ウズベキスタンのキャベツ生産量は1990年代から劇的な変動を経験し、2000年以降に急激な増加を見せましたが、2015年以降は減少傾向が見られ、一部回復もあるものの2022年に787,670トンと近年のピークから低い水準にあります。政策や農業技術の進展、天候条件、地政学的要因がこの変動に影響を与えたと考えられます。
ウズベキスタンのキャベツ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 787,670 |
2021年 | 680,640 |
2020年 | 658,595 |
2019年 | 703,403 |
2018年 | 743,411 |
2017年 | 904,488 |
2016年 | 1,093,974 |
2015年 | 952,623 |
2014年 | 1,003,673 |
2013年 | 904,607 |
2012年 | 705,543 |
2011年 | 714,520 |
2010年 | 585,300 |
2009年 | 517,000 |
2008年 | 468,200 |
2007年 | 390,100 |
2006年 | 369,241 |
2005年 | 287,330 |
2004年 | 273,550 |
2003年 | 218,510 |
2002年 | 230,600 |
2001年 | 209,300 |
2000年 | 206,200 |
1999年 | 175,000 |
1998年 | 48,100 |
1997年 | 64,600 |
1996年 | 60,100 |
1995年 | 75,300 |
1994年 | 99,000 |
1993年 | 86,500 |
1992年 | 186,700 |
国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによれば、ウズベキスタンのキャベツ生産量は過去数十年で大きな変化を見せています。1992年には186,700トンの生産量が記録されましたが、1990年代中頃には一時的に減少し、1998年には48,100トンにまで急落しました。この減少は、旧ソ連の崩壊後の政治的・経済的混乱に伴い、農業資源や技術支援が不足したことが主な原因と考えられます。また、この時期は国全体で農業生産の優先順位が再編され、国際市場に合わせた作物選定が行われたことも要因の一つです。
2000年以降、生産量は着実に増加し、2014年には史上初めて年間生産量が1,000,000トンを超えました。この成長には、政府の農業振興策や国内のインフラ整備、さらには国際市場向けの輸出志向型農業への転換が寄与しました。特に、キャベツはウズベキスタン国内だけでなく、周辺諸国への輸出品としても重要であり、その需要が生産拡大を後押ししました。その後、2016年には1,093,974トンと最高値を記録しましたが、2018年以降は減少に転じ、2020年には658,595トンにまで低下しました。この減少は、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックによる貿易の制限や物流の混乱が影響した可能性が高いです。
しかし、2022年には787,670トンまで若干の回復が見られます。この背景には技術革新や政府による農業補助金の導入、また国内需要の回復が影響していると考えられます。ただし、回復のペースは鈍く、依然として過去のピーク値から大きく離れています。加えて、気候変動による降水量の不安定さや乾燥化の影響が、キャベツの生産に悪影響を与えている点も忘れてはなりません。キャベツは水資源を多く必要とする作物であるため、灌漑設備の整備や気候適応型の品種改良が今後の鍵となります。
他国との比較を見ると、中国やインドといった主要な農業国と比べ、ウズベキスタンのキャベツ生産量は比較的少量ですが、気候や地理的条件を考慮すると健闘していると言えます。例えば、中国は世界最大のキャベツ生産国であり、年間推定生産量は3,000万トンを超えるとされています。一方、日本のキャベツ生産量は約140万トン(2022年)であり、ウズベキスタンの水準に近いです。しかし、日本は高効率な栽培技術や品種改良によって生産性を確保しており、ウズベキスタンにもこうした技術の導入が期待されます。
ウズベキスタンが抱える課題は、安定した生産と輸出市場の拡大です。特に、乾燥化が進行する気候条件下では、農業用水の確保が大きな問題です。このため、効率的な灌漑システムの開発やドリップ灌漑技術などの浸透が重要です。また、農業労働者への技術指導を強化し、生産工程での最適化を図る必要もあります。さらに、キャベツやその他農産物の輸出市場の開拓が国の経済成長の一助となるでしょう。具体的には、周辺の中央アジア諸国やロシア市場以外にも、欧州や中東市場での需要を分析することが求められます。
地政学的背景を考慮すると、ウズベキスタンは中央アジアにおける交通の要衝であるため、インフラ整備や新たな物流ルートの確保がその競争力を高めるでしょう。他方で、近隣で紛争が発生した場合、例えばアフガニスタンや周辺国での不安定が波及し、輸出入に影響を及ぼす恐れがあります。そのため、地域協力や多国間貿易協定の強化に取り組む必要があります。
今後の政策として、政府や国際機関は農業資源の持続可能な管理を促進し、農業従事者に対する支援や低利融資を拡充することが求められます。また、気候変動に対応するための研究開発と、農業教育の充実が重要です。こうした具体的な対策を講じることにより、ウズベキスタンはキャベツ生産を安定し、さらには輸出市場でも存在感を高めることができるでしょう。