国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年の最新データによると、デンマークのイチゴ生産量は1961年の6,100トンから1968年に15,121トンと最盛期を迎えた後、1990年代以降に大幅な減少を経験しました。近年では5,000~7,000トンの間で安定して推移しており、2022年の生産量は5,960トンとなっています。この減少傾向には、農業構造の変化や環境要因が影響していると考えられます。
デンマークのイチゴ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 5,960 |
2021年 | 6,740 |
2020年 | 6,070 |
2019年 | 6,310 |
2018年 | 6,510 |
2017年 | 6,742 |
2016年 | 7,870 |
2015年 | 8,205 |
2014年 | 7,531 |
2013年 | 6,200 |
2012年 | 6,700 |
2011年 | 7,090 |
2010年 | 5,390 |
2009年 | 5,931 |
2008年 | 6,200 |
2007年 | 6,000 |
2006年 | 6,070 |
2005年 | 5,781 |
2004年 | 4,625 |
2003年 | 4,105 |
2002年 | 3,627 |
2001年 | 3,500 |
2000年 | 3,300 |
1999年 | 3,000 |
1998年 | 3,100 |
1997年 | 3,362 |
1996年 | 3,666 |
1995年 | 4,000 |
1994年 | 6,500 |
1993年 | 9,000 |
1992年 | 10,000 |
1991年 | 9,431 |
1990年 | 9,000 |
1989年 | 8,000 |
1988年 | 8,500 |
1987年 | 6,500 |
1986年 | 6,908 |
1985年 | 8,337 |
1984年 | 10,224 |
1983年 | 9,490 |
1982年 | 10,444 |
1981年 | 8,869 |
1980年 | 7,893 |
1979年 | 8,002 |
1978年 | 7,775 |
1977年 | 8,756 |
1976年 | 8,637 |
1975年 | 9,084 |
1974年 | 9,601 |
1973年 | 10,535 |
1972年 | 11,873 |
1971年 | 10,149 |
1970年 | 10,692 |
1969年 | 13,166 |
1968年 | 15,121 |
1967年 | 13,859 |
1966年 | 9,575 |
1965年 | 10,774 |
1964年 | 11,346 |
1963年 | 9,065 |
1962年 | 8,900 |
1961年 | 6,100 |
デンマークのイチゴ生産量は1960年代には強い成長を見せていました。1961年の6,100トンから1968年には15,121トンと約2.5倍に増加しました。この期間の拡大は、農業技術の進歩や市場需要の拡大によるものと推察されます。しかし、その後は徐々に生産量が減少し、1996年以降は生産量が3,000トンクラスに落ち込みました。2000年代に多少持ち直したものの、持続的な回復は見られず、2022年の生産量は5,960トンでピーク時の約40%にとどまっています。
この減少にはいくつかの背景があります。第一に、農業の効率化を図るため、デンマーク国内でイチゴ以外の高収益作物や酪農業への重点シフトが起こりました。加えて、ヨーロッパ内の競争激化や輸入品の増加によって、デンマーク産イチゴの国内市場シェアが縮小したことも一因として挙げられます。また、気候変動の影響も否めません。デンマークを含む北欧地域では高温や異常気象の発生頻度が増加しており、イチゴ栽培に適した条件が揺らいでいます。
データを見ると、2005年以降は5,000~7,000トンの間で生産量が一定水準を維持していますが、これは国が特定品目への補助政策を再導入したことと、バイオテクノロジーの利用による生産性向上の効果と考えられます。それでも最大の課題は、価格競争力の低下と欧州市場に占めるデンマーク産イチゴのブランド力の弱まりです。他の国、特にポーランドやスペインのような低コスト生産国と比較して、デンマークの生産コストは依然として高いままとなっています。
将来的な課題として、持続可能な農業の推進が重要です。これには、イチゴ生産におけるスマート農業技術の広範な導入と、品種改良のための研究資金の拡充が挙げられます。また、地元産の新鮮なイチゴを求める消費者層に向けたマーケティング戦略の再構築も不可欠です。たとえば、地元レストランや小規模農家とのネットワークを広げることで、利便性の高い販売チャネルを確立することが考えられます。
さらに、地政学的な観点からも留意が必要です。現在のEU内では、輸入関税や貿易取引の規律が農産物市場を左右する重要な要素となっています。このため、デンマークはEU内の政策調整会議や農業補助金枠組みに積極的に関与することで、自国産品の価格競争力を高めるべきです。同時に、気候変動への具体的な対策としては、天候変動に強い新しいイチゴ品種の開発や、水資源を最適化する灌漑技術の導入が効果的でしょう。
結論として、近年におけるデンマークのイチゴ生産量の安定は部分的には政策成功を示していますが、過去のピーク水準に戻ることは難しい状況です。今後は国内外の競争構造を見据え、持続可能性と付加価値を重視した取り組みを進める必要があります。この目標を達成するためには、地元の農家や研究者、政策立案者が連携を深め、長期的な視点に立った戦略を共有することが欠かせません。