国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、サウジアラビアのヨーグルト生産量は、近年大きな変動を見せています。1990年代には年2,000~6,000トン前後であった生産量が、2000年代後半から大幅に増加し、2019年にはピークの192,657トンに達しました。2020年も順調に増加し205,191トンを記録しましたが、2021年には122,393トンと大幅に減少しています。このデータは、サウジアラビアのヨーグルト生産が成長期を経て多様な要因による変化を迎えていることを示しています。
サウジアラビアのヨーグルト生産量推移(1961年~2021年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2021年 | 122,393 |
-40.35% ↓
|
2020年 | 205,191 |
6.51% ↑
|
2019年 | 192,657 |
7.03% ↑
|
2018年 | 180,000 | - |
2017年 | 180,000 |
80% ↑
|
2016年 | 100,000 |
-45.95% ↓
|
2015年 | 185,000 |
32.14% ↑
|
2014年 | 140,000 |
16.67% ↑
|
2013年 | 120,000 |
66.67% ↑
|
2012年 | 72,000 |
80% ↑
|
2011年 | 40,000 | - |
2010年 | 40,000 |
12.36% ↑
|
2009年 | 35,600 |
5.45% ↑
|
2008年 | 33,760 |
-36.54% ↓
|
2007年 | 53,200 |
3.91% ↑
|
2006年 | 51,200 |
60% ↑
|
2005年 | 32,000 |
13.64% ↑
|
2004年 | 28,160 |
38.58% ↑
|
2003年 | 20,320 |
33.68% ↑
|
2002年 | 15,200 |
123.53% ↑
|
2001年 | 6,800 |
112.5% ↑
|
2000年 | 3,200 |
-27.27% ↓
|
1999年 | 4,400 |
120% ↑
|
1998年 | 2,000 |
-28.57% ↓
|
1997年 | 2,800 | - |
1996年 | 2,800 |
-12.5% ↓
|
1995年 | 3,200 |
33.33% ↑
|
1994年 | 2,400 |
20% ↑
|
1993年 | 2,000 |
-28.57% ↓
|
1992年 | 2,800 |
-53.33% ↓
|
1991年 | 6,000 |
3650% ↑
|
1990年 | 160 | - |
サウジアラビアはその特殊な地理的・文化的背景から、長年農業や食品生産において多くの課題と可能性を持つ国です。ヨーグルト生産という側面で見ると、1990年代には小規模なスタートであったものの、2000年代に入り急速に拡大しました。これは、国内需要の高まり、人口増加、さらには健康志向を背景とした乳製品市場の成長が大きな要因と考えられます。特に2006年以降、年間生産量が5万トンを超え、2014年から2019年にかけてはさらに急激な成長が見られました。この時、自国生産力の向上に加えて輸出も視野に入れた生産が行われた可能性があります。
2020年の生産量は過去最高の205,191トンを記録しましたが、翌2021年に至って急激に減少し、122,393トンとなりました。このような変動の背景を考えると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが供給チェーンや市場に与えた影響が一因である可能性が高いです。例として、原材料の輸入遅れや労働力不足、加えて輸出先の需要減少が挙げられます。さらに、国内の食文化が変化し、他の乳製品や代替食品との競争が激化したことも影響しているかもしれません。
一方で、他国の状況と比較すると特徴が浮かび上がります。例えば、フランスやドイツのようなヨーグルト生産が成熟している国々では、生産量の変動は少なく、安定した供給が可能です。中国やインドといった人口が多く、乳製品市場が急拡大している国々では国内需要の拡大が一貫した生産量増加に寄与しています。この点、サウジアラビアはどちらの象限にも完全には属しておらず、外部要因に左右されやすい生産構造が課題です。
ヨーグルト生産の成長を維持し、安定を図るためには、国内外を横断するいくつかの取り組みが必要です。まず、国内乳業の生産インフラをさらに強化し、輸入原材料に依存しすぎない持続可能な供給モデルを構築する必要があります。農業技術の向上や水資源の効率的な活用もここに含まれます。また、関連政策として、サウジアラビア周辺諸国との連携を強化し、近隣地域への輸出市場を探索することも重要です。さらに、健康志向を意識した新しい製品ラインアップを開発し、国内外での競争力を高めることも検討するべきです。
パンデミックや地政学的リスクが市場に与える影響を最小限に抑えるには、サプライチェーンの多様化が求められます。たとえば、冷蔵輸送技術の改良やスマート農業の導入は今後のサウジアラビアの競争力を大きく引き上げるでしょう。また、気候変動に直面する中、持続可能な生産への取り組みが国際社会での評価を高める手段としても期待されます。
総じて、サウジアラビアのヨーグルト生産は多くの可能性を秘めつつも課題が山積しています。今後、長期的な生産の安定化とともに、他国との協力や技術革新を通じてより強固な産業基盤を築くことが必要です。この努力が実現すれば、サウジアラビアは今後、乳製品市場において注目すべきプレーヤーとなる可能性を持っています。