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マリの天然蜂蜜生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、マリの天然蜂蜜生産量は1961年以降変動を続け、1990年代以降一時的な急上昇、その後の急減少を経て、不安定な推移を示しています。特に1991年の12,647トンという急激な増加と、それ以降の急降下は異例と言えます。近年では、700トン前後で推移する年が多かったものの、2022年には300トンの低水準に落ち込んでいます。この長年の生産動向を分析することで、マリ国内の蜂蜜生産を取り巻く課題や対策が見えてきます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 734
144.75% ↑
2022年 300
-30.12% ↓
2021年 429
-39.5% ↓
2020年 709
-3.64% ↓
2019年 736
28.6% ↑
2018年 572
11% ↑
2017年 516
-95.2% ↓
2016年 10,739
51.06% ↑
2015年 7,109
122.35% ↑
2014年 3,197
121.9% ↑
2013年 1,441
658.31% ↑
2012年 190
-20.83% ↓
2011年 240 -
2010年 240
4.35% ↑
2009年 230
-30.3% ↓
2008年 330
8.91% ↑
2007年 303
12.41% ↑
2006年 270
-3.99% ↓
2005年 281
-6.42% ↓
2004年 300
20% ↑
2003年 250
8.23% ↑
2002年 231
-49.56% ↓
2001年 458
44.94% ↑
2000年 316
82.66% ↑
1999年 173
-13.5% ↓
1998年 200
-20% ↓
1997年 250
-96.77% ↓
1996年 7,729
-25.92% ↓
1995年 10,434
-17.5% ↓
1994年 12,647 -
1993年 12,647 -
1992年 12,647 -
1991年 12,647
3608.8% ↑
1990年 341
6.56% ↑
1989年 320 -
1988年 320 -
1987年 320 -
1986年 320 -
1985年 320 -
1984年 320 -
1983年 320 -
1982年 320
3.23% ↑
1981年 310 -
1980年 310 -
1979年 310
3.33% ↑
1978年 300 -
1977年 300 -
1976年 300 -
1975年 300 -
1974年 300 -
1973年 300 -
1972年 300 -
1971年 300 -
1970年 300 -
1969年 300 -
1968年 300 -
1967年 300 -
1966年 300
3.45% ↑
1965年 290 -
1964年 290
3.57% ↑
1963年 280 -
1962年 280 -
1961年 280 -

マリの天然蜂蜜生産量のデータは、同国の農業や自然環境に直結した生物経済の一端を示しています。1961年から1970年代後半までは年間300トン前後で安定的な値を記録していましたが、1991年には12,647トンと過去最大値に急増し、注目を集めました。しかし、その後の数年間で急激に減少し、1997年にはわずか250トンにまで落ち込むなど、非常に不安定な推移が見られました。このような顕著な変動の背景には、政策転換や輸出市場の変化、気候条件の悪化など、一連の複雑な要因が存在すると考えられます。

1991年の飛躍的な生産増加は、天然資源の利用に関する政策の変更や、蜂蜜を含む農産物の輸出促進によるものと推測されますが、その後の急激な減少は持続可能性を欠いた生産方式や、市場需要の過小評価が要因となった可能性があります。同時に、この時期にはマリ全体で政治的不安定性や紛争も見られ、これが国内の農業生産バリューチェーンを乱した構造的な問題を引き起こしたと考えられます。特に自然災害や地政学的リスクも加わり、地域住民が養蜂活動を持続するための基盤が脅かされていたのかもしれません。

近年のデータを見ると、2013年から2016年にかけて再び蜂蜜生産量が増加に転じ、最大で10,739トンを記録しました。この回復は、政府や国際機関による持続可能な農業の支援政策、地域住民向けの教育プログラム、そして地産地消の奨励など幾つかのポジティブな取り組みの結果と考えられます。しかし、2017年以降は再び減少傾向に転じ、2022年時点で300トンにまで落ち込んでおり、依然として不安定な状況が続いています。

このような生産変動の要因には、気候変動による生物多様性の減少や、地域における養蜂技術の普及不足が挙げられます。また、新型コロナウイルス感染症が与えた経済的な影響も否定できません。パンデミックにより地域内外の物流が停滞し、市場アクセスが制限され、農家の収入減少を招きました。さらに、過去数十年でマリの特定地域で頻発した紛争も、養蜂業に対し否定的なインパクトを与え続けています。これにより、多くの農家が生産を断念し、生計を立てる術を転換せざるを得なかった状況が想定されます。

今後、天然蜂蜜生産の安定化を目指すためには、複数の課題を解決する必要があります。まず、養蜂において持続可能性を重視し、中長期的な環境保全型の政策が必要です。たとえば、蜂蜜生産の基盤である花蜜源植物の育成に投資を行い、砂漠化対策を講じることで、生態系全体の改善を図るべきです。また、農家に技術支援を行い、近代的養蜂技術を導入することで、気候変動や市場需要に強い蜂蜜生産を可能にすることが期待できます。これには、養蜂に適した機材の普及や適切なトレーニングプログラムが欠かせません。

さらに地域レベルでの支援体系の強化が必要です。農村部における養蜂家の協力組織を形成し、協同組合を通じて生産や流通の効率性を向上させるといった試みは、他国において成功を収めた例もあります。加えて、蜂蜜の品質向上とブランド化を進めることで、輸出市場でも競争力を持つ商品として発展する可能性が高まります。国際市場での需要を見据え、日本やヨーロッパ諸国などの高品質な蜂蜜を求める市場に焦点を合わせることも重要です。

結論として、マリの天然蜂蜜生産は一連の不安定な動きを見せつつも、正しい取り組みを実施することで、今後さらなる成長の可能性を秘めています。環境、技術、国際市場への対応力を高めることが鍵となるでしょう。国や国際機関は、その潜在力を発揮するために、持続可能な養蜂支援プログラムや教育の分野への投資を強化する必要があります。この取り組みが成功すれば、生計改善や輸出収益の増加を通じて、地域社会全体の経済的向上に寄与する可能性が高まると考えられます。