デンマークの牛飼養数推移（1961年～2023年）

出典： Food and Agriculture Organization「国際連合食糧農業機関」

デンマークの牛飼養数は、1961年に3,593,095頭というピークを記録しましたが、それ以降は全体的に減少傾向を示しています。2022年には1,466,000頭に減少し、ピーク時の約41%となっています。この変化は農業の効率化、酪農業界の構造変化、EUの農業政策および環境規制など、複数の要因が影響を及ぼしています。

年度	飼養数(頭)	増減率
2023年	1,434,870	-2.12% ↓
2022年	1,466,000	-0.95% ↓
2021年	1,480,000	-1.33% ↓
2020年	1,500,000	-
2019年	1,500,000	-1.96% ↓
2018年	1,530,000	-1% ↓
2017年	1,545,417	-1.46% ↓
2016年	1,568,288	1.05% ↑
2015年	1,551,948	-0.74% ↓
2014年	1,563,535	-3.17% ↓
2013年	1,614,644	0.49% ↑
2012年	1,606,826	2.48% ↑
2011年	1,567,971	-0.2% ↓
2010年	1,571,050	1.99% ↑
2009年	1,540,340	-1.54% ↓
2008年	1,564,393	-0.12% ↓
2007年	1,566,218	2.05% ↑
2006年	1,534,763	-2.25% ↓
2005年	1,570,085	-4.6% ↓
2004年	1,645,764	-4.56% ↓
2003年	1,724,409	-3.99% ↓
2002年	1,796,118	-5.81% ↓
2001年	1,906,911	2.09% ↑
2000年	1,867,937	-1.01% ↓
1999年	1,887,057	-4.57% ↓
1998年	1,977,367	-1.34% ↓
1997年	2,004,212	-4.25% ↓
1996年	2,093,256	0.12% ↑
1995年	2,090,733	-0.67% ↓
1994年	2,104,904	-4.1% ↓
1993年	2,195,000	0.23% ↑
1992年	2,190,000	-1.44% ↓
1991年	2,222,000	-0.76% ↓
1990年	2,239,000	0.81% ↑
1989年	2,221,000	-1.81% ↓
1988年	2,262,000	-3.79% ↓
1987年	2,351,000	-5.77% ↓
1986年	2,495,000	-4.7% ↓
1985年	2,618,000	-4.8% ↓
1984年	2,750,000	-3.58% ↓
1983年	2,852,000	-0.35% ↓
1982年	2,862,000	-1.78% ↓
1981年	2,914,000	-1.59% ↓
1980年	2,961,000	-2.45% ↓
1979年	3,035,396	-1.49% ↓
1978年	3,081,306	-0.56% ↓
1977年	3,098,735	0.11% ↑
1976年	3,095,404	1.15% ↑
1975年	3,060,152	-1.28% ↓
1974年	3,099,779	4.84% ↑
1973年	2,956,546	6.39% ↑
1972年	2,778,855	2.06% ↑
1971年	2,722,871	-4.2% ↓
1970年	2,842,271	-5.25% ↓
1969年	2,999,694	-4.49% ↓
1968年	3,140,861	-4.29% ↓
1967年	3,281,665	-2.73% ↓
1966年	3,373,631	0.84% ↑
1965年	3,345,396	2.1% ↑
1964年	3,276,525	-2% ↓
1963年	3,343,430	-4.59% ↓
1962年	3,504,207	-2.47% ↓
1961年	3,593,095	-

デンマークは伝統的に農業が主要産業の一つであり、特に酪農業や乳製品生産で知られた国です。しかし、牛飼養数の推移を見ると、1961年の3,593,095頭をピークに、徐々に減少していることがわかります。この減少は、農業の効率化や技術革新と深い関係があります。例えば、一頭あたりの乳量が向上し、少ない頭数で乳製品の需要を賄えるようになったことが挙げられます。また、農場の集約化が進む中、小規模農家が廃業し、全体の飼養数が減少する傾向も見られました。

一方で、EU内の農業政策や環境規制も重要な要因です。デンマークは欧州連合（EU）の一員として、農業の持続可能性や環境保護を優先する政策を採用しています。そのため、二酸化炭素の排出制限や水質汚染防止のための規制が強化され、一部の農家にとって牛の飼養を縮小することが経済的合理性を持つ状況が生じています。これは人口密度の高い地域で特に影響を及ぼしており、環境負荷の軽減と生産性向上の両立に向けた課題をデンマークの農業界に課しています。

さらに、世界的な気候変動や食糧生産のあり方の変化もデンマークの牛飼養数に影響を与えました。気候変動への対応として温室効果ガスの排出を削減することが優先事項となり、畜産業においても同様の流れが見られました。また、近年では植物由来のタンパク源が注目される中、牛肉や乳製品の需要がやや減少していることも要因の一つです。

将来の課題として、デンマークが持続可能な農業を推進する中で、どのように畜産業を位置付けるかが重要です。規制強化により飼養数がさらに減少する一方で、残存する農家をどう支援し革新的な技術を導入するかが課題となります。例えば、家畜からの排出量を削減する技術への助成金や、環境に配慮しながら生産を拡大するための研究開発が挙げられます。

他国と比較すると、アメリカなどでは依然として大規模な牛飼養牧場が主流であり、効率生産が優先されています。また、インドなどでは牛は農業作業や宗教的な面から重要な役割を果たしており、飼養数の減少はほとんど見られません。一方で、隣国ドイツやフランスでもEU規制の影響を受け、デンマークと同様に近代化と環境保護の狭間で対応を模索しています。

最終的にデンマークが達成するべきゴールとして、環境に優しい農業のモデルケースを示すことがあります。そのためには、国際的な協力も重要となり、例えば地政学的影響を考慮し、他国との環境技術共有を促進したり、富裕国が果たすべき役割を明確にすることが必要です。データが示す減少傾向を単純な衰退と捉えるのではなく、むしろ社会・環境のニーズに対応した進化と理解することが、重要な視点となるでしょう。