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デンマークのリンゴ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に更新した最新データによると、デンマークのリンゴ生産量は1961年以来大きく変動しており、一時は年間約12万トンを超える水準を記録していましたが、その後の50年以上で大幅に減少しています。1980年代からは特に急激な減少が見られ、2022年時点では41,030トンと、かつてのピーク時と比較して約3分の1の水準にとどまっています。生産量が減少している背景として、気候変動、農業の技術進歩、経済的な選択、また輸入果実との競争などが挙げられます。近年では微増傾向も見られ、今後の展開が注目されています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 24,450
-40.41% ↓
2022年 41,030
34.26% ↑
2021年 30,560
-23.64% ↓
2020年 40,020
58.75% ↑
2019年 25,210
-22.79% ↓
2018年 32,650
59.3% ↑
2017年 20,496
-43.8% ↓
2016年 36,470
2.31% ↑
2015年 35,647
0.78% ↑
2014年 35,371
13.43% ↑
2013年 31,184
66.48% ↑
2012年 18,731
-27.22% ↓
2011年 25,735
6.39% ↑
2010年 24,190
-12.08% ↓
2009年 27,513
-4.99% ↓
2008年 28,958
-9.51% ↓
2007年 32,000
0.7% ↑
2006年 31,779
-9.99% ↓
2005年 35,307 -
2004年 35,307
9.99% ↑
2003年 32,100
70.74% ↑
2002年 18,800
-6% ↓
2001年 20,000
-20% ↓
2000年 25,000
-21.88% ↓
1999年 32,000
10.34% ↑
1998年 29,000
-12.12% ↓
1997年 33,000
83.33% ↑
1996年 18,000
-40% ↓
1995年 30,000
-20% ↓
1994年 37,500
-53.13% ↓
1993年 80,000
-3.61% ↓
1992年 83,000
50.91% ↑
1991年 55,000
-21.43% ↓
1990年 70,000
34.62% ↑
1989年 52,000
15.56% ↑
1988年 45,000
69.86% ↑
1987年 26,492
-34.1% ↓
1986年 40,201
-10.87% ↓
1985年 45,105
-17.05% ↓
1984年 54,376
15.3% ↑
1983年 47,159
-20.69% ↓
1982年 59,462
37.34% ↑
1981年 43,296
-62.35% ↓
1980年 115,000
-8% ↓
1979年 125,000
4.17% ↑
1978年 120,000
-7.44% ↓
1977年 129,643
26.15% ↑
1976年 102,767
-19.92% ↓
1975年 128,328
23.23% ↑
1974年 104,134
-10.49% ↓
1973年 116,332
24.64% ↑
1972年 93,334
-19.16% ↓
1971年 115,457
-4.28% ↓
1970年 120,625
-4.13% ↓
1969年 125,816
2.78% ↑
1968年 122,416
0.07% ↑
1967年 122,336
9.33% ↑
1966年 111,893
-10.77% ↓
1965年 125,400
2.27% ↑
1964年 122,615
2.35% ↑
1963年 119,798
10.62% ↑
1962年 108,295
-4.41% ↓
1961年 113,295 -

デンマークにおけるリンゴ生産量の推移を見ると、1960年代は年間生産量が10万トンを超え、時には12万トンを超える安定的な生産が行われていました。しかし、1970年代中頃から生産量は減少傾向に入り、1980年以降にはさらに顕著になり、大きな変動を伴うようになっています。1980年代半ばの生産量は平均的に5万トンを下回り、1990年代にはさらなる低下が進みました。その後、2000年代以降には安定は見せるものの、年間2万~4万トン程度にとどまっています。2022年には41,030トンと近年では比較的高い数値を記録しましたが、20世紀中頃のような大規模な生産には程遠いという現状です。

この長期的な減少の背景には、いくつかの地政学的および経済的要因があります。1960年代と比べると、デンマーク国内の消費者において輸入果実の消費が増えており、安価で多様な品種が市場に供給されるようになりました。この状況は、国内の生産者にとって強い競争環境を生み出しました。特に、欧州連合(EU)内での貿易の自由化が進み、ドイツやポーランドなどからのリンゴ輸入が増加したことが、デンマーク国内の生産量の減少の一因となっています。

更に気候変動も無視できません。デンマークは近年、気候温暖化の影響を受けており、異常気象や季節の変則が農業生産に影響を与えています。リンゴ栽培には一定の気候条件が求められますが、例えば霜害や降雨不足などが作物に悪影響を及ぼしている可能性があります。また、都市部の拡大や農業政策の転換も、リンゴを含む果樹栽培エリアの減少につながっています。

デンマーク国内での生産量の減少は、地域農業だけでなく経済的や環境的にいくつかの課題を引き起こしています。特に、食料の持続可能性という視点では、輸入依存が高まるリスクが指摘されます。この点で重要なのは、小規模な生産者への支援が欠かせないという点です。例えばEU内ではオランダやベルギーが精密農業(先端技術を活用した効率的な農業形態)を活用して生産を安定させています。デンマークもこれらの技術の導入を加速させることが課題解決の糸口となるでしょう。

未来を見据えたデンマークのリンゴ産業の再生には、いくつかの具体的な提案が考えられます。第一に、気候変動に適応した新品種の開発が重要です。例えば、耐寒性や高温耐性に優れたリンゴの品種を研究し、デンマークの気候条件に適応させることが求められます。第二に、農業部門への投資を増やし、自動化技術やIoTを活用した農業の効率化を推進することで、生産コストを引き下げつつ、収量を安定させることが可能です。第三に、消費者教育も重要です。地産地消を進めるキャンペーンや、デンマーク産リンゴのブランド化を促進することで、国内市場での需要を増やす取り組みが効果的でしょう。また、国際市場への輸出拡大も同時に視野に入れるべきです。

長期的には、農地の利用計画を立て直し、農業環境を向上させることも避けては通れません。都市化や他の産業との土地競争が進む中で、農業用地を保護する政策が求められます。さらに、国際協力を通じて気候変動への対策を進めることも、農業全体の持続可能性に寄与するでしょう。

データからわかる重要な点は、デンマークのリンゴ生産量は環境や社会の変化に大きな影響を受けやすいということです。この現状を踏まえ、国および国際機関が適切な支援を行うことで、デンマークのリンゴ産業が持続可能な形で成長を遂げることが期待されます。