Skip to main content

デンマークの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、デンマークにおける1961年から2023年までの鶏卵生産量は、全体的には減少と増加を繰り返しつつ、長期的には安定的な水準に近づいています。1961年には126,600トンと高い生産量を記録したものの、1970年代以降は減少傾向が見られました。その後、1990年代にかけて回復し、2000年代以降はおおむね70,000~90,000トンの範囲で推移しています。2023年の生産量は84,000トンと、直近のピークである2020年の89,000トンと比較するとやや減少しました。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 84,000
-4.55% ↓
2022年 88,000
-5.38% ↓
2021年 93,000
4.49% ↑
2020年 89,000
8.54% ↑
2019年 82,000
6.49% ↑
2018年 77,000
-12.4% ↓
2017年 87,899
1.96% ↑
2016年 86,211
2.51% ↑
2015年 84,102
2.49% ↑
2014年 82,056
0.03% ↑
2013年 82,029
2.31% ↑
2012年 80,179
2.03% ↑
2011年 78,584
2.89% ↑
2010年 76,376
3.29% ↑
2009年 73,942
-8.71% ↓
2008年 81,000
3.85% ↑
2007年 78,000
1.3% ↑
2006年 77,000
-3.51% ↓
2005年 79,800
-3.86% ↓
2004年 83,000
2.47% ↑
2003年 81,000
-0.74% ↓
2002年 81,600
1.13% ↑
2001年 80,687
8.6% ↑
2000年 74,300
-4.99% ↓
1999年 78,200
-6.79% ↓
1998年 83,900
-1.41% ↓
1997年 85,100
-3.08% ↓
1996年 87,800
-7.38% ↓
1995年 94,800
5.22% ↑
1994年 90,100
3.44% ↑
1993年 87,100
-1.25% ↓
1992年 88,200
5% ↑
1991年 84,000
1.94% ↑
1990年 82,400
0.49% ↑
1989年 82,000
3.27% ↑
1988年 79,400
3.79% ↑
1987年 76,500
-5.9% ↓
1986年 81,300
2.01% ↑
1985年 79,700
-0.5% ↓
1984年 80,100
-0.62% ↓
1983年 80,600
-2.42% ↓
1982年 82,600
4.97% ↑
1981年 78,690
3.27% ↑
1980年 76,200
-0.39% ↓
1979年 76,500
8.05% ↑
1978年 70,800
3.81% ↑
1977年 68,200
-3.67% ↓
1976年 70,800
-5.73% ↓
1975年 75,100
2.6% ↑
1974年 73,200
0.24% ↑
1973年 73,022
-0.63% ↓
1972年 73,486
-1.93% ↓
1971年 74,936
-13% ↓
1970年 86,130
-4.09% ↓
1969年 89,800
4.78% ↑
1968年 85,700
-3.6% ↓
1967年 88,900
-1.22% ↓
1966年 90,000 -
1965年 90,000
-9.82% ↓
1964年 99,800
-6.55% ↓
1963年 106,800
-5.65% ↓
1962年 113,200
-10.58% ↓
1961年 126,600 -

デンマークの鶏卵生産量推移からは、食料需要や市場環境の変化が国内の鶏卵生産に大きな影響を及ぼしていることが伺えます。1960年代には生産量が年間100,000トンを超える高水準を保っていましたが、1960年代後半から1970年代にかけては明らかな下降傾向があり、1971年には74,936トンにまで減少しました。この減少の背景には、農業技術や消費者の需要構造の変化に加え、当時の地政学的状況である食料価格の変動が影響していた可能性があります。

1970年代後半から1980年代にかけては再び上昇傾向が見られ、1990年代には90,000トンを超える生産量が続きました。この回復基調は、デンマークの酪農・畜産業の効率化やEU加盟による市場統合が貢献したと考えられます。特に、国内外の飼料価格の安定化と効率的な家畜管理システムの導入が重要な役割を果たしました。ただし2000年以降、再び生産量が波状的に減少と増加を繰り返す状況に戻り、70,000~90,000トンの範囲内を中心に推移しています。

2023年の生産量は84,000トンとなり、直近の2020年のピークである89,000トンからやや減少しました。この変化には、2020年以降に世界的に広がった新型コロナウイルス感染症が影響している可能性があります。特に、供給チェーンの混乱や飼料価格の高騰が畜産農家に負担を与えたことが、生産量の抑制を引き起こした可能性が高いです。また、環境負荷の削減を目指した政策の影響も見逃せません。デンマークは環境先進国として知られ、畜産業の持続可能性を重視してきたため、生産量の調整が行われているとも推測されます。

一方で、デンマークの人口増加が緩やかであることや、鶏卵以外の代替タンパク質商品が市場で普及していることも、国内需要に影響を与えている可能性があります。他国の状況と比較すると、例えば中国やインドなどの人口が多い国々では鶏卵生産量が増加傾向にある一方、デンマークのような先進諸国では市場の成熟化が背景にあり、安定した生産水準が維持される傾向があります。

今後考えられる課題としては、国際的な気候変動や地政学的リスク(例えば飼料輸入経路の変化やエネルギー価格の上昇)が挙げられます。特にウクライナ危機や世界的なエネルギー資源の争奪が飼料コストの上昇を招いており、これが持続可能な鶏卵生産を困難にする可能性があります。また、今後も新型感染症や自然災害が発生した場合、サプライチェーンの回復力を強化する必要があります。

これに対し、デンマークが取るべき具体的な対策としては、環境と経済の両立を目指した持続可能な生産モデルの推進や、再生可能エネルギーを活用した農業運営の強化が挙げられます。また、近隣諸国やEUと連携し、飼料供給の安定化や技術共有を図ることが有効です。さらに、国内外の消費者に対する付加価値型の鶏卵(オーガニック卵や低炭素排出の卵など)のプロモーションを強化し、国際市場での競争力を高めることも重要です。

結論として、データが示すデンマークの鶏卵生産は、長期的な安定基調を保ちながらも、技術革新や市場動向、地政学的リスクに依存した柔軟な対応が求められる分野であるといえます。政府および農業団体、さらには国際社会との協力を通じて、将来的にも持続可能かつ競争力のある生産体制を構築していくことが必要です。