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デンマークの大麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新のデータによれば、デンマークの大麦生産量は長期間にわたり変動を見せています。1960年代から1980年代まで増加傾向を示した後、2000年以降は全体的に穏やかに減少しています。直近のデータである2023年には2,541,600トンと、大きく減少しており、生産量としては過去60年以上で最小値を記録しました。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 2,541,600
-38.35% ↓
2022年 4,122,600
19.08% ↑
2021年 3,462,170
-16.7% ↓
2020年 4,156,500
14.68% ↑
2019年 3,624,560
5.21% ↑
2018年 3,445,170
-13.7% ↓
2017年 3,992,300
1.08% ↑
2016年 3,949,600
2.43% ↑
2015年 3,856,000
8.69% ↑
2014年 3,547,600
-10.19% ↓
2013年 3,949,900
-2.68% ↓
2012年 4,058,700
24.89% ↑
2011年 3,249,800
9.01% ↑
2010年 2,981,300
-12.15% ↓
2009年 3,393,800
-0.06% ↓
2008年 3,396,000
9.4% ↑
2007年 3,104,200
-5.08% ↓
2006年 3,270,300
-13.88% ↓
2005年 3,797,200
5.8% ↑
2004年 3,589,100
-4.94% ↓
2003年 3,775,593
-8.38% ↓
2002年 4,120,861
3.9% ↑
2001年 3,966,181
-0.34% ↓
2000年 3,979,794
8.3% ↑
1999年 3,674,621
3.07% ↑
1998年 3,565,308
-8.28% ↓
1997年 3,887,000
-1.67% ↓
1996年 3,953,000
1.4% ↑
1995年 3,898,400
13.13% ↑
1994年 3,446,065
2.26% ↑
1993年 3,370,000
13.33% ↑
1992年 2,973,674
-41.01% ↓
1991年 5,041,193
1.08% ↑
1990年 4,987,406
0.57% ↑
1989年 4,959,197
-8.48% ↓
1988年 5,418,649
26.25% ↑
1987年 4,291,901
-16.41% ↓
1986年 5,134,266
-2.22% ↓
1985年 5,250,946
-13.52% ↓
1984年 6,071,697
37.26% ↑
1983年 4,423,400
-30.42% ↓
1982年 6,357,063
5.18% ↑
1981年 6,043,748
-0.01% ↓
1980年 6,044,126
-9.27% ↓
1979年 6,661,614
5.73% ↑
1978年 6,300,842
2.58% ↑
1977年 6,142,458
27.94% ↑
1976年 4,801,007
-6.89% ↓
1975年 5,156,086
-13.59% ↓
1974年 5,967,212
9.85% ↑
1973年 5,431,928
-2.5% ↓
1972年 5,571,195
2.08% ↑
1971年 5,457,801
13.39% ↑
1970年 4,813,107
-8.41% ↓
1969年 5,255,194
4.12% ↑
1968年 5,047,017
15.17% ↑
1967年 4,382,339
5.38% ↑
1966年 4,158,559
0.79% ↑
1965年 4,125,804
5.8% ↑
1964年 3,899,590
14.73% ↑
1963年 3,398,857
3.01% ↑
1962年 3,299,515
17.5% ↑
1961年 2,808,149 -

デンマークは欧州における大麦生産の主要国の一つとされ、大麦は同国の農業にとってだけでなく、輸出産業や国内飼料供給の両面で重要な位置を占めてきました。FAOのデータは、1961年から2023年にかけての大麦生産量の推移を示していますが、この間に顕著な変化がいくつか観察されます。1960年代から1980年代中頃にかけて生産量は増加傾向にあり、特に1978年から1982年には年間6,000,000トンを超える生産量を記録しました。この増加傾向には、農業技術の革新や可耕地面積の有効活用が寄与したと考えられます。

一方で、1980年代後半から見られる生産量の変動、そして2000年代以降の全体的な減少傾向には複数の要因が影響している可能性があります。例えば、気候変動の影響に伴う収穫量の不安定化や、EU(欧州連合)の農業政策の転換、バイオ燃料需要の増加などの外的要因が挙げられます。気候変動に関しては、降雨量の変化や高温による収穫時期の遅延が生産に影響している可能性があります。また、EUの共通農業政策によって補助金や生産量の調整が行われ、多様な作物へ転作されるケースも増えています。

最近のデータでは、2020年と2022年は4,000,000トン以上の生産量を記録しましたが、2023年には2,541,600トンと急激に落ち込みました。この減少の背景には、2023年の異常気候や新型コロナの影響を受けた物流障害、さらにはウクライナ侵攻による地政学的リスクが関与している可能性があります。特にウクライナ侵攻は欧州全体の農業市場に波及的な影響を及ぼしており、大麦の需給バランスや価格にも影響が出ているとみられます。

こうした状況を踏まえると、将来的にデンマークの大麦生産を安定させ、国内外での供給を満たすためには、いくつかの政策的取り組みが求められます。まず、気候変動の影響に強い品種改良を加速することが重要です。また、農業灌漑技術の高度化を通じて、水資源の有効利用や突然の気象変動への適応力を高めることも有効な手段となるでしょう。

さらに、EUや周辺諸国と連携し、大麦の生産から流通に至るサプライチェーンの強化を図ることも必要です。特に、ウクライナ侵攻のような地政学的混乱が発生した場合には、特定の輸出入ルートに依存しすぎない多様な供給網を構築することで、安定的な流通を確保する必要があります。日本を含む世界各国において、デンマーク産大麦は飼料やビール醸造の原料として需要が高いため、これらの取り組みは国際市場の安定にも寄与します。

結論として、デンマークの大麦生産は過去に大きな成長を遂げましたが、近年の減少傾向は世界の農業に共通する課題を顕在化させています。今後は、気候変動対策や国際協力の強化、地政学的リスクを踏まえた供給網の安定化を図ることが、持続可能な農業の実現に向けた鍵となるでしょう。特にデジタル農業技術やAIの導入による精密農業の展開は、効率的かつ環境に優しい生産方法として注目されるべきです。