Skip to main content

サウジアラビアの小麦生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、サウジアラビアの小麦生産量は1960年代には10万トン台で推移していましたが、1980年代には急激に増加し、1990年代初頭には400万トンを超えるまで発展しました。しかし、その後減少傾向が見られ、2020年代では再び50万トンから80万トン程度の水準に戻っています。この変動の背景には、政策転換、資源管理の見直し、気候条件の影響などが挙げられます。

年度 生産量(トン)
2022年 800,000
2021年 612,582
2020年 554,562
2019年 500,175
2018年 586,413
2017年 620,923
2016年 618,653
2015年 693,776
2014年 718,530
2013年 660,145
2012年 854,256
2011年 1,184,454
2010年 1,349,389
2009年 1,152,447
2008年 1,985,556
2007年 2,558,000
2006年 2,630,394
2005年 2,648,472
2004年 2,775,678
2003年 2,524,278
2002年 2,436,443
2001年 2,081,870
2000年 1,787,542
1999年 2,046,000
1998年 1,734,000
1997年 1,794,900
1996年 1,200,000
1995年 1,647,956
1994年 2,646,023
1993年 3,429,980
1992年 4,123,660
1991年 4,035,498
1990年 3,580,344
1989年 3,452,427
1988年 3,267,391
1987年 2,648,773
1986年 2,289,995
1985年 2,134,930
1984年 1,401,644
1983年 817,497
1982年 416,735
1981年 187,231
1980年 141,732
1979年 150,426
1978年 119,928
1977年 124,610
1976年 92,540
1975年 132,038
1974年 153,385
1973年 63,719
1972年 38,954
1971年 41,908
1970年 130,000
1969年 130,000
1968年 125,000
1967年 118,149
1966年 148,750
1965年 147,900
1964年 130,000
1963年 135,000
1962年 108,000
1961年 125,000

サウジアラビアの小麦生産量の推移を見ると、1960年代には主に国内需要を補うための控えめな生産が行われていたことが分かります。この時期の年平均生産量はおおよそ12万トン前後であり、農業はまだそれほど盛んではありませんでした。しかし、1980年代に入ると生産量が急増し、1990年代初期には400万トン以上に達しています。この劇的な増加は、サウジ政府が食糧自給率向上を目的に農業補助金を拡充し、灌漑プロジェクトを大々的に実施したことが要因です。

特に1984年以降、生産量の上昇は顕著で、ピーク時の1992年には412万トン以上の生産を記録しています。この数値はベースラインであった1960年代の平均生産量の30倍以上に相当します。このような増産は、国民の食糧安全保障を強化することに成功しましたが、一方で、サウジアラビア特有の水資源不足という深刻な課題も浮き彫りになりました。同国は乾燥地域に位置し、降水量が非常に少ないため、地下水を多量に使用した農業が進められました。しかし、この方式は持続可能性に欠け、地下水の過剰な枯渇を引き起こす結果となってしまいました。

その結果、1990年代半ば以降、政府は政策の方向性を転換し、農業支援を縮小して小麦生産量を抑制しました。この方針転換により、小麦生産量は2000年代から次第に減少し、2020年代には50~80万トン程度の水準に到達しています。この改変は、本質的には水資源の保全と環境への配慮を重視した結果といえます。しかしながら、近年の800,000トン(2022年)という一時的な回復は、気候条件の好転や新技術導入がもたらした効率向上の影響とも考えられます。

この生産量推移における地政学的な背景も無視できません。中東地域は政治的緊張が高まりやすく、食糧自給の課題は戦略的な重要性を持ちます。さらに、COVID-19の影響で2020年以降、食料輸入に依存するリスクが高まったため、再び国内農業の見直しが進められている可能性もあります。近隣諸国と比較しても、食料自給率を強化している姿勢は注目すべき動向です。

これからの課題として、サウジアラビアは持続可能な農業モデルを構築する必要があります。乾燥地帯での農地の効率的利用を図るためには、精密農業技術や脱塩設備を活用した灌漑技術の導入が有効です。また、政府は地域間協力を通じて、小麦以外の農産物供給網を構築することで輸入依存度を下げるべきです。日本のように技術革新を活用し、少ない土地で高い収量を達成する農業モデルは、サウジアラビアでも参考になるでしょう。

結論として、サウジアラビアの小麦生産量推移は、政策や自然条件、地政学的状況の影響を受けて大きく変動してきました。これからは環境の持続性や食料安全保障のバランスを考慮して対応策を講じる必要があります。国際機関や他国との連携を強化し、食料安全保障を向上させるための取り組みを加速するべきです。これにより、中東全体の食糧問題解決にも寄与する可能性が広がるでしょう。