Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表したデータによりますと、ウズベキスタンの大麦生産量は1992年の394,700トンをピークとして、その後大幅に減少しました。1998年には88,700トンへと急低下し、近年では2021年に95,828トンの低水準を記録しましたが、2023年には163,690トンとやや持ち直した状況にあります。このデータは、ウズベキスタン国内の農業政策の変化や気候条件の影響、さらには国際的な食糧需要の変動を反映していると考えられます。
ウズベキスタンの大麦生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 163,690 |
32.6% ↑
|
2022年 | 123,447 |
28.82% ↑
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2021年 | 95,828 |
-40.68% ↓
|
2020年 | 161,539 |
21.01% ↑
|
2019年 | 133,496 |
19.45% ↑
|
2018年 | 111,760 |
-16.76% ↓
|
2017年 | 134,270 |
-19.78% ↓
|
2016年 | 167,384 |
10.38% ↑
|
2015年 | 151,642 |
8.64% ↑
|
2014年 | 139,587 |
2.8% ↑
|
2013年 | 135,791 |
-3.98% ↓
|
2012年 | 141,416 |
2.65% ↑
|
2011年 | 137,766 |
-23.08% ↓
|
2010年 | 179,100 |
-23.62% ↓
|
2009年 | 234,500 |
63.87% ↑
|
2008年 | 143,100 |
43.53% ↑
|
2007年 | 99,700 |
35.65% ↑
|
2006年 | 73,500 |
-35.01% ↓
|
2005年 | 113,100 |
2.26% ↑
|
2004年 | 110,600 |
-32.93% ↓
|
2003年 | 164,900 |
-29.98% ↓
|
2002年 | 235,500 |
67.26% ↑
|
2001年 | 140,800 |
54.39% ↑
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2000年 | 91,200 |
-23.62% ↓
|
1999年 | 119,400 |
34.61% ↑
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1998年 | 88,700 |
-42.66% ↓
|
1997年 | 154,700 |
-30% ↓
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1996年 | 221,000 |
-36.44% ↓
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1995年 | 347,700 |
7.88% ↑
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1994年 | 322,300 |
0.94% ↑
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1993年 | 319,300 |
-19.1% ↓
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1992年 | 394,700 | - |
ウズベキスタンにおける大麦の生産量は、過去30年以上にわたり大きな変動を示しています。1992年の394,700トンという高水準から1998年には88,700トンにまで急激な生産量の減少が見られました。この背景としては、ソビエト連邦崩壊後の農業体制の混乱が挙げられます。特に、国家による農業管理システムが瓦解する中で、生産効率が低下し、インフラの整備不足や金融支援の減少が農家に大きな負担を与えました。
その後、大麦生産量は一進一退の状況を繰り返しています。2000年代以降においても、収穫が顕著に増加した年もあれば、再び減少した年もあります。2009年と2010年には約234,500トンおよび179,100トンと一時持ち直したものの、2018年には111,760トンと再び水準が低下しました。このような振る舞いの原因のひとつは、気候変動の影響と考えられます。ウズベキスタンは中央アジアに位置し、非常に乾燥した気候を有しているため、気温の上昇や降水量不足が収穫量に大きく響いていると推測されます。
直近で見ても、2021年には95,828トンと低迷した後、2023年には163,690トンと回復を示しました。これは、国内農業が近年の改良政策や灌漑技術の導入による恩恵を受けた可能性があります。一方で、湿度や水資源の有効活用は引き続き課題となっています。特に、ウズベキスタンに隣接する国々との水資源争奪が、今後農業全般に波及する恐れもあるため、地政学的なリスクも考慮する必要があります。
ウズベキスタンの農業は、国家経済に重要な位置を占めており、大麦は主に食用穀物としてだけでなく家畜飼料用としても優れた資源です。他国との比較において、例えば日本では大麦生産量が限られているため輸入に頼っているのに対し、中国やインドでは大麦の生産が安定的に維持されています。この点からも、輸出入を補完する地域間の協力がより重要です。
今後の課題としては、技術革新の促進、気候変動への適応策、持続可能な水管理が挙げられます。具体的には、耐乾性に優れた大麦品種の育成や、効率的な灌漑システムの設計、さらには地域間での農業研究の協力体制を強化することなどが重要となるでしょう。また、定期的なデータ収集と分析を基盤に、大麦生産量を安定させる計画的な政策導入が求められます。
結論として、大麦の生産量推移はウズベキスタンの農業全体の現状を象徴するものです。国内の食料安全保障にとって、大麦を含めた多様な農産物の生産量を安定的に確保することは喫緊の課題です。また、地政学的リスクや気候変動の影響を緩和するための国際協力もますます重要になるでしょう。FAOや他の国際機関と連携することで、ウズベキスタンが持続的な農業発展を実現できることを期待します。