国際連合食糧農業機関(FAO)が公表したデータによると、ウズベキスタンのエンドウ豆(生)生産量は1990年代前半の約1,200トンから始まり、1997年には800トンまで下落した後、1998年以降急激な増加が見られます。特に、2006年には2,000トンを突破し、その後2011年には5,000トンの大台を記録しましたが、その後は一進一退を繰り返しています。直近の2023年には4,975トンと、過去10年間は比較的安定した生産量を維持しています。この推移は、農業政策や栽培技術の向上、需要変動に大きく影響されていると考えられます。
ウズベキスタンのエンドウ豆(生)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 4,975 |
2.84% ↑
|
2022年 | 4,837 |
0.06% ↑
|
2021年 | 4,834 |
0.47% ↑
|
2020年 | 4,811 |
-1.12% ↓
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2019年 | 4,866 |
0.86% ↑
|
2018年 | 4,824 |
1.71% ↑
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2017年 | 4,743 |
-5.7% ↓
|
2016年 | 5,030 |
7.02% ↑
|
2015年 | 4,700 |
4.44% ↑
|
2014年 | 4,500 |
-17.43% ↓
|
2013年 | 5,450 |
55.71% ↑
|
2012年 | 3,500 |
-30% ↓
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2011年 | 5,000 |
66.67% ↑
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2010年 | 3,000 |
20% ↑
|
2009年 | 2,500 |
13.64% ↑
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2008年 | 2,200 | - |
2007年 | 2,200 |
10% ↑
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2006年 | 2,000 |
36.05% ↑
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2005年 | 1,470 |
33.64% ↑
|
2004年 | 1,100 |
10% ↑
|
2003年 | 1,000 | - |
2002年 | 1,000 | - |
2001年 | 1,000 | - |
2000年 | 1,000 | - |
1999年 | 1,000 |
-41.18% ↓
|
1998年 | 1,700 |
112.5% ↑
|
1997年 | 800 |
-15.34% ↓
|
1996年 | 945 |
-5.5% ↓
|
1995年 | 1,000 |
1.01% ↑
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1994年 | 990 |
-1% ↓
|
1993年 | 1,000 |
-16.67% ↓
|
1992年 | 1,200 | - |
ウズベキスタンは内陸国であり、その農業は地理的条件や気候に大きく左右されます。数値の変化からわかるように、エンドウ豆の生産量には1990年代に顕著な減少が見られ、その後1998年以降は一貫して増加しています。この背景には、農業セクターの技術改善や、エンドウ豆が土壌改良作物(「緑肥」とも呼ばれる)としての利用価値を持つことから、他の主要作物(例:綿花や小麦)との輪作に適していることが挙げられます。
2006年以降、生産量が明確に上昇している理由として考えられるのは、政府が持続可能な農業管理方法の導入を推進したことや、農村部のインフラ整備への投資規模を拡大したことです。また、2011年の急激な生産量の伸び(5,000トン)から、その後5,000トン前後を安定的に維持していることを見ると、エンドウ豆が国内外市場で一定の需要を持ち続けていることが伺えます。
一方、2012年には生産量が再び減少し、同年の3,500トンは前年度比でかなりの落ち込みを示しています。この減少の要因として考えられるのは、異常気象や灌漑システムの未整備といった地理的な課題です。ウズベキスタンはアラル海の干上がりなど地政学的・環境的課題に直面しており、とりわけ水資源の管理が、農業生産に極めて重要となっています。
2023年においても、エンドウ豆生産量が4,975トンと高水準を維持しているのは、ウズベキスタンの農業政策がこの作物に注力していることを反映しています。ただし、この生産量は、例えばインドや中国などの途上国におけるエンドウ豆生産に比べると控えめであり、生産効率の向上や輸出市場の開拓が次のステップとして必要です。
ウズベキスタンにおける現在の課題は、生産量が一部の年で減少している理由に注目し、長期的な農業の持続可能性を確保することです。第一に、水資源の効率的な管理システムを構築し、灌漑インフラを更新することが求められます。第二に、気候変動に適応するための作物改良や栽培技術の研究開発が重要です。そして第三に、地域経済全体を強化するためには国際市場での競争力を高め、エンドウ豆に関連する貿易を促進する政策の検討が必要です。
また、エンドウ豆は栄養価が高く、地域の食糧安全保障に寄与する作物でもあります。このため、国内消費と輸出市場への供給割合を慎重に調整することで、持続可能な形での増産が可能となるでしょう。さらに、新型コロナウイルスによるパンデミックを背景に、農作物の輸出と物流が世界的に混乱したことも、今後は持続可能な流通体制を築く上での教訓とすべきです。
将来的には、隣国や地域との農業協力フレームワークを構築することが重要です。中央アジア地域で共通の水資源や技術を共有することで、全体的な生産力を押し上げるとともに、地政学的な安定にもつながります。このように、ウズベキスタンがエンドウ豆の生産に力を入れることで、農業部門の発展と地域の持続可能な経済発展が期待できます。