1983年 672
-41.21% ↓
1982年 1,143
-46.11% ↓
1981年 2,121
114.03% ↑
1980年 991
-73.9% ↓
1979年 3,797
187.87% ↑
1978年 1,319
-67.07% ↓
1977年 4,005
-45.17% ↓
1976年 7,304
311.72% ↑
1975年 1,774
-53.79% ↓
1974年 3,839
318.19% ↑
1973年 918
-38.06% ↓
1972年 1,482
-70.9% ↓
1971年 5,093
27.33% ↑
1970年 4,000
33.33% ↑
1969年 3,000
20% ↑
1968年 2,500
25% ↑
1967年 2,000 -
1966年 2,000 -
1965年 2,000 -
1964年 2,000 -
1963年 2,000 -
1962年 2,000 -
1961年 2,000 -

サウジアラビアのトウモロコシ生産量の推移は、1960年代の非常に小規模な生産から始まりました。当時の年間生産量は一貫して2,000トン程度で、主に自家消費やごく限られた需要に対応していたと推定されます。しかし、1970年代から1980年代にかけては数千トン台の増加が見られるようになり、少しずつ農業部門への投資が進んだことが考えられます。

2000年代になると、サウジアラビアはトウモロコシ生産を飛躍的に拡大させました。この時期は国家として食糧自給率を高める目的で灌漑(かんがい)農業への巨額投資を行い、2008年には163,446トンという歴史的な最大生産量を達成しています。トウモロコシのような飼料作物は、食糧だけでなく畜産業の支えにもなるため、非常に重要視されました。しかし、それ以降、サウジアラビアのトウモロコシ生産量は減少に転じ、2010年代後半以降は特に80,000トン台の横ばい傾向、そして2018年以降の急落が目立ちます。例えば、2022年の生産量は58,500トンと、ピーク時(2008年)の約36%にまで落ち込んでいます。

これらの変化の背景には、いくつかの要因が挙げられます。まず、サウジアラビアは地理的に乾燥した砂漠気候が特徴であり、水資源が限られています。このため、灌漑に対する依存度が非常に高く、特に地下水の過剰利用が懸念されています。2000年代の急成長は地下水を多量に使用することで可能になりましたが、それが長期的な資源の枯渇を招きました。その結果、持続可能性を優先し、農業用水の利用を制限する政策に転換したことが生産量減少の一因となっています。

また、国内の農業分野への投資が減り、代わりに他国からの食糧輸入に依存する方向性が選ばれるようになったことも注目に値します。たとえば、トウモロコシはアメリカやブラジルの主要輸出作物であり、競争力のある輸入価格により国内生産のコストが相対的に高くなったことも影響しています。同時に、気候変動による干ばつや高温化の影響も、作物の安定した収量を妨げる一因となっています。

では、今後の課題と対策は何でしょうか?第一に、サウジアラビアは引き続き水資源の効率的な使用を目指すべきです。これは、農業技術の高度化や、水のリサイクル技術の導入を進めることで実現可能です。例えば、スマート農業技術を利用して栽培環境を最適化することや、塩害に強い品種を取り入れることで、水の消費量を抑えると同時に生産性を向上させることが期待されます。

第二に、地域間協力を強化し、食糧輸入の安定性を確保する必要があります。たとえば近隣の農業資源が豊富な国との戦略的パートナーシップを築くことで、緊急時の供給リスクを緩和する体制を整えることが考えられます。また、国内での生産においては、多様な作物に焦点を当てることで経済的依存を軽減する方向性も検討すべきでしょう。

さらに地政学的背景を踏まえると、サウジアラビアは中東地域の不安定な情勢に直面しています。他国からの輸入に過度に依存するリスクは、政治的緊張や貿易摩擦の影響で食糧供給が脅かされる可能性を孕んでいます。このため、輸入依存度を抑えながら、国内生産能力の強化を継続的に検討する必要があります。

トウモロコシ生産量の動向から見えるように、サウジアラビアは気候や資源など宗教的条件に制約される一方で、新しい技術や政策の導入によって課題克服の可能性があります。国際機関や研究機関との連携を強化し、適応性の高い政策を実行することで、トウモロコシを含む食糧安全保障の向上が期待されます。