FAO(国際連合食糧農業機関)の最新データによれば、デンマークのトマト生産量は、1961年から2022年までの間で大きな変動を見せています。1960年代には20,000トン前後で安定していた生産量は、1980年代以降徐々に減少傾向となり、2021年から2022年では約11,390トンまで落ち込んでいます。特に、2000年代からの継続的な低下が顕著で、ピーク時の1976年(22,405トン)と比べると約半分にまで減少しています。
デンマークのトマト生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 11,390 |
2021年 | 11,390 |
2020年 | 11,760 |
2019年 | 11,760 |
2018年 | 11,760 |
2017年 | 11,759 |
2016年 | 10,575 |
2015年 | 10,580 |
2014年 | 12,750 |
2013年 | 12,500 |
2012年 | 13,270 |
2011年 | 13,241 |
2010年 | 15,000 |
2009年 | 17,500 |
2008年 | 15,823 |
2007年 | 17,500 |
2006年 | 17,639 |
2005年 | 17,639 |
2004年 | 20,680 |
2003年 | 19,700 |
2002年 | 21,238 |
2001年 | 22,000 |
2000年 | 21,200 |
1999年 | 21,200 |
1998年 | 18,800 |
1997年 | 18,800 |
1996年 | 18,800 |
1995年 | 20,900 |
1994年 | 19,900 |
1993年 | 14,700 |
1992年 | 20,000 |
1991年 | 17,500 |
1990年 | 17,500 |
1989年 | 17,000 |
1988年 | 16,400 |
1987年 | 15,165 |
1986年 | 16,417 |
1985年 | 16,696 |
1984年 | 17,387 |
1983年 | 16,128 |
1982年 | 16,678 |
1981年 | 16,576 |
1980年 | 14,938 |
1979年 | 17,041 |
1978年 | 18,321 |
1977年 | 19,126 |
1976年 | 22,405 |
1975年 | 21,165 |
1974年 | 20,220 |
1973年 | 19,989 |
1972年 | 19,216 |
1971年 | 20,522 |
1970年 | 20,604 |
1969年 | 21,133 |
1968年 | 20,757 |
1967年 | 21,301 |
1966年 | 20,606 |
1965年 | 21,199 |
1964年 | 19,551 |
1963年 | 18,375 |
1962年 | 17,950 |
1961年 | 17,400 |
デンマークのトマト生産量は、20世紀の半ば以降、若干の増減を見せつつも全体として安定した生産基調が続いていました。例えば、1961年から1970年代前半にかけては年間およそ20,000トン前後の生産量を維持しており、この時期は国内での需要と供給バランスが比較的安定していたと考えられます。しかし、1977年以降、特に1980年代以降には持続的な生産量の減少が見られ、21世紀に入るとその傾向はさらに顕著となっています。
この背景には、デンマークの農業政策や、トマト市場の需給構造の変化があると考えられます。一つ目の要因として、デンマークは比較的小規模で集約的な農業が主流となっており、グローバルな競争において他国の生産とのコスト競争力が課題になったことが挙げられます。特に、スペインやイタリア、オランダといったヨーロッパの主要トマト生産国は、温暖な気候条件や大規模な施設栽培技術で、低コストかつ高品質なトマトを市場に供給しており、これがデンマーク国内の生産を圧迫している可能性があります。
また、デンマーク国内の農業の中でトマトが占める優先順位についても低下しているかもしれません。国内での農業資源が他の高付加価値農産物や酪農業に振り向けられる中で、トマト生産に注がれる資源が減少したことが推測されます。他のヨーロッパ諸国と比較すると、デンマークは北ヨーロッパの冷涼な気候により、天然条件下でのトマト栽培の難易度が高いという地理的制約も抱えています。
さらに、近年では気候変動の影響やエネルギーコストの上昇も、小規模な施設栽培に影響を与えています。トマトのハウス栽培はエネルギーコストが重要なファクターとなるため、これが生産コストの増大を引き起こし、利益率の低下につながります。特に2020年以降のエネルギー価格の変動は、農業全般に大きな圧力を与えている状況です。
一方で、デンマークが掲げる持続可能性戦略の観点から見ると、地元産の農産物への関心が高まっており、その中でトマトがどのような位置づけを果たすのかが課題といえます。輸入に依存する安価なトマト需要と、環境負荷の少ない地元生産のトマトをどのように共存させるかが今後の鍵となるでしょう。
これに対する具体的な提言としては、トマト栽培におけるさらなる省エネルギー技術の導入や、高付加価値品種の開発を推進することが重要です。また、地産地消を奨励する政策や、トマト生産者と流通業者が協力して環境に配慮したブランド戦略を構築することも、有効な方向性となるでしょう。さらに、国際協力を通じて持続可能な農業技術の革新に投資することも求められます。
結論として、デンマークにおけるトマト生産の減少は単なる国内問題にとどまらず、気候変動やグローバルな市場動向に起因する多面的な課題が関係しています。これを受け、持続可能な栽培技術の開発や国内外における戦略的パートナーシップの強化が、デンマークの農業全体のレジリエンスを高める鍵となるでしょう。