FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、ウズベキスタンにおける羊肉生産量は長期的に大きな変動を見せています。特に2000年代後半以降は急激な増加が見られ、2023年には243,500トンと過去最大を記録しました。これにより、ウズベキスタンは地域内外で羊肉供給の重要な生産国としてその地位を強めています。
ウズベキスタンの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 243,500 |
54.59% ↑
|
2022年 | 157,510 |
2.52% ↑
|
2021年 | 153,633 |
3.59% ↑
|
2020年 | 148,313 |
-0.51% ↓
|
2019年 | 149,080 |
-14.86% ↓
|
2018年 | 175,110 |
-7.59% ↓
|
2017年 | 189,495 |
-7.05% ↓
|
2016年 | 203,860 |
6.62% ↑
|
2015年 | 191,200 |
8.02% ↑
|
2014年 | 177,000 |
6.63% ↑
|
2013年 | 166,000 |
10.67% ↑
|
2012年 | 150,000 |
8.7% ↑
|
2011年 | 138,000 |
38% ↑
|
2010年 | 100,000 |
7.07% ↑
|
2009年 | 93,400 |
6.14% ↑
|
2008年 | 88,000 |
6.02% ↑
|
2007年 | 83,000 |
-0.7% ↓
|
2006年 | 83,587 |
13.57% ↑
|
2005年 | 73,600 |
5.75% ↑
|
2004年 | 69,600 |
-6.07% ↓
|
2003年 | 74,100 |
4.22% ↑
|
2002年 | 71,100 |
-5.2% ↓
|
2001年 | 75,000 |
-5.54% ↓
|
2000年 | 79,400 |
8.77% ↑
|
1999年 | 73,000 |
-10.98% ↓
|
1998年 | 82,000 |
24.24% ↑
|
1997年 | 66,000 |
-13.16% ↓
|
1996年 | 76,000 |
-8.43% ↓
|
1995年 | 83,000 |
13.7% ↑
|
1994年 | 73,000 |
-1.35% ↓
|
1993年 | 74,000 |
9.63% ↑
|
1992年 | 67,500 | - |
ウズベキスタンの羊肉生産量の推移を振り返ると、1990年代には生産量が安定せず、6万トン台から8万トン台の間で変動していました。この時期は旧ソビエト連邦からの独立直後であり、農業政策や経済基盤の変革期にあったことが一因と考えられます。1990年代後半にかけての生産量の変動は、経済の不安定さや農業システムの過渡期に起因しています。
2000年代に入り、特に2006年以降は生産量が増加の傾向を強めました。この増加は主に農業生産技術の改善、畜産業への投資拡大、さらには国内需要および輸出需要の増加によるものとされています。例えば2010年には初めて生産量が10万トン台に到達し、以降急速に拡大しています。
2011年から2016年までの期間では、生産量はほぼ毎年増加し続け、203,860トンに到達しました。しかし、2017年から2020年には再び減少へと転じています。この減少は複数の要因が絡んでいると思われます。まず、自然災害や天候変動が一部の農地に影響を与えた可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大により物流や市場環境に混乱が生じたことも減少を助長したと考えられます。
2021年以降は生産量が再び増加に転じ、2023年には243,500トンという過去最大の値を記録しました。この著しい増加は、国内外での羊肉需要の回復や、ウズベキスタン政府の農業振興策による生産性向上が反映された結果といえます。
一方で、こうしたデータは課題の存在も浮き彫りにしています。まず、過去の生産量の急激な増減は、収穫期の気候条件や政策の変動に対して非常に敏感であることを示しています。このため、安定した生産環境を構築するための農業インフラの整備や気候変動への耐性を高めるアプローチが必要です。また、市場競争力を高めるため、羊肉の加工技術や輸送インフラの整備も急務とされています。
さらに、地政学的な背景も考慮する必要があります。ウズベキスタンは中央アジアに位置し、羊肉の主要輸出先である隣接する国々(カザフスタンやタジキスタンなど)や中東諸国との関係が重要です。地域間の安定的な物流ネットワークを確保するとともに、経済的・地政学的リスクを軽減するためには、国際協力や自由貿易協定の推進が有効です。
今後の推進策としては、国内消費のみならず輸出市場の多様化が必要です。これに加えて、持続可能な生産のために農地管理や水資源利用における効率を向上させる施策を優先すべきです。また、異常気象や疫病への対応能力を高めるための近代的な農業技術やデジタル化の導入も重要となるでしょう。
結論として、ウズベキスタンの羊肉生産は長期的には増加基調にありますが、生産の安定性強化や持続可能な資源管理が将来の課題です。政府や国際機関は戦略的な投資や政策の実施を通じて、この重要な産業のさらなる発展を支援する必要があります。これにより、地域内外の食料供給の安定化にも貢献できると期待されます。