Skip to main content

デンマークの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、デンマークの羊肉生産量は1960年代から2023年にかけて歴史的な変動を続けてきました。特に1960年代後半の急激な増加、1970年代から1980年代前半にかけての長期的な減少、その後の1990年代から2000年代初頭の回復、そして近年の徐々に減少する傾向が特徴的です。最新の2023年データでは生産量は1,210トンとなり、これは全体的なピークである1968年の3,000トンに比較すると約60%以下の水準に戻っています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,210
-0.82% ↓
2022年 1,220
-6.15% ↓
2021年 1,300 -
2020年 1,300
-18.75% ↓
2019年 1,600 -
2018年 1,600
0.95% ↑
2017年 1,585
-0.56% ↓
2016年 1,594
-8.86% ↓
2015年 1,749
5.23% ↑
2014年 1,662
8.27% ↑
2013年 1,535
13.87% ↑
2012年 1,348
-17.5% ↓
2011年 1,634
-5.33% ↓
2010年 1,726
-5.53% ↓
2009年 1,827
4.04% ↑
2008年 1,756
-1.51% ↓
2007年 1,783
2.29% ↑
2006年 1,743
2.95% ↑
2005年 1,693
0.18% ↑
2004年 1,690
12.67% ↑
2003年 1,500
0.33% ↑
2002年 1,495
-5.8% ↓
2001年 1,587
9.22% ↑
2000年 1,453
-2.02% ↓
1999年 1,483
-1.13% ↓
1998年 1,500
-0.53% ↓
1997年 1,508
-8.16% ↓
1996年 1,642
9.47% ↑
1995年 1,500
-11.76% ↓
1994年 1,700
-15% ↓
1993年 2,000
5.26% ↑
1992年 1,900
6.32% ↑
1991年 1,787
22.06% ↑
1990年 1,464
24.91% ↑
1989年 1,172
8.12% ↑
1988年 1,084
18.47% ↑
1987年 915
12.68% ↑
1986年 812
22.47% ↑
1985年 663
17.55% ↑
1984年 564
27.89% ↑
1983年 441
5.5% ↑
1982年 418
15.15% ↑
1981年 363
-13.57% ↓
1980年 420
6.33% ↑
1979年 395
-4.36% ↓
1978年 413
-3.05% ↓
1977年 426
-4.48% ↓
1976年 446
-15.05% ↓
1975年 525
-12.5% ↓
1974年 600
-33.33% ↓
1973年 900
-18.18% ↓
1972年 1,100
-21.43% ↓
1971年 1,400
-30% ↓
1970年 2,000
-20% ↓
1969年 2,500
-16.67% ↓
1968年 3,000
11.11% ↑
1967年 2,700
42.11% ↑
1966年 1,900
35.71% ↑
1965年 1,400
16.67% ↑
1964年 1,200
9.09% ↑
1963年 1,100 -
1962年 1,100
-8.33% ↓
1961年 1,200 -

デンマークの羊肉生産量の推移からは、明確な4つの主要な変動期を読み取ることができます。まず1960年代は、生産量が急増し1966年には1,900トン、ピークの1968年には3,000トンに達しました。この期間の増加は、産業化の進展や国内外の需要の高まりといった要因が影響した可能性が高いです。しかし、1969年以降、生産量は急速に低下し、1970年代にはわずか395トンまで減少しています。この劇的な減少は、競合する農畜産物との市場シェア争い、家畜生産の効率化の選択、土地利用の変化などが原因として考えられます。

1980年代以降は一時的に持ち直し、1990年代には再び生産量が2,000トン近くまで回復しました。この回復期は、羊肉の高付加価値化や欧州における高品質製品への需要増加に呼応した結果と見なすことができます。しかしその後も継続的な成長は見られず、2000年代以降の生産量は一定の範囲内で推移しており、特に2012年以降は再び減少傾向にあります。直近の2023年には1,210トンまで落ち込み、直近数年間では低迷が続いています。

データの示す現状から、デンマークの羊肉生産にはいくつかの課題が浮き彫りになっています。その一つは、国内市場での消費減少と輸出競争力の低下です。デンマークは、肉質や環境負荷の低減といった品質面で一定の評価を得ているものの、オーストラリアやニュージーランドといった主要羊肉輸出国と比較すると、生産コストや規模でやや不利な立場にあります。さらに、環境政策の強化に伴い家畜部門に対する政府や市民からの規制や圧力も影響を及ぼしています。

地政学的リスクや自然災害の影響は少ないものの、近年の気候変動による農業生産環境の変化が羊の飼育効率や生産量に影響を与えてきたと考えられます。特に乾燥化やエサ供給不足のリスクは、今後の生産持続性を脅かす要因として挙げられます。

こうした状況を踏まえ、デンマークの羊肉生産を持続可能な形で成長させるためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、国内外の高価値市場をターゲットに生産品質のさらなる向上を図るべきです。羊肉のブランド化やグリーン認証取得などを通じて、付加価値を高めた製品を提供することで、競争力を向上させることができます。また、都市部や国外市場では高品質・持続可能な食材への需要が増加していることから、これをマーケティングに活用するのも有効です。

次に、羊肉生産の効率化と環境負荷軽減を同時に進める技術革新が必要です。家畜の飼育技術や種の改良、デジタル農業手法の導入によって、生産の効率性を向上させながら環境に優しい方法を確立することが求められます。さらに、デンマーク独自の農業政策の強化が必要でしょう。特に補助金制度を活用し、小規模生産者の競争力を支援しながら、若年層の就業促進や知識提供を行い、後継者不足の問題にも対応すべきです。

結論として、デンマークの羊肉生産の推移は、国内の経済および環境政策、そして世界市場の動向に密接に結びついてきました。現在の低迷を打開するためには、生産効率の向上に加えて市場の多角化や需要促進を積極的に進める必要があります。また、政策や業界間の協力を深め、家畜生産における脱炭素化や持続可能性を重視するアプローチを強化することが、デンマークの将来にわたる羊肉産業の繁栄につながるでしょう。