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サウジアラビアの小麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、サウジアラビアの小麦生産量は1960年代には10万トン台で推移していましたが、1980年代には急激に増加し、1990年代初頭には400万トンを超えるまで発展しました。しかし、その後減少傾向が見られ、2020年代では再び50万トンから80万トン程度の水準に戻っています。この変動の背景には、政策転換、資源管理の見直し、気候条件の影響などが挙げられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 922,774
15.35% ↑
2022年 800,000
30.59% ↑
2021年 612,582
10.46% ↑
2020年 554,562
10.87% ↑
2019年 500,175
-14.71% ↓
2018年 586,413
-5.56% ↓
2017年 620,923
0.37% ↑
2016年 618,653
-10.83% ↓
2015年 693,776
-3.45% ↓
2014年 718,530
8.84% ↑
2013年 660,145
-22.72% ↓
2012年 854,256
-27.88% ↓
2011年 1,184,454
-12.22% ↓
2010年 1,349,389
17.09% ↑
2009年 1,152,447
-41.96% ↓
2008年 1,985,556
-22.38% ↓
2007年 2,558,000
-2.75% ↓
2006年 2,630,394
-0.68% ↓
2005年 2,648,472
-4.58% ↓
2004年 2,775,678
9.96% ↑
2003年 2,524,278
3.61% ↑
2002年 2,436,443
17.03% ↑
2001年 2,081,870
16.47% ↑
2000年 1,787,542
-12.63% ↓
1999年 2,046,000
17.99% ↑
1998年 1,734,000
-3.39% ↓
1997年 1,794,900
49.58% ↑
1996年 1,200,000
-27.18% ↓
1995年 1,647,956
-37.72% ↓
1994年 2,646,023
-22.86% ↓
1993年 3,429,980
-16.82% ↓
1992年 4,123,660
2.18% ↑
1991年 4,035,498
12.71% ↑
1990年 3,580,344
3.71% ↑
1989年 3,452,427
5.66% ↑
1988年 3,267,391
23.35% ↑
1987年 2,648,773
15.67% ↑
1986年 2,289,995
7.26% ↑
1985年 2,134,930
52.32% ↑
1984年 1,401,644
71.46% ↑
1983年 817,497
96.17% ↑
1982年 416,735
122.58% ↑
1981年 187,231
32.1% ↑
1980年 141,732
-5.78% ↓
1979年 150,426
25.43% ↑
1978年 119,928
-3.76% ↓
1977年 124,610
34.66% ↑
1976年 92,540
-29.91% ↓
1975年 132,038
-13.92% ↓
1974年 153,385
140.72% ↑
1973年 63,719
63.57% ↑
1972年 38,954
-7.05% ↓
1971年 41,908
-67.76% ↓
1970年 130,000 -
1969年 130,000
4% ↑
1968年 125,000
5.8% ↑
1967年 118,149
-20.57% ↓
1966年 148,750
0.57% ↑
1965年 147,900
13.77% ↑
1964年 130,000
-3.7% ↓
1963年 135,000
25% ↑
1962年 108,000
-13.6% ↓
1961年 125,000 -

サウジアラビアの小麦生産量の推移を見ると、1960年代には主に国内需要を補うための控えめな生産が行われていたことが分かります。この時期の年平均生産量はおおよそ12万トン前後であり、農業はまだそれほど盛んではありませんでした。しかし、1980年代に入ると生産量が急増し、1990年代初期には400万トン以上に達しています。この劇的な増加は、サウジ政府が食糧自給率向上を目的に農業補助金を拡充し、灌漑プロジェクトを大々的に実施したことが要因です。

特に1984年以降、生産量の上昇は顕著で、ピーク時の1992年には412万トン以上の生産を記録しています。この数値はベースラインであった1960年代の平均生産量の30倍以上に相当します。このような増産は、国民の食糧安全保障を強化することに成功しましたが、一方で、サウジアラビア特有の水資源不足という深刻な課題も浮き彫りになりました。同国は乾燥地域に位置し、降水量が非常に少ないため、地下水を多量に使用した農業が進められました。しかし、この方式は持続可能性に欠け、地下水の過剰な枯渇を引き起こす結果となってしまいました。

その結果、1990年代半ば以降、政府は政策の方向性を転換し、農業支援を縮小して小麦生産量を抑制しました。この方針転換により、小麦生産量は2000年代から次第に減少し、2020年代には50~80万トン程度の水準に到達しています。この改変は、本質的には水資源の保全と環境への配慮を重視した結果といえます。しかしながら、近年の800,000トン(2022年)という一時的な回復は、気候条件の好転や新技術導入がもたらした効率向上の影響とも考えられます。

この生産量推移における地政学的な背景も無視できません。中東地域は政治的緊張が高まりやすく、食糧自給の課題は戦略的な重要性を持ちます。さらに、COVID-19の影響で2020年以降、食料輸入に依存するリスクが高まったため、再び国内農業の見直しが進められている可能性もあります。近隣諸国と比較しても、食料自給率を強化している姿勢は注目すべき動向です。

これからの課題として、サウジアラビアは持続可能な農業モデルを構築する必要があります。乾燥地帯での農地の効率的利用を図るためには、精密農業技術や脱塩設備を活用した灌漑技術の導入が有効です。また、政府は地域間協力を通じて、小麦以外の農産物供給網を構築することで輸入依存度を下げるべきです。日本のように技術革新を活用し、少ない土地で高い収量を達成する農業モデルは、サウジアラビアでも参考になるでしょう。

結論として、サウジアラビアの小麦生産量推移は、政策や自然条件、地政学的状況の影響を受けて大きく変動してきました。これからは環境の持続性や食料安全保障のバランスを考慮して対応策を講じる必要があります。国際機関や他国との連携を強化し、食料安全保障を向上させるための取り組みを加速するべきです。これにより、中東全体の食糧問題解決にも寄与する可能性が広がるでしょう。