国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年最新データによると、マリの茶葉生産量は1974年以降振幅の大きい推移を見せています。最大生産量は1989年の317トンで、この後急激に減少した後、近年の生産量はおおよそ90トン前後で安定しています。このデータは、マリ国内の農業環境や社会経済的要因、また地域的な気候変動や地政学的問題が、生産量に直結することを示しています。
マリの茶葉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 92 |
-0.18% ↓
|
2022年 | 93 |
0.13% ↑
|
2021年 | 92 |
0.28% ↑
|
2020年 | 92 |
-0.95% ↓
|
2019年 | 93 |
1.08% ↑
|
2018年 | 92 |
0.72% ↑
|
2017年 | 91 |
-4.46% ↓
|
2016年 | 96 |
7.36% ↑
|
2015年 | 89 |
0.11% ↑
|
2014年 | 89 | - |
2013年 | 89 |
-9.84% ↓
|
2012年 | 99 |
-4.86% ↓
|
2011年 | 104 |
-4.69% ↓
|
2010年 | 109 |
-8.19% ↓
|
2009年 | 119 |
-2.49% ↓
|
2008年 | 122 |
-9.93% ↓
|
2007年 | 135 | - |
2006年 | 135 | - |
2005年 | 135 |
22.73% ↑
|
2004年 | 110 |
22.22% ↑
|
2003年 | 90 |
28.57% ↑
|
2002年 | 70 |
40% ↑
|
2001年 | 50 |
-33.28% ↓
|
2000年 | 75 |
-1.9% ↓
|
1999年 | 76 |
27.32% ↑
|
1998年 | 60 |
20% ↑
|
1997年 | 50 |
-27.54% ↓
|
1996年 | 69 |
-65.84% ↓
|
1995年 | 202 |
3.06% ↑
|
1994年 | 196 |
-29.24% ↓
|
1993年 | 277 |
140.87% ↑
|
1992年 | 115 |
25% ↑
|
1991年 | 92 |
-42.14% ↓
|
1990年 | 159 |
-49.84% ↓
|
1989年 | 317 |
281.93% ↑
|
1988年 | 83 |
50.91% ↑
|
1987年 | 55 |
-38.2% ↓
|
1986年 | 89 |
2.3% ↑
|
1985年 | 87 |
4.82% ↑
|
1984年 | 83 |
3.75% ↑
|
1983年 | 80 |
5.26% ↑
|
1982年 | 76 |
-22.45% ↓
|
1981年 | 98 |
53.13% ↑
|
1980年 | 64 |
-41.82% ↓
|
1979年 | 110 |
10% ↑
|
1978年 | 100 |
11.11% ↑
|
1977年 | 90 |
12.5% ↑
|
1976年 | 80 | - |
1975年 | 80 |
33.33% ↑
|
1974年 | 60 | - |
マリの茶葉生産量推移を時系列で分析すると、1970年代後半から1980年代初頭にかけて、緩やかな増加が見られます。この成長は、おそらく農業技術の向上や政策支援の結果と考えられます。しかし1980年台半ば以降は大きな変動が観察され、産出量が急激に減少したり、極端に増加する年が見られるようになりました。特に1989年には317トンという記録的な生産量を達成しましたが、翌1990年には159トンへ急減し、その後も大きな減少傾向が続いています。このような変動により、特定の気候条件、経済的変動、または政策変更が背景にあった可能性が示唆されます。
この後、1990年代から2000年代初期にかけて、再び低迷期を迎えており、50トンから100トン以下の範囲でばらつきが生じています。その後の2000年代半ばには、やや回復基調にあるものの、大きく成長する動きは見られません。さらに2010年以降は、生産量が約90トン前後に留まり、安定しているものの伸び悩んでいる状況が伺えます。この停滞は、地域における茶葉需要や輸出市場の競争激化、内陸国マリ特有の物流や輸送の課題が影響している可能性があります。
マリの茶葉生産量が過去に比べ減少している背景には、気候変動による環境的ストレスが影響していると考えられます。サヘル地域に位置するマリは干ばつや不規則な降雨量など気候変動の影響を強く受けます。特に農業における水資源確保が難しい状況は、茶葉の生育に深刻な影響を及ぼしていると推察されます。また、地域的な紛争や社会不安が農業従事者や農業改革への支援を妨げる要因ともなっているでしょう。このような観点から、地政学的なリスクが農業全体に波及することで、茶葉生産量にも長期的な影響を及ぼしている可能性があります。
生産量が比較的安定している近年の状況を考えると、マリは今後、持続可能な農業政策や技術の導入に重点を置く必要があります。例えば、灌漑技術の改良や耐旱性品種の導入によって、降雨量に左右されにくい生産体制を構築することが重要です。また国内市場の強化とともに、国際貿易市場へのアクセスを拡大する努力も並行して求められます。他国との協力関係を築くための取り組みも、生産の安定化と経済的基盤の強化に寄与するでしょう。
さらに、新型コロナウイルスの影響で物流や労働力の確保が制限され、多くの国の農業に影響が見られていますが、マリでも同様の課題が存在した可能性があります。これに対応するためには、地域主導の労働力育成、インフラ整備、さらには災害リスクの緩和を視野に入れた戦略を立案することが求められます。
結論として、マリの茶葉生産量は過去に多くの変動を経験し、現在安定しているものの将来的な伸びが期待されています。今後さらなる成長のためには、農業の近代化と気候変動対策の強化、輸出市場の開拓といった幅広い取り組みが必要です。国際的な支援やパートナーシップの枠組みを活用し、茶葉生産が地域経済の重要な柱となるような進展が求められます。