Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、ウズベキスタンにおける馬肉生産量は、1992年から2023年にかけて全体的に増加傾向が見られますが、一定の上下動も確認されています。特に2000年代初頭から緩やかな増加が始まり、2010年代後半には大幅な増加が観察され、2018年には7,119トンとピークを迎えました。しかし2022年、2023年には再び減少傾向が見られ、5,809トンとなっています。この変動には地政学的要因、経済変動、そして食文化の変化が影響している可能性があります。
ウズベキスタンの馬肉推移(1961年~2023年)
年度 | (トン) | 増減率 |
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2023年 | 5,809 |
5.06% ↑
|
2022年 | 5,529 |
-10.11% ↓
|
2021年 | 6,151 |
1.07% ↑
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2020年 | 6,086 |
6.73% ↑
|
2019年 | 5,702 |
-19.9% ↓
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2018年 | 7,119 |
74.77% ↑
|
2017年 | 4,073 |
-26.35% ↓
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2016年 | 5,530 |
31.68% ↑
|
2015年 | 4,200 |
5% ↑
|
2014年 | 4,000 | - |
2013年 | 4,000 |
21.21% ↑
|
2012年 | 3,300 |
10% ↑
|
2011年 | 3,000 |
36.36% ↑
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2010年 | 2,200 |
4.76% ↑
|
2009年 | 2,100 |
5% ↑
|
2008年 | 2,000 |
11.11% ↑
|
2007年 | 1,800 |
-8.26% ↓
|
2006年 | 1,962 |
-8.87% ↓
|
2005年 | 2,153 |
13.32% ↑
|
2004年 | 1,900 |
-26.92% ↓
|
2003年 | 2,600 |
13.2% ↑
|
2002年 | 2,297 |
15.52% ↑
|
2001年 | 1,988 |
-4.4% ↓
|
2000年 | 2,080 |
-1.45% ↓
|
1999年 | 2,110 |
-1.56% ↓
|
1998年 | 2,144 |
-0.4% ↓
|
1997年 | 2,152 |
-3.03% ↓
|
1996年 | 2,220 |
2.25% ↑
|
1995年 | 2,171 |
6.84% ↑
|
1994年 | 2,032 |
7.85% ↑
|
1993年 | 1,884 |
7.55% ↑
|
1992年 | 1,752 | - |
ウズベキスタンの馬肉生産は、1990年代初頭から2000年代中頃まで一貫して約2,000トン台を維持していました。この時期の安定した生産量は、ソビエト連邦崩壊後の新興国としての経済構造の変化と、その中でも馬肉が国内で一定の需要を持つ食材として認識されていたことが反映されています。
2002年および2003年には、生産量が大幅に増加し、それぞれ2,297トンと2,600トンに達しましたが、翌年の2004年には1,900トンと急減しています。この減少は、国内外の市場価格の変化や農業政策に起因すると考えられます。また、ウズベキスタンのような内陸国では、天候や自然災害が畜産全体に大きな影響を与えるため、この生産減には気候的要因も絡んでいる可能性があります。
2010年代になると、馬肉生産量は再び増加傾向に転じ、2011年の3,000トン、2013年の4,000トンというように、約10年で2倍以上の生産量増加を記録しました。この増加の背景には、ウズベキスタン国内の食文化と食習慣における馬肉の重要性の再認識があったと考えられます。特に、ナヴルーズや宗教的行事における馬肉料理の需要が影響している可能性があります。また、国内での馬の飼育技術の向上や農業近代化の進展もあわせて貢献していると思われます。
注目すべきは2016年から2018年にかけての急増です。2016年には5,530トンに達し、2018年には7,119トンと過去最高を記録しました。この期間、海外輸出も促進され、ウズベキスタンの馬肉がロシア、中国、トルコといった近隣諸国で人気を集めました。しかし、輸出促進に伴う国内供給の調整が難航した可能性や、畜産業従事者の所得向上が課題となった側面も指摘されています。
一方で2019年以降、生産量は緩やかな減少傾向に入り、2023年には5,809トンという水準に落ち着いています。この変化には複数の要因が考えられます。まず、世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大による農業生産システムの混乱が挙げられます。また、グローバルな物流網の制約や馬肉の輸出市場の変動が、国内生産量に影響を与えた可能性があります。さらに、国際市場における馬肉需要の競争激化も見逃せません。
課題として挙げられるのは、馬肉の需要と供給バランスの維持と、国内外での消費需要の変化への柔軟な対応です。また、気候変動や自然災害といった将来的なリスクへの対策も求められます。特に牧畜地の確保や水資源管理の側面での持続可能性を考慮した政策が重要になります。
具体的な提案として、ウズベキスタンは馬肉生産に関するデータ収集とその活用の強化が必要です。例えば、生産効率向上のための技術導入や国際的な認証基準への対応は、馬肉産業全体の競争力を高めるでしょう。また、近隣諸国との地域協力を進めることにより、ウズベキスタンの馬肉を食文化の特産品としてブランディングすることも検討されるべきです。
結論としてウズベキスタンの馬肉生産は、地政学的要因や経済全体の流れに影響を受ける動態が明確に示されています。今後、国際市場の展望や自然災害リスクを考慮した農業政策の改良により、持続可能かつ安定した成長が見込まれる分野であると言えるでしょう。